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第1話 犬耳と下宿とナポリタン風焼きうどん
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目が覚めると朝だった。
開けっ放しの窓際で、小鳥がチュンチュン鳴いている。
燦々と降り注ぐ陽の光がやたらと眩しい。
というか、太陽は大分高い所にある。
ぶっちゃけもう、昼過ぎだった。
万年床を這い出すと空きっ腹がグゥと鳴く。
ここ二、三日水と酒しか入れてねえぇもんなぁ。
凹んだ腹をボリボリ掻いて、立ち上がって身体を伸ばすと軽い目眩がした。
流石にいい加減、何かを食わないと命が危ないな。
おれの部屋は由緒正しき煤けた三畳一間。
ちゃぶ台と万年床と酒瓶と酒瓶と酒瓶と酒瓶が転がっているだけの狭くて薄汚い部屋だ。
薄っぺらいフスマを開けると、板敷きの廊下左右に伸びて、ずらずらと似たようなフスマが並んでいる。
木造三階建て。下足は建物入口の玄関。便所食堂共用。風呂は無し。
フスマに鍵無し。プライベートなんて高尚なものも、もちろん無し。
ここ、トコヨ荘は大体そんな感じの古臭い安下宿だ。
古臭いと言うより、もはや歴史の遺物と呼ぶのが相応しい。
ここまで行くと、逆に維持に金がかかりそうな気がするが、ありがたい事におれがここに住み始めてから、家賃の値上げは一度も無い。
今の相場だと、それでやっていけるのか店子の方が心配になるほどの安さだ。
まあ、トコヨ荘が潰れてないんだから問題無いんだろう。
問題だと言うなら、家賃の安さより――。
ぐうと腹が鳴った。
食い物を入れる気になって、胃袋が久しぶりに張り切り始めたらしい。
つっても、当面の生活費は酒とタバコに変わったわけで。
タバコに火をつけた所で、廊下に張られた黄ばんだ紙に「火気厳禁」と書いてあるのに気がついた。
まあいいか。
煙をぽかりと吹き出して歩き出す。
さて、誰にたかるかね。
一歩ごとにギシギシ鳴る階段を降りると、玄関先に犬耳をつけた子供が倒れていた。
「……うう……誰か……」
スパゲッティとかいいな、安いし。
「ここは助ける所じゃないの? ほら、テンプレ的にさ」
犬耳を無視する俺を、呼び止めたのはヘッドマウントディスプレイつけっぱなしの小僧っ子。
黒髪黒シャツ黒短パン。曰くパンツも黒色だ。
何とかとかいうゲームのチャンピオンだとかって話だが、ゲーム画面は顔についているディスプレイの中だ。
常時つけっぱなしで、よく周囲の状況が分かるもんだと思うが、普通に生活出来ているんで、何かやってるんだろう。
っていうか、テンプレってなんだよ。
「重要なんだってばさ、そういうの。ほら、ツカミの重要性ってやつ?」
知らんがな、んなもん。
それよりメシだよ。腹減ってかなわん。
「ちなみに予定は?」
スパゲッティかうどんくらいは食堂にあるだろ。
そいつをこう、適当になんかしてだな。
まあ、腹に溜まりゃなんでもいいわ。
「いい加減だなぁ。というかほら、助けてやりなよ。このまま行き倒れられても困るんじゃない? 管理人的に」
だから俺は管理人じゃねえっつってんだろ。
金も貰ってねえのに、んな事やってられっかよ。
「そんなんグチグチ言っても、結局お鉢回ってくるじゃん」
くっそ、面倒臭せえなぁ。
行き倒れになりそうなのはこっちも一緒だっつうのに。
