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第21話 帰還のハヤシとライス
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台所で圧力鍋が鳴いていた。
やたらと姿勢の良いエプロン姿の白学ランが、まな板の前に立っていた。
「おや、お久しぶりですね」
……自分から出ていく宣言して、もう帰ってきたんかお前。
「もう少しくらい、感動の再会を喜んでくれても罰は当たらないと思いますよ」
感動の再会ってほど時間も経ってねえだろ。
「私としては感動の再会なんですけどね。結構苦労しましたし」
親戚との決着はついたんか。
「まあぼちぼちですね。一つが片付くと次の問題が出てくる訳でして」
いつもの奴だな。
んで、何作ってんだ優等生。
「秘密です」
あのなぁ。
「ヒントはじゃがいも、人参、タマネギ、牛肉……」
カレーじゃねえか。
でかぶつはともかく、ゲームチャンプはうるさいぞカレーは。
「正答はノーコメントとしますが、彼の場合ボンカレーゴールド出していれば満足するのでは」
最近、なんか色々トッピングするのに目覚めてきたぞ。
「あの手のレトルト食品はそのままの味が一番美味しいと聞きますが」
そこを敢えて外すのが浪漫だとかなんとか。
「まあ、チーズトッピングとかは美味しいですがね。入れます?」
気が向いたらな。おれはまあ、米でも炊いておくか。
そうだ、優等生。お前の部屋大分片付けちまったぞ。
「とりあえずは布団があれば良いですよ。あちらがまったく暇な訳でも無いですし。当分は寝に帰るだけですね」
お前、無理すんなよ。
「おや、珍しく優しいですね」
そら、こっちで倒れられたりでもしたら絶対おれにお鉢が回ってくるだろ。
「回復魔法使える人もいるはずなんですけどね」
おかゆ作れとか、おじやがいいとか。ぴいぴい言われるのが目に浮かぶわ。
「チーズ入れろとかバターがいいとか。海鮮がいいとかカニ入れろとか」
カニはあってもカニカマになるな。
「もどき食材も結構好きですよ、私」
精進料理とか食ってそうだよな、お前。
「山に籠もっていた時には食べていましたが、やっぱり人体に肉は必須だと思いました」
昔の山籠りは、上役の目を盗んで魚取ったり獣食ったりしてたらしいぞ。
「あの手の苦行は、苦行の無意味さと体裁を上手く整える方法を学ぶものだと途中で気づきましたね」
どんなんやったんだよ。
「滝をずっと見るんですよ。それを水の流れが止まるまで続けます」
ありそうな修行だな。
「超集中力で水の流れが止まって見えたと言うと殴られ。魔法を使って水を止めても殴られます」
禅宗の修行みたいだな。
「私は住職との殴り合いに勝った時に修行終了を告げられましたね」
禅宗の修行でそういうのあるぞ。
「最短記録者は、修行を告げられた瞬間に住職の頭を岩で殴った奴らしいですよ」
禅ってのは深いんだか浅いんだか分からんな。
「仏教はそう言うものらしいのですよ」
何事も暴力で解決するのが一番だ、とかか。
「大体そんなものです」
でかぶつんところみたいだな。
「どこも同じですね。さて、そろそろ料理を構ってあげますか」
カレールーはその棚の上にあるぞ。好きなの使え。
「ルゥは使いませんよ」
ん。香辛料から作るんか。間に合わんだろ。
「さて、どうするんでしょうか」
ん? 鍋の中身が黒いな。これはアレか。ハヤシライスか。
「正解です。帰還祝いに、本場仕込みのデミグラスソースをご賞味いただこうかと思いまして」
ハイライかぁ。そういや最近食ってねえな。
「ハイライって。そういう言い方あるんですか」
昔はそう言ってたんだよ。
「貴方の昔は、大分ローカルな事が多いので」
どこかで言ってりゃそれでいいんじゃねえの。
「ある程度スタンダード性を求めたい所なんですよ。私は」
昔は今ほど情報伝達早く無いからな。スタンダードなんてモンは無かったと思うぞ。
「のんびりしたものですね」
家庭料理も、家ごとの味が大分違ってな。
友達んちにお泊りに行くと、うちと味が違うんで驚いたもんだぞ。砂糖の入ったカレーとかあったぞ。
「それは単純に甘口では」
何だろうな。後味が甘かったんだよ。
「甘みは旨味ですかね」
多分そんなモンだろうな。それなりに美味かったからまたな。
「それでも俺は、ハヤシライスは認められない」
急にどうしたゲームチャンプ。
「ほら、なんか中途半端じゃない? ハヤシライスって」
そうか?
