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第三話 少しだけ近付けた二人
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ーーシルマ side
「じゃ、俺寝るから魔女さんのこと逃げないように監視よろしくな。まだ傷の手当てできてないし」
《りょーかい!あれ、でもアルデの寝る所…》
「まあ、別の部屋でどーにかするわ。ほんじゃーおやすみ」
《うん!お休み~》
布団の中に包まったままだった私にそんな会話が聞こえてくる。足音からあの人間がいなくなったのを確認して布団からそっと顔をのぞかせるとばっちりセイと目が合う。
《やっと出てきた!》
「うん…あ、セイ大丈夫!?何もされてない!?」
そう言いながらセイのことを確認するために横になっていた体を起こそうとするが、先ほどの様に鈍い痛みが体に走ったために起き上がるのを諦めてまたベッドに仰向けになる。
《もー、さっきアルデに安静にしろって言われたじゃん》
「アルデ…あの人間の名前?」
《うん。森で倒れてたシルマのことを『このままじゃ危ないから』って言って連れて来てくれたんだよ》
「でも人間じゃない…それにこの町の人間は魔女のことが嫌いなんでしょ…」
そう言いながら体にかかっている布団をきゅっと掴む。
いま体中にあるこの傷だって昼に"魔女狩り"と称して付けられた傷だ。今だって目を閉じたらあの男たちが自分に向けていた欲にまみれた笑顔が蘇る。もしもあのまま捕まっていたらどうなっていたのだろうかと考えると恐怖でおかしくなりそうだった。
そんな体験をした直後なのに「この人間は大丈夫」と言われてどうして信じられるだろうか。同じ町で暮らしている同じ人間だというのに。
そんなことを考えているのが分かっているのか、セイは私のすぐ近くに来て頬をなめる。これは昔から私が緊張していたり怖がっている時にしてくれるセイなりのなぐさめ方のようなものだ。そしてしばらくそうした後セイが語りかけてくる。
《確かにまだ信じられないかもしれないし、人間だから怖いって思うかもしれない》
「…うん」
《でも思い出して?昔人間に助けてもらった頃があるでしょ?》
「……うん」
昔幼いころ、少し年の離れた双子の姉達に「海を越えた所に浮かんでる島に行こう!」と提案されて共に出かけたことがあった。その時に私たちはこの町の近くで一人の人間の少年に出会ったのだ。
もとは少年が魔物に襲われて危なかったところに姉たちが助けに行ったのだが、幼かった私はまだ魔法も十分に使えずに魔物に襲われそうになったのだ。その時にその少年が私の腕を引っ張って私を助けてくれた。その少年は確かこの町の出身だといっていた。
そんなことを思い出しているとセイがこう続けた。
《ね、人間がみんな昼のやつらみたいな考えじゃないんだよ》
「…そうなのかな」
《それにアルデは大丈夫だよ、僕が保証する》
「なんで?」
《さっきアルデの夕飯作り手伝ってたんだけどね、間違って香味草が入った瓶をひっくり返して粉を頭から被っちゃったの》
「私が寝てる間に何やってんのよ…」
《えへへ。でもね、その時にアルデは全然怒らなかったの。それに僕が水やだって言ったからかちょうどいい温度のお湯で洗ってくれたの》
「へえ…」
《シルマが魔女だってことも服装で分かってたし、僕が魔女の使い魔だってことも分かってるのにこんなに優しくしてくれたんだよ?ね、信じられそうでしょ?》
「まあ、悪い人ではなさそう…かな」
《うん!だから大丈夫、そんなに怖がらなくてへーき!》
セイはそう言ってにししと笑った。
ーーシルマ sideout
ーーアルデ side
「ん…朝か…」
窓の外から聞こえる鳥の声でふと目を覚まして体を起こし、腕を伸ばしてぐぐっと伸びをすると体のあちこちからぽきぽきと音が聞こえてきて苦笑いを浮かべる。いつも寝ているベッドは彼女たちに貸してしまっていたので俺は床にタオルケットを敷いて寝ていたのであまり体の疲れが取れていないように感じるがまあしょうがないだろう。
「よし、今日も頑張りますか」
人間不信になりかけている魔女さんのこともどうにかしなくちゃいけないしね、と呟いて小さく笑う。魔女と使い魔がいる今日の一日はどんな楽しいことがあるだろうかと考えながらリビングへ向かった。