ほれ子供。ちょっと立ってみろ……って軽いなぁ。
「そりゃ子供だからね。栄養も良くないみたいだし」
外傷もねえな。
腹減りすぎて行き倒れたクチかこいつ。
「ここで餌付けしておいて、ご主人様とか呼ばせてさ。後はなんか褒め称えさせるんだよ」
ペット禁止だぞここ。
「そういう意味じゃないんだけどなぁ」
「奴隷の使い方なんざ、そんなモンじゃねえの?」
もう一人寄って来たのは、やたらとでかい全身鎧を着込んだ男。
背も高く横幅も広く、腕も脚も太くって、顔もでかけりゃ目鼻立ちもやたらとでかい。
後、でかい。
前、銭湯で見た時は腕くらいあった。
つうか、奴隷でもねえよ、でかぶつ。
「そうか? 首輪ついてるぞ」
「お。これは確定ですね間違いない。そしてご主人様とか呼ばせて良いことするわけですよデュフフフ」
ゲームチャンプ。お前、その笑い方やめろ。
嫁に嫌われるぞ。
「嫁は俺にぞっこんだからいいの」
けっ、死にやがれ。
「死ね」
「死んで良いですね」
いつの間にか混ざるよな。お前。
「お前、気配無くて怖いんだよ」
「そうですかね。私としてはいつものメンバーが姦しいので顔を出しただけなのですが」
自然に混じっているのは、白ガクランをキチッと着込んだ、何と言うか、一見して優等生。
笑ってるみたいな細い目が、よく見ると全然笑っていない。
そういう奴だ。
「それで、助けるんですよね? それでしたら、この間作った魔法薬がありまして」
「お、実験台か」
「バフ効果は何かな?」
いいから運ぶぞ。
でかぶつちょっと持てよ。
「お前が拾った犬だろ。お前が責任取れよ」
飼い犬でもねえし、拾ってもいねえよ。
くそ、面倒臭え。
……あー。腹減って行き倒れっつう事ぁ、あんま重いのは食わせられんよな。
「多分、食べてない期間はてめえと変わらんと思うぞ」
「酒だけで何日生きられるかチャレンジしてるのかと思った」
「それで固形物が入る貴方の胃袋が信じられません。後、普通に動けるのも」
酒はガソリンの代わりだからいいんだよ。動けるんだよ。
まあ、あんま重いのも嫌だな。
うどんにすっか。
「うどん、いいね。俺は温玉ぶっかけ。卵天ぷらもつけて」
卵天は外で買ってこい。
作るの大変なんだよあれ。
「私はシンプルに鰹節ですかね。醤油を回してさらさらと」
お前はうどんをさらさら飲むんじゃねえよ。
「いや、アレは飲みモンだろ。こう、椀ごと一気にがばっと」
でかぶつはもうちょっと、なんつうか。
噛みごたえとか喉越しとか楽しめよ。
「喉越しは楽しんでいるぞ」
喉越ししかねえじゃねえか。
ったく、好き勝手言いやがってこいつらは。
その時、ガララ、と音を立てて玄関が開いた。
「話は聞いた! ここはぼくに任せてもらおう!」
そこにいたのは、トコヨ荘の古株のテイさんだった。
テイさんは本名を”丁”と書いて”ひなた”だか”かのと”だかそんな感じの読み方をする。
おれよりも長くトコヨ荘にいるのはこの人だけなので、何かと頼りにしている。
「こういう時はボクが締めないと駄目だと思うだよね! そこでボクが進めるのはナポリタン風焼きうどん! これしか無いよ!」
と、言う設定で本人はいるんだが、変な拘りで小うるさい事を言って回る面倒くさい人だ。
ちなみに、本名の読み方を誰も覚えていないんで、皆”テイさん”と呼んでいる。
そーいや、テイさん。うどんあったっすかね?
