紅月の神話 EP4 黒い悪魔

与那覇瑛都

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第二章 戦場に舞う天使の涙

第十話 世界一周に行きたい 下

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 数時間経ってようやく嫉妬の怒りが治まり落ち着いたリッカはガレックに尋ねる。
「シャーリーから『きえーるスプレー』っていう物を作ったって聞いたけどどういう物なの?」
「ああ、あれか。大方、鳳凰に塗って透明化してどうにかしようと思ったんだろ。悪いが使えねぇぞ」
「どうして?」
「あれは表面だけを透明にするんだ。例えば荷物の入った箱にスプレーを掛けたらスプレーに掛かった部分だけ消えて中身が丸見えになる。とてもじゃないが今回は使えんぞ」
「それは・・・使い道ないんじゃない」
「失礼な、不審物のチェックや爆弾処理などいろいろ使われてるぞ」
「廃棄したって聞いたけど・・・」
「廃棄するわけねぇじゃん。一般には売られてないがヒット商品だぞ」
 リッカはシャーリーをチラッと見てシャーリーは視線を逸らしリッカは小さく溜息を吐いて尋ねる。
「貴方達の道具で鳳凰を隠す方法もしくは天使達にばれずにクラフトを抜ける方法を知ってる?」
「隠すって無理だろ。あんなデカブツ」
 そう言ってガレックはトトリを見てトトリも頷いて言う。
「今はまだ研究中の光学迷彩が完成したら出来ると思うけど完成するのは何年もさきね」
 光学迷彩、誰か使える?
 リッカの問いに早樹が答える。
 私達全員が協力すれば出来ますが光学迷彩はレティ様から禁じられてます。
 本当、縛りが多い護衛任務ね。
 ガレック護衛任務の禁止事項の多さにリッカと精霊達は嘆息する。
「っていうか、何でコソコソ隠れる必要があるんだ?」
 ガレックの発言に全員の視線が集まる。
「どう足掻いてもばれるんだろ。なら最短距離で突っ走ればいい。天使に見つかったらリッカの魔術を撃ち込んで怯まし全速力で逃げる。鳳凰が出来た時は世界最速だったんだろ。なら大丈夫だ。問題は魔術を撃ち込むタイミングだ。早すぎれば怯ます事出来ずに避けられ遅すぎれば撃つ前に殺られる」
 鳳凰が世界最速だった事を知るのはリッカと精霊達以外ではガレックの中にいるレイジ達以外いない、つまりこの発言はガレックの発言ではなくレイジの発言である。
 ガレックで有り得ないリッカを試すような笑みを見てリッカは内心喜ぶ。試すという事は期待しているという事、レイジであるガレイクが封じられる前は若すぎ人材も不足してなかったため重要な任務に就く事はなかった。封じられてからは人材不足で重要な任務に就く事が多くなったがそれは軍師であるレティシアの命だった。今初めて主を守るという最も重要な任務を主の口から聞けたのだ。
「分かった。久し振りに本気出すわ」
「それじゃあ主砲からリッカの魔術が使えるよう少し改造しないとな」
「手伝うわ」
 そう言って立ち上がろうとするガレックとトトリの頭をリッカは抑える。
「別に貴方達じゃなくても出来るでしょ。本職の整備士もいるし機械に強い風香もいるわ。貴方達はこのまま正座」
 二人はやっぱりダメだったかと涙目になる中リッカは続けて言う。
「でもアイディアを出したから食事は上げるわ。正座したまま食べなさい」
 食べれないよりはマシかと二人は頷いたがリッカは言う。
「あれ? 返事がないけどいらない?」
「「いります! ありがとうございます!」」
「よし。それじゃあ私はここの整備長の所に行くからマリアちゃん、二人にご飯あげて」
「はい」
「ではルドルフさん。整備長の下への案内と紹介をお願いします」
「分かった」
 ルドルフはリッカを連れ整備長の下へと向かった。