「確かにビーフシチューで良いのでは感はありますが」
「というか、見た目でカレー味を期待するじゃん。でも全然辛くないじゃん。おかしいじゃん」
じゃんじゃんうるせえよ。
「気持ちは分かります。もどき和菓子にも似た感覚があります」
見た目完全に焼き魚のやつとかあるよな。
「それは美味しいの?」
味自体は甘いんだがな。
「なんというか、脳が混乱しますね」
「ほら、ハヤシも一緒だよ」
「その認識をぶち殺すハヤシライスを作りたいと思います」
「ちょっとこの人、キャラ変わってない?」
キャラが変わるのは、よくある話だから気にするな。
「実際の話。ライスに乗せるのにビーフシチューそのままというのは確かに芸がありませんよね」
せめて味は濃い目にしないと話にならんわな。
「でも、カレーを超えるインパクトとなると、そうとう味が濃くなるよ?」
つっても、辛くしたらカレーと変わらんぞ。
「酸っぱいとか甘いのもどうだと思うよ」
ハヤシライスはトマトの酸味がアクセントだぞ。
「あれがご飯に合わないと思う、俺」
トマトカレーは美味いんだがな。
「なんだろう。ハヤシの酸味は主張しすぎなのが許せない」
お前あれだろ。酢豚のパイナップルが駄目な奴だろ。
「パイナップルは大丈夫」
お前の好みは微妙すぎて分からん。
「酢豚は全体的にパイナップルの味が溶け込んでるじゃん。あれなら別にそういう味だと思えるよ」
煮込みが足りんと味が行き渡らんがな。
「パイナップルがちゃんと煮えて無いのは論外でしょ。まずいカレーは駄目とか言ってるのと同じだよ」
「ということで、美味しいハヤシライスを作りますので」
「期待している」
ハードル上げられるだけ上げとるな。
「ハードルも下からくぐれるくらいまで上げれば無いと同じですからね」
「それはミエミエのフカしという奴でしょ」
優等生も丸くなったな。
「昔だったら、完璧以外は許さなかったね」
「そんなキャラ設定でやってた記憶はありませんよ。私はみんなのお母さんポジションを自認していましたよ」
「それは無いでしょ」
「そんなひどい」
「反応が早すぎる件」
「貴方に合わせているんですよ」
まあ、メシはよく作ってたがな。
「まあ正直。私はお母さんムープというのがよく分かりませんが」
「分からないでやってたのか」
「なので、多少の齟齬があった事は否めません」
メシ作って小言言ってりゃお母ちゃんだぞ。
「なるほど。つまり小言が足りなかったと」
「それも違うと思うなぁ」
つっても、お前も鍵っ子だったんだろ、ゲームチャンプ。
「俺には巨乳の妹がいるから。家族の絆とかはしっかりあったし」
巨乳は余計だ。
「私にも妹がいますが。まあ、巨乳ではありませんが」
「勝った」
「勝ち負けとかありますかね」
女は尻だぞ。
「スタイルは最高ですよ。私の妹」
「俺の妹のスタイルも最高だぞ。むっちむちで」
女の理想とする良いスタイルってのと、男が好きな体型は別なんだよなぁ。
「妹も、いつもダイエットしなきゃとか言ってるな。俺が許さないけど」
何やってんだよお前。
「夜中にピザ頼んで眼の前で食べてみせたりとかしてるけど」
「思春期の娘にそれは酷いですよ。私の妹だったら危険な事になっていますよ」
お前の妹はそうでなくても危険物だからな。
「最近は落ち着いてきましたよ」
「優等生に関しては、妹ラスボス説が出てたんだけど。そのへんどうなの?」
「例え世界の全てが敵に回ったとしても、妹に付きますよ私は」
そこまで思い詰めるのが怖いんだよお前ら。
「思い詰めるタイプなんですよ。妹は」