《あ、アルデおはよう!》
「っと、危ないな。おはよう」
そう言いながらセイが飛びついてきたので落とさないよう慌てて抱える。というかやっぱりこいつふわふわしてて毛糸玉みたいだな、柔らかいし。
そんなしょうもないことを考えながらセイの毛をふにふにといじっていると意外なところから意外な声が聞こえた。
「あの…おはようございます…」
「うおっ」
消え入りそうな小さな声だが確かに聞こえたその声に思わず変な声を出しながらベッドを振り返ると昨日はあんなに俺のことを怖がっていたシルマが布団から少し出してこちらを窺っていた。
「そんな怖がらなくてもいいじゃないですか…」
そう言いながら彼女は寂しそうな顔をする。というか思ったよりかわいいです、はい。
「昨日はあんなに怖がってたのにもう大丈夫なのか?」
《多分もう大丈夫だよ!アルデは大丈夫な人間だよって教えてあげたから!》
「ほー?というかずっと気になってたんだけどさ」
《なあに?》
「セイは結構すぐに俺のことを信じたよな、俺がお前らのことを邪険に扱うとは思わなかったのか?」
これがずっと気になっていた。確かに最初セイと会ったときは信じられなさそうな反応をされたが、思ったよりもすぐその敵意は消えてむしろ夕飯の時の様に人懐っこく話しかけてくるようになった。シルマの様にもう少し慣れるまで時間がかかるかと思ったのだが。
するとシルマが苦笑いを浮かべながらこう答えた。
「セイはもともとお話好きだから…それにセイは使い魔として"視る力"を持ってるので」
「視る力?」
「はい。目を合わせるとその人の心の波が感じ取れて考えが読めるとか何とか…使い魔に稀にある能力らしいですが魔女にはないので私はよく分からないんですが」
《簡単にいえばその人の目を見ると『あ、この人嘘ついてる!逃げよ!』って分かるんだよ!
でも最初アルデと目を合わせた時『この人は平気な人だ!』って思ったの!》
「なるほど。使い魔ってすごいんだな」
「本当にセイには助けられてばかりです。あ、そういえばアルデ…さん」
「ん?」
「私たちを助けていただいて、そしてこうして居場所も作ってくださって」
そう言いながらぺこりと頭を下げる。顔を上げた時には彼女は小さく微笑んでいた。
「じゃ、俺寝るから魔女さんのこと逃げないように監視よろしくな。まだ傷の手当てできてないし」
《りょーかい!あれ、でもアルデの寝る所…》
「まあ、別の部屋でどーにかするわ。ほんじゃーおやすみ」
《うん!お休み~》
布団の中に包まったままだった私にそんな会話が聞こえてくる。足音からあの人間がいなくなったのを確認して布団からそっと顔をのぞかせるとばっちりセイと目が合う。
《やっと出てきた!》
「うん…あ、セイ大丈夫!?何もされてない!?」
そう言いながらセイのことを確認するために横になっていた体を起こそうとするが、先ほどの様に鈍い痛みが体に走ったために起き上がるのを諦めてまたベッドに仰向けになる。
《もー、さっきアルデに安静にしろって言われたじゃん》
「アルデ…あの人間の名前?」
《うん。森で倒れてたシルマのことを『このままじゃ危ないから』って言って連れて来てくれたんだよ》
「でも人間じゃない…それにこの町の人間は魔女のことが嫌いなんでしょ…」
そう言いながら体にかかっている布団をきゅっと掴む。
いま体中にあるこの傷だって昼に"魔女狩り"と称して付けられた傷だ。今だって目を閉じたらあの男たちが自分に向けていた欲にまみれた笑顔が蘇る。もしもあのまま捕まっていたらどうなっていたのだろうかと考えると恐怖でおかしくなりそうだった。
そんな体験をした直後なのに「この人間は大丈夫」と言われてどうして信じられるだろうか。同じ町で暮らしている同じ人間だというのに。
そんなことを考えているのが分かっているのか、セイは私のすぐ近くに来て頬をなめる。これは昔から私が緊張していたり怖がっている時にしてくれるセイなりのなぐさめ方のようなものだ。そしてしばらくそうした後セイが語りかけてくる。
《確かにまだ信じられないかもしれないし、人間だから怖いって思うかもしれない》
「…うん」
《でも思い出して?昔人間に助けてもらった頃があるでしょ?》
「……うん」
昔幼いころ、少し年の離れた双子の姉達に「海を越えた所に浮かんでる島に行こう!」と提案されて共に出かけたことがあった。その時に私たちはこの町の近くで一人の人間の少年に出会ったのだ。
もとは少年が魔物に襲われて危なかったところに姉たちが助けに行ったのだが、幼かった私はまだ魔法も十分に使えずに魔物に襲われそうになったのだ。その時にその少年が私の腕を引っ張って私を助けてくれた。その少年は確かこの町の出身だといっていた。
そんなことを思い出しているとセイがこう続けた。
《ね、人間がみんな昼のやつらみたいな考えじゃないんだよ》
「…そうなのかな」
《それにアルデは大丈夫だよ、僕が保証する》
「なんで?」
《さっきアルデの夕飯作り手伝ってたんだけどね、間違って香味草が入った瓶をひっくり返して粉を頭から被っちゃったの》
「私が寝てる間に何やってんのよ…」
《えへへ。でもね、その時にアルデは全然怒らなかったの。それに僕が水やだって言ったからかちょうどいい温度のお湯で洗ってくれたの》
「へえ…」
《シルマが魔女だってことも服装で分かってたし、僕が魔女の使い魔だってことも分かってるのにこんなに優しくしてくれたんだよ?ね、信じられそうでしょ?》
「まあ、悪い人ではなさそう…かな」
《うん!だから大丈夫、そんなに怖がらなくてへーき!》
セイはそう言ってにししと笑った。
ーーシルマ sideout
ーーアルデ side
「ん…朝か…」
窓の外から聞こえる鳥の声でふと目を覚まして体を起こし、腕を伸ばしてぐぐっと伸びをすると体のあちこちからぽきぽきと音が聞こえてきて苦笑いを浮かべる。いつも寝ているベッドは彼女たちに貸してしまっていたので俺は床にタオルケットを敷いて寝ていたのであまり体の疲れが取れていないように感じるがまあしょうがないだろう。
「よし、今日も頑張りますか」
人間不信になりかけている魔女さんのこともどうにかしなくちゃいけないしね、と呟いて小さく笑う。魔女と使い魔がいる今日の一日はどんな楽しいことがあるだろうかと考えながらリビングへ向かった。
《あ、アルデおはよう!》
「っと、危ないな。おはよう」
そう言いながらセイが飛びついてきたので落とさないよう慌てて抱える。というかやっぱりこいつふわふわしてて毛糸玉みたいだな、柔らかいし。
そんなしょうもないことを考えながらセイの毛をふにふにといじっていると意外なところから意外な声が聞こえた。
「あの…おはようございます…」
「うおっ」
消え入りそうな小さな声だが確かに聞こえたその声に思わず変な声を出しながらベッドを振り返ると昨日はあんなに俺のことを怖がっていたシルマが布団から少し出してこちらを窺っていた。
「そんな怖がらなくてもいいじゃないですか…」
そう言いながら彼女は寂しそうな顔をする。というか思ったよりかわいいです、はい。
「昨日はあんなに怖がってたのにもう大丈夫なのか?」
《多分もう大丈夫だよ!アルデは大丈夫な人間だよって教えてあげたから!》
「ほー?というかずっと気になってたんだけどさ」
《なあに?》
「セイは結構すぐに俺のことを信じたよな、俺がお前らのことを邪険に扱うとは思わなかったのか?」
これがずっと気になっていた。確かに最初セイと会ったときは信じられなさそうな反応をされたが、思ったよりもすぐその敵意は消えてむしろ夕飯の時の様に人懐っこく話しかけてくるようになった。シルマの様にもう少し慣れるまで時間がかかるかと思ったのだが。
するとシルマが苦笑いを浮かべながらこう答えた。
「セイはもともとお話好きだから…それにセイは使い魔として"視る力"を持ってるので」
「視る力?」
「はい。目を合わせるとその人の心の波が感じ取れて考えが読めるとか何とか…使い魔に稀にある能力らしいですが魔女にはないので私はよく分からないんですが」
《簡単にいえばその人の目を見ると『あ、この人嘘ついてる!逃げよ!』って分かるんだよ!
でも最初アルデと目を合わせた時『この人は平気な人だ!』って思ったの!》
「なるほど。使い魔ってすごいんだな」
「本当にセイには助けられてばかりです。あ、そういえばアルデ…さん」
「ん?」
「私たちを助けていただいて、そしてこうして居場所も作ってくださって」
そう言いながらぺこりと頭を下げる。顔を上げた時には彼女は小さく微笑んでいた。
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