紅月の神話 EP4 黒い悪魔

与那覇瑛都

文字の大きさ
65 / 66
第三章 抗う者達

第十一話 知らない方が幸せってある 下

しおりを挟む
 食堂にリッカ達を残しお金が使えない事をトトリ達にも伝え、話しを聞いたトトリが尋ねる。
「それでどうするの? 言っとくけど、金が無いからって踏み倒して逃げるとか誰かを脅して金を巻き上げるとかそんなのダメだよ」
「・・・お前は俺をなんだと思ってるんだ」
「やった事ないとでも?」
「・・・まぁ、ちゃんと稼ぐ方法考えたから・・・」
 シャーリー以外まさかそんな犯罪を犯していない冗談だろうと苦笑していたが顔を逸らし否定しなかったから驚くが普段の行動からやってもおかしくないなと納得した。
「そう。っで、魔人かもしれない伯爵の金を盗むの? それとも密輸でもするの? 薬物ばらまくのは絶対ダメだからね」
「・・・ホントお前俺をなんだと思ってるの?」
「やった事ないとでも?」
「・・・ちゃんと真っ当な方法だ」
 こいつ薬物ばらまいたのかと全員が驚愕する。ちなみに薬物はばらまこうとしたがいち早く気付いたトトリの告げ口によりリッカに知られ未遂で終わった。
「本当に真っ当なの?」
「本当だよ! 疑り深いな! 商売だよ商売! 物を売るの! 伯爵の所に行くって事はそこは当然町! まぁどっかの伯爵みたいに田舎町って可能性もあるが・・・」

 最近忙しく王都と自領を行ったり来たりする伯爵が顔を逸らしてくしゃみをした。
 彼は今電車に乗り経費削減のため一般車両に乗っていた。そして運悪く彼のしたくしゃみが通路の向かい側に座る幼馴染みまで唾が飛んでった。
 幼馴染みはニッコリ笑うと持っていた太刀で容赦なく突いた。
「痛ぇ! おまっ、抜いてないからって突く事無いだろ!」
「それは隣にいる人にも言える?」
 伯爵は目で訴える。
 言える訳ないだろバカ! そんな事したら殺される!
 伯爵の隣には伯爵家の忠臣、伯爵家が残るなら当主すら殺すと内外に明言する人物が座っている。
 っていうか席替われよ! 恐えんだよ!
 伯爵の訴えを幼馴染みは笑って返す。
 そんなに騒ぐと起きちゃうよ。
 伯爵の胃の痛い旅はまだ終わらない。