死にゃしねえんだから気楽に生きろって伝えておけよ。
「今度連れて来ます」
連れて来なくていいから伝えてやれ。
「今度連れて来ますから」
連れてくるなっつってんだよ。
「それでも今度連れて来ますよ」
くっそ。妙に押しが強くなったなこいつ。
「来るなら予め伝えておいてね」
「準備して待っていてくれますか」
「準備して留守にして待ってるよ」
お前とでかぶつは逃さんぞ。
「まあ、その日を楽しみにしておきましょう。さて、それではライスの準備を」
メシは炊けてるぞ。
「有り難い話ですが、実は用意出来ているのです」
冷凍メシ出して、って事はアレか。
「そう、焼き飯にします。そしてこの、シーフードの旨味を煮詰めたデミグラスソースを投入。それをチーズに絡めて焼きます」
手間と金のかかった事やるなぁ。
「それってパエリアじゃん。ハヤシライスじゃないじゃん」
「シーフードハヤシは定番で有りますし、焼きカレーがありならこれも有りでしょう」
「ぐぬぬ。シーフードハヤシでぐぐるとレシピが出おる……」
お前の判断基準はインターネットか。
「少なくとも、そういうのが正しいと思う人がいるって事だからね」
「さて、いただきましょう。美味しいですよ、多分」
味見しようぜ。
「愛情たっぷり入っているので美味しいはずですよ」
味見するのも愛情だぞ。
「一番に食べて欲しいんですよ」
「押し強くなったなぁ。まあ俺は諦めた」
「では、皿に分けますよ」
まあ、そんなに不味くはならんだろ。
「お。やっているね。ボクのオススメメニューの味はどうかな」
そこに現れたのはトコヨ荘の古株のテイさんだった。
テイさんの考案かよこれ。
「正しくは共同考案だねぇ。まあきっと美味しいと思うよ」
不味かったら残りは全部テイさんに食ってもらおう。
「同意」
「了承しました」
「お、戻ってきたか優等生。オレも混ぜろよ」
匂いを嗅ぎつけて、いつもの面々がやってくる。
ぐつぐつとチーズが煮える鍋を、好き勝手にお玉が掻き回る。
これだけ人数がいればまあ、不味くても余る事はねえかな。
やたらと姿勢の良いエプロン姿の白学ランが、まな板の前に立っていた。
「おや、お久しぶりですね」
……自分から出ていく宣言して、もう帰ってきたんかお前。
「もう少しくらい、感動の再会を喜んでくれても罰は当たらないと思いますよ」
感動の再会ってほど時間も経ってねえだろ。
「私としては感動の再会なんですけどね。結構苦労しましたし」
親戚との決着はついたんか。
「まあぼちぼちですね。一つが片付くと次の問題が出てくる訳でして」
いつもの奴だな。
んで、何作ってんだ優等生。
「秘密です」
あのなぁ。
「ヒントはじゃがいも、人参、タマネギ、牛肉……」
カレーじゃねえか。
でかぶつはともかく、ゲームチャンプはうるさいぞカレーは。
「正答はノーコメントとしますが、彼の場合ボンカレーゴールド出していれば満足するのでは」
最近、なんか色々トッピングするのに目覚めてきたぞ。
「あの手のレトルト食品はそのままの味が一番美味しいと聞きますが」
そこを敢えて外すのが浪漫だとかなんとか。
「まあ、チーズトッピングとかは美味しいですがね。入れます?」
気が向いたらな。おれはまあ、米でも炊いておくか。
そうだ、優等生。お前の部屋大分片付けちまったぞ。
「とりあえずは布団があれば良いですよ。あちらがまったく暇な訳でも無いですし。当分は寝に帰るだけですね」
お前、無理すんなよ。
「おや、珍しく優しいですね」
そら、こっちで倒れられたりでもしたら絶対おれにお鉢が回ってくるだろ。