 暫くしてスカーレット姉妹が正座するガレックとトトリの下に食事を持って来た。
「遅ぇぞテメェ等! 早く寄こせ!」
 ガレックとトトリは食事を受け取るとお腹が空いてたため急いで食べ始める。
 そんな二人にアリスが言う。
「でも意外ね。リッカさんがいなくなったから正座止めると思ったのに」
 二人は食事を止め力無い笑みを浮かべて言う。
「いない? 確かにリッカはいないな」
「いないからと言って監視までいないって事はないわね」
 そう言って再び食事を再開させ、監視がいると聞きガレックとトトリとシャーリー以外は辺りを見回すが監視は見当たらない。
「本当にいるんですか? 御主人様」
「目に見えるわけねぇだろ。監視してるのは微精霊共だ。微精霊を見るのはリッカが持つ精霊眼以上の目だぞ。俺達が見れるわけねぇだろ」
 精霊と聞き全員が納得する。
 ちなみにガレックは精霊眼より遥か上位にある森羅万象全てを見通す神眼を持っているが能力を封じられてるため見る事が出来ない。
 食事を終え機嫌がいい姉妹にガレックが言う。
「何だテメェ等、主が正座してるのに嬉しそうにしやがって」
 マリアは憧れていた賢者リリカに会えたから嬉しかったがアリスはそれ以外に嬉しい事があった。
「それは・・・」
「当たり前でしょ。リッカさんがいればあんたが大人しいからね」
「何ぃ?」
 ガレックは起き上がろうとする。
「あら、正座を止めてもいいの? 精霊達が見てるわよ」
「ぐぅぅ・・・」
 ニヤニヤ笑うアリスを見てガレックは嗤った。
 その笑みを見た瞬間アリスはやりすぎたと思ったがもう遅かった。
「大文字の拘束」
 アリスの両隣に突如柱が現れ鎖がアリスの両手両足を拘束し引っ張られアリスは大文字の格好をする。
「何よこれ!」
「フンッ、シャーリー、ホルダーを寄こせ!」
「はいれす」
 シャーリーはガレックとトトリの没収されたカードホルダーのうち、ガレックのカードホルダーを取るとガレックに向けて投げガレックはそれを受け取りカードを抜いた。
 カードから現れたのは隠れたヒット商品絶対に傷付かない鞭だった。
「さて、主を笑う悪い奴隷は、お仕置きだ!」
「痛いッ!」
 正座しながらガレックは鞭を振るう。
「ホント痛いから止めてっ!」
「フハハハハ・・・聞こえんな! それそれそれっ!」
「痛いッ!」
 そしてとうとうアリスは泣き出しやり過ぎたとガレックが思った所でリッカが戻ってきた。
 ガレックとリッカの目が合いガレックは冷や汗が止まらない中リッカは冷めた目でガレックを見て思う。
 やっぱり紅い翼で育てたのは大失敗だったわね。奴隷商人と同じ事してるわ。少しでもまっとうに戻さないと・・・
「ただの正座じゃ生温いわね」
 そう言ってリッカは近くに放置されていた一メートルくらいの鉄パイプを拾ってガレックに渡して言う。
「まずは足に挟みなさい」
 ガレックは素直に足に挟む。
「次はそうね。ジッとしてなさい」
 そう言ってリッカは土の精霊魔術でガレックが正座する地面をでこぼこにする。
「最後はこれね」
 リッカは魔術でガレックの太ももの上に成人男性と同じ重さをした石の立方体を置く。
「それ、地面に置いたり太ももから落としたら、お仕置きのレベル上げるから」
 ガレックは落とさないよう急いで石に抱きついた。
「それよりさっさとアリスちゃんを解放しなさい」
「はいっ!」
 ガレックはアリスの拘束を解いた。
 泣き崩れるアリスをリッカ達が慰める中、ガレックとトトリのお仕置きは続いた。
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