 どっかの伯爵っていうのが最近会った伯爵だろうなと思ったトトリはそれは置いといて尋ねる。
「商売って何するの? ガッ君が持ってる売れそうな物って武器でしょ。国外への武器の販売は拙いんだけど」
「分かってる。だからこれを売ろうと思う」
 そういってカードを抜きカードに封じていたダイヤをジャラジャラッと出した。
 全員が驚く中トトリだけ顔を引きつらせて尋ねる。
「これいくつあるの?」
「あん? えっと・・・一〇〇?」
 トトリは落ち着けっと一回目を瞑って息を吐きガレックを見て言う。
「・・・紅い翼では万が一に備え社員がどんな依頼を受けたか管理しているわ。その中でもSランクは指名依頼以外は所在地近郊と限定している。それはそうでしょう。Sランクがあっちこっち行ったら迷惑だもの。さて、最初に言った通り社員がどんな依頼を受けたか会社は把握しているけど、私は社員じゃないから当然誰がどんな依頼を受けたかなんて知らないわ。だけど、問題ばかり起こす誰かさん限定で私にまで依頼の報告が来るの。さて誰かさん。君が鉱山関係の依頼を受けた事は過去一度もないはずだけど、なんでそんなにダイヤを持ってるの!?」
「おいおい何を疑ってるんだ? どっかから盗んだとでも思ってんのか?」
「正直に言いなさい何処から盗ってきたの?」
「盗ってねぇよ」
「じゃあ一体どうしたの」
「かったりぃ。ダイヤは炭素で出来ている。それで分かるだろう」
「炭素? ・・・えっ? もしかして・・・作った?」
「金よりは簡単だったな」
「作ったんならいっか。違法じゃないから」
「そうだろう」
 まぁ、材料は違法っつうか非道っつうか・・・あんま持ちたくないけどな。
「取り合えずこれを売るから」
 ダイヤを見てルドルフがいう。
「これ程あるんだ一つ貰ってもいいか?」
「野郎が欲しがるのかよ。意外に成金趣味だな」
「私のではない。アリーシャ様にだ」
「私にですか? 別にいいですが・・・」
「そうもいきません。今はいいですが帝国に着いた時を考えると何か身に付けていた方が・・・」
 何処から見ても村人といった感じのアリーシャを見てガレックが言う。
「まぁ、今の状態で行ったら舐められるな」
「そういう事です。少しでも舐められないよう」
「無理じゃない? 国滅んじゃったし」
「・・・もう少し優しく言えないか?」
「事実だろ」
「くっ・・・とにかく舐められないよう譲ってはくれないか?」
 オッサンに渡すなら別に良かったがアリーシャに渡すのはな。いずれ俺の女にする予定としては呪われるのは・・・それはそれで面白いな。幸薄女なんて抱いた事ないし、お姫様が没落していくのは見ていて面白いかも・・・没落加減をコントロールして俺が得するように俺に依存するようにして奴隷姫にしよう! って事は、こいつやっぱり邪魔だな。魔神戦の盾にでもして殺すか。そうと決まれば信頼を得なければな・・・
「悪いがダイヤは売り物。今後の活動資金源として使うから譲る事は出来ない。しかしアリーシャが舐められるのは護衛をする俺達も舐められるって事だからそれは看過出来ない。ドレスや貴金属で取り繕っても国が滅んだんだ。舐められるだけだ」
「ならどうすればいいんだ?」
「ここには錬金術師が二人もいるんだ。しかも俺は魔法戦士、剣以外にも銃や槍などあらゆる武器を使いこなす魔法戦士だ。舐められないように俺が武術や魔術を鍛え、俺とトトリで武具を作る」
「武術はダメだ。もし何かあったら・・・」
 渡りに船だ。武術を鍛えたら気が強くなる。気が強い女はやりにくいからな。信頼を得るため言ったんだが向こうが要らないって言うならいいだろう。
「そうか。まぁ、怪我する可能性があるからな。一応、護身術は教えよう。武術が不要となると銃の撃ち方と魔術を教えて後方支援専門にするか。エルフだから射撃と支援は得意だろうし」
「そう、ですな」
「あん? どうした?」
「いや、アリーシャ様の兄、クィントン様を思い出してな」
「それが?」
 クィントンを思い出したと言いにくそうにするルドルフの代わりにアリーシャが答えた。
「お兄様は射的が下手でよく的を外してたんです。魔術も力加減が苦手で簡単な魔術しかできませんでした。ただ剣の腕は一流でダルマスカ一の剣士と呼ばれていました」
「エルフだよね? 何で剣?」
「銃や弓より剣が格好いいからと」
「それで鍛錬して国一番か」
 エルフだからスピード系の剣術か。
「まぁいい。お前の兄貴は例外だろう。弓の鍛錬は時間が掛かるから銃を教えよう。魔術は風系で・・・俺より風香が教えた方がいいか、あいつ精霊だし。回復はトトリが、支援はリッカ・・・」
 あれ? 俺が教える事ってあるか? 銃なんざ引き金を引いて撃てばいいだけだし、後は本人の努力次第・・・教える事無いな。まっいいや。もともと教える気なんてないし。トトリ達に押しつけて俺が指示してるようにしよう。
「戦士ではないが戦場で生き抜く術を教えてやる。戦場を知らん奴はもちろん戦場を知る者にも舐められんようにしてやる」
 こうしてアリーシャ強化計画が始まった。
 ガレックは殆ど何もしない気でいたが彼は気付いていなかった。自分が言った言葉の意味を・・・
 戦場で生き抜く術、つまり戦術。戦術とは武器はもちろん地形、天気、気温、戦場のあらゆる物を利用して戦う術、一番大変な事を自分でやると言ったので言葉の意味を知るトトリは意外に思いルドルフは少し見直した。
 彼が言葉の意味に気付き本格的にアリーシャを鍛えるはめになるのは、もう少し先の事である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

キャンピングカーで、異世界キャンプ旅

風来坊
ファンタジー
東京の夜を走り続けるタクシードライバー、清水翔。 ハンドル捌きと道の知識には自信があり、理不尽な客にも笑顔で対応できる――不器用ながらも芯の強い男だ。 そんな翔が、偶然立ち寄った銀座の宝くじ売り場で一人の女性・松田忍と出会う。 彼女との再会をきっかけに、人生は思いもよらぬ方向へ動き出した。 宝くじの大当たり、そして「夢を追う旅」という衝動。 二人は豪華にバスコンをカスタムしたキャンピングカー「ブレイザー」を相棒に、日本一周を計画する。 ――だが、最初のキャンプの日。 雷の直撃が二人を異世界へと連れ去った。 二つの月が照らす森で、翔は持ち前の度胸と行動力を武器に、忍を守りながら立ち向かう。 魔力で進化したブレイザー、忍の「鑑定スキル」、そして翔の判断力と腕力。 全てを駆使して、この未知の世界を切り開いていく。 焚き火の炎の向こうに広がるのは、戦いと冒険、そして新しい絆。 タクシードライバーから異世界の冒険者へ――翔と忍のキャンピングカー旅が、今始まる。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...