「回復魔法使える人もいるはずなんですけどね」
おかゆ作れとか、おじやがいいとか。ぴいぴい言われるのが目に浮かぶわ。
「チーズ入れろとかバターがいいとか。海鮮がいいとかカニ入れろとか」
カニはあってもカニカマになるな。
「もどき食材も結構好きですよ、私」
精進料理とか食ってそうだよな、お前。
「山に籠もっていた時には食べていましたが、やっぱり人体に肉は必須だと思いました」
昔の山籠りは、上役の目を盗んで魚取ったり獣食ったりしてたらしいぞ。
「あの手の苦行は、苦行の無意味さと体裁を上手く整える方法を学ぶものだと途中で気づきましたね」
どんなんやったんだよ。
「滝をずっと見るんですよ。それを水の流れが止まるまで続けます」
ありそうな修行だな。
「超集中力で水の流れが止まって見えたと言うと殴られ。魔法を使って水を止めても殴られます」
禅宗の修行みたいだな。
「私は住職との殴り合いに勝った時に修行終了を告げられましたね」
禅宗の修行でそういうのあるぞ。
「最短記録者は、修行を告げられた瞬間に住職の頭を岩で殴った奴らしいですよ」
禅ってのは深いんだか浅いんだか分からんな。
「仏教はそう言うものらしいのですよ」
何事も暴力で解決するのが一番だ、とかか。
「大体そんなものです」
でかぶつんところみたいだな。
「どこも同じですね。さて、そろそろ料理を構ってあげますか」
カレールーはその棚の上にあるぞ。好きなの使え。
「ルゥは使いませんよ」
ん。香辛料から作るんか。間に合わんだろ。
「さて、どうするんでしょうか」
ん? 鍋の中身が黒いな。これはアレか。ハヤシライスか。
「正解です。帰還祝いに、本場仕込みのデミグラスソースをご賞味いただこうかと思いまして」
ハイライかぁ。そういや最近食ってねえな。
「ハイライって。そういう言い方あるんですか」
昔はそう言ってたんだよ。
「貴方の昔は、大分ローカルな事が多いので」
どこかで言ってりゃそれでいいんじゃねえの。
「ある程度スタンダード性を求めたい所なんですよ。私は」
昔は今ほど情報伝達早く無いからな。スタンダードなんてモンは無かったと思うぞ。
「のんびりしたものですね」
家庭料理も、家ごとの味が大分違ってな。
友達んちにお泊りに行くと、うちと味が違うんで驚いたもんだぞ。砂糖の入ったカレーとかあったぞ。
「それは単純に甘口では」
何だろうな。後味が甘かったんだよ。
「甘みは旨味ですかね」
多分そんなモンだろうな。それなりに美味かったからまたな。
「それでも俺は、ハヤシライスは認められない」
急にどうしたゲームチャンプ。
「ほら、なんか中途半端じゃない? ハヤシライスって」
そうか?
「確かにビーフシチューで良いのでは感はありますが」
「というか、見た目でカレー味を期待するじゃん。でも全然辛くないじゃん。おかしいじゃん」
じゃんじゃんうるせえよ。
「気持ちは分かります。もどき和菓子にも似た感覚があります」
見た目完全に焼き魚のやつとかあるよな。
「それは美味しいの?」
味自体は甘いんだがな。
「なんというか、脳が混乱しますね」
「ほら、ハヤシも一緒だよ」
「その認識をぶち殺すハヤシライスを作りたいと思います」
「ちょっとこの人、キャラ変わってない?」
キャラが変わるのは、よくある話だから気にするな。
「実際の話。ライスに乗せるのにビーフシチューそのままというのは確かに芸がありませんよね」
せめて味は濃い目にしないと話にならんわな。
「でも、カレーを超えるインパクトとなると、そうとう味が濃くなるよ?