「うん。ボクが買ってある冷凍のが結構あったはずだよ」
「あざっすwwwwwww。ゴチになるっすwwwっw」
「草生やしすぎですよ。あ、私もご馳走になります」
「いやあ。テイさんはたよりになるなー」
まあ、頻繁にメシを奢ってくれるからいい人としておく。
「それで、その子は? 新入りかな?」
「犬耳奴隷美少女だよ」
「うーん。細いからもしかしてと思ったけど、男の娘だったらストライクゾーンだったんだけどねぇ。惜しい惜しい」
そして、相変わらずよく分からないストライクゾーンの持ち主だ。
「いやぁ。逆に分かりやすいと思いますよ、私は」
「明白じゃねえかよ」
わかりたくねえんだよ。
しかし、ナポリタン焼きうどんか。昔よくやったっすよね。
トウガラシとか入れて。
ビールのアテにいいんだよ。
「また酒ですか。いい加減身体壊しますよ」
「ボクはコンビーフ入れるのが好きだなぁ」
「コンビーフなんて高級食材を……」
昔は安かったんだよ。
いつの間にか高級食材になっとったな。
スパムとか、高くて不味くて食ってられんぞ。
まあ、焼きうどんにすっかな。
こいつには薄く伸ばしてすいとんみたいにしてやって。
「何だかんだで優しいんですよね。貴方は」
「甘いんだよ。野垂れ死にさせてやれって」
「これはフラグですなデュフフフ」
うっせ。
ぞろぞろと、並んで一行が歩き出す。
おれと。
テイさんと。
くそでかい鎧を着込んだでかぶつと。
無敵のゲームチャンピオンと。
優等生の魔法使いと。
それに新入りの首輪付きの犬耳と。
「いやいや、待て待て。食い物の事で何故我輩を呼ばぬのか。今から貴様らに本物のBBQというものを教えてくれようぞ」
「うどんと言えば小麦! 小麦があるなら、それを一千倍に変える方法があるんだけど! どうかな?」
「お金で世界は救えるのでしょうか。人の子よ」
「……うどん……」
「小麦粉を裏技的な有効活用出来ぬもんでござるかなー」
それからどこからともなく現れる、妖しい怪しい連中と。
食堂に向かってうどんに火をかける。
立ち上るはケチャップの香ばしい匂い。
「……あの。ここは? あなた方は一体……」
と、犬耳がメシの匂いで目が冷めた。
ここは色んなトコから色んな奴が集まってくる。
異世界下宿「トコヨ荘」。
行く場所が無いなら、部屋は余ってるから入りゃいい。
まあアレだ。
ようこそ。新入りさん。
陽はそろそろ下り始めていて。
腹も懐もカラッケツで、あるのは時間と暇ばかり。
夢も希望もあるようで無いような。まあとりあえず、おれにはそんなに残ってない。
そんなこんなの、おれとテイさんとトコヨ荘の面々の。
なんてこと無い一日は、これから始まるところだった。
開けっ放しの窓際で、小鳥がチュンチュン鳴いている。
燦々と降り注ぐ陽の光がやたらと眩しい。
というか、太陽は大分高い所にある。
ぶっちゃけもう、昼過ぎだった。
万年床を這い出すと空きっ腹がグゥと鳴く。
ここ二、三日水と酒しか入れてねえぇもんなぁ。
凹んだ腹をボリボリ掻いて、立ち上がって身体を伸ばすと軽い目眩がした。
流石にいい加減、何かを食わないと命が危ないな。
おれの部屋は由緒正しき煤けた三畳一間。
ちゃぶ台と万年床と酒瓶と酒瓶と酒瓶と酒瓶が転がっているだけの狭くて薄汚い部屋だ。
薄っぺらいフスマを開けると、板敷きの廊下左右に伸びて、ずらずらと似たようなフスマが並んでいる。
木造三階建て。下足は建物入口の玄関。便所食堂共用。風呂は無し。
フスマに鍵無し。プライベートなんて高尚なものも、もちろん無し。
ここ、トコヨ荘は大体そんな感じの古臭い安下宿だ。
古臭いと言うより、もはや歴史の遺物と呼ぶのが相応しい。
ここまで行くと、逆に維持に金がかかりそうな気がするが、ありがたい事におれがここに住み始めてから、家賃の値上げは一度も無い。
今の相場だと、それでやっていけるのか店子の方が心配になるほどの安さだ。
まあ、トコヨ荘が潰れてないんだから問題無いんだろう。
問題だと言うなら、家賃の安さより――。
ぐうと腹が鳴った。
食い物を入れる気になって、胃袋が久しぶりに張り切り始めたらしい。
つっても、当面の生活費は酒とタバコに変わったわけで。
タバコに火をつけた所で、廊下に張られた黄ばんだ紙に「火気厳禁」と書いてあるのに気がついた。
まあいいか。
煙をぽかりと吹き出して歩き出す。
さて、誰にたかるかね。
一歩ごとにギシギシ鳴る階段を降りると、玄関先に犬耳をつけた子供が倒れていた。
「……うう……誰か……」
スパゲッティとかいいな、安いし。
「ここは助ける所じゃないの? ほら、テンプレ的にさ」
犬耳を無視する俺を、呼び止めたのはヘッドマウントディスプレイつけっぱなしの小僧っ子。
黒髪黒シャツ黒短パン。曰くパンツも黒色だ。
何とかとかいうゲームのチャンピオンだとかって話だが、ゲーム画面は顔についているディスプレイの中だ。
常時つけっぱなしで、よく周囲の状況が分かるもんだと思うが、普通に生活出来ているんで、何かやってるんだろう。
っていうか、テンプレってなんだよ。
「重要なんだってばさ、そういうの。ほら、ツカミの重要性ってやつ?」
知らんがな、んなもん。
それよりメシだよ。腹減ってかなわん。
「ちなみに予定は?」
スパゲッティかうどんくらいは食堂にあるだろ。
そいつをこう、適当になんかしてだな。
まあ、腹に溜まりゃなんでもいいわ。
「いい加減だなぁ。というかほら、助けてやりなよ。このまま行き倒れられても困るんじゃない? 管理人的に」
だから俺は管理人じゃねえっつってんだろ。
金も貰ってねえのに、んな事やってられっかよ。
「そんなんグチグチ言っても、結局お鉢回ってくるじゃん」
くっそ、面倒臭せえなぁ。
行き倒れになりそうなのはこっちも一緒だっつうのに。
ほれ子供。ちょっと立ってみろ……って軽いなぁ。
「そりゃ子供だからね。栄養も良くないみたいだし」
外傷もねえな。
腹減りすぎて行き倒れたクチかこいつ。
「ここで餌付けしておいて、ご主人様とか呼ばせてさ。後はなんか褒め称えさせるんだよ」
ペット禁止だぞここ。
「そういう意味じゃないんだけどなぁ」
「奴隷の使い方なんざ、そんなモンじゃねえの?」
もう一人寄って来たのは、やたらとでかい全身鎧を着込んだ男。
背も高く横幅も広く、腕も脚も太くって、顔もでかけりゃ目鼻立ちもやたらとでかい。
後、でかい。
前、銭湯で見た時は腕くらいあった。
つうか、奴隷でもねえよ、でかぶつ。
「そうか? 首輪ついてるぞ」
「お。これは確定ですね間違いない。そしてご主人様とか呼ばせて良いことするわけですよデュフフフ」
ゲームチャンプ。お前、その笑い方やめろ。
嫁に嫌われるぞ。
「嫁は俺にぞっこんだからいいの」
けっ、死にやがれ。
「死ね」
「死んで良いですね」
いつの間にか混ざるよな。お前。
「お前、気配無くて怖いんだよ」
「そうですかね。私としてはいつものメンバーが姦しいので顔を出しただけなのですが」
自然に混じっているのは、白ガクランをキチッと着込んだ、何と言うか、一見して優等生。
笑ってるみたいな細い目が、よく見ると全然笑っていない。
そういう奴だ。
「それで、助けるんですよね? それでしたら、この間作った魔法薬がありまして」
「お、実験台か」
「バフ効果は何かな?」
いいから運ぶぞ。
でかぶつちょっと持てよ。
「お前が拾った犬だろ。お前が責任取れよ」
飼い犬でもねえし、拾ってもいねえよ。
くそ、面倒臭え。
……あー。腹減って行き倒れっつう事ぁ、あんま重いのは食わせられんよな。
「多分、食べてない期間はてめえと変わらんと思うぞ」
「酒だけで何日生きられるかチャレンジしてるのかと思った」
「それで固形物が入る貴方の胃袋が信じられません。後、普通に動けるのも」
酒はガソリンの代わりだからいいんだよ。動けるんだよ。
まあ、あんま重いのも嫌だな。
うどんにすっか。
「うどん、いいね。俺は温玉ぶっかけ。卵天ぷらもつけて」
卵天は外で買ってこい。
作るの大変なんだよあれ。
「私はシンプルに鰹節ですかね。醤油を回してさらさらと」
お前はうどんをさらさら飲むんじゃねえよ。
「いや、アレは飲みモンだろ。こう、椀ごと一気にがばっと」
でかぶつはもうちょっと、なんつうか。
噛みごたえとか喉越しとか楽しめよ。
「喉越しは楽しんでいるぞ」
喉越ししかねえじゃねえか。
ったく、好き勝手言いやがってこいつらは。
その時、ガララ、と音を立てて玄関が開いた。
「話は聞いた! ここはぼくに任せてもらおう!」
そこにいたのは、トコヨ荘の古株のテイさんだった。
テイさんは本名を”丁”と書いて”ひなた”だか”かのと”だかそんな感じの読み方をする。
おれよりも長くトコヨ荘にいるのはこの人だけなので、何かと頼りにしている。
「こういう時はボクが締めないと駄目だと思うだよね! そこでボクが進めるのはナポリタン風焼きうどん! これしか無いよ!」
と、言う設定で本人はいるんだが、変な拘りで小うるさい事を言って回る面倒くさい人だ。
ちなみに、本名の読み方を誰も覚えていないんで、皆”テイさん”と呼んでいる。
そーいや、テイさん。うどんあったっすかね?
「うん。ボクが買ってある冷凍のが結構あったはずだよ」
「あざっすwwwwwww。ゴチになるっすwwwっw」
「草生やしすぎですよ。あ、私もご馳走になります」
「いやあ。テイさんはたよりになるなー」
まあ、頻繁にメシを奢ってくれるからいい人としておく。
「それで、その子は? 新入りかな?」
「犬耳奴隷美少女だよ」
「うーん。細いからもしかしてと思ったけど、男の娘だったらストライクゾーンだったんだけどねぇ。惜しい惜しい」
そして、相変わらずよく分からないストライクゾーンの持ち主だ。
「いやぁ。逆に分かりやすいと思いますよ、私は」
「明白じゃねえかよ」
わかりたくねえんだよ。
しかし、ナポリタン焼きうどんか。昔よくやったっすよね。
トウガラシとか入れて。
ビールのアテにいいんだよ。
「また酒ですか。いい加減身体壊しますよ」
「ボクはコンビーフ入れるのが好きだなぁ」
「コンビーフなんて高級食材を……」
昔は安かったんだよ。
いつの間にか高級食材になっとったな。
スパムとか、高くて不味くて食ってられんぞ。
まあ、焼きうどんにすっかな。
こいつには薄く伸ばしてすいとんみたいにしてやって。
「何だかんだで優しいんですよね。貴方は」
「甘いんだよ。野垂れ死にさせてやれって」
「これはフラグですなデュフフフ」
うっせ。
ぞろぞろと、並んで一行が歩き出す。
おれと。
テイさんと。
くそでかい鎧を着込んだでかぶつと。
無敵のゲームチャンピオンと。
優等生の魔法使いと。
それに新入りの首輪付きの犬耳と。
「いやいや、待て待て。食い物の事で何故我輩を呼ばぬのか。今から貴様らに本物のBBQというものを教えてくれようぞ」
「うどんと言えば小麦! 小麦があるなら、それを一千倍に変える方法があるんだけど! どうかな?」
「お金で世界は救えるのでしょうか。人の子よ」
「……うどん……」
「小麦粉を裏技的な有効活用出来ぬもんでござるかなー」
それからどこからともなく現れる、妖しい怪しい連中と。
食堂に向かってうどんに火をかける。
立ち上るはケチャップの香ばしい匂い。
「……あの。ここは? あなた方は一体……」
と、犬耳がメシの匂いで目が冷めた。
ここは色んなトコから色んな奴が集まってくる。
異世界下宿「トコヨ荘」。
行く場所が無いなら、部屋は余ってるから入りゃいい。
まあアレだ。
ようこそ。新入りさん。
陽はそろそろ下り始めていて。
腹も懐もカラッケツで、あるのは時間と暇ばかり。
夢も希望もあるようで無いような。まあとりあえず、おれにはそんなに残ってない。
そんなこんなの、おれとテイさんとトコヨ荘の面々の。
なんてこと無い一日は、これから始まるところだった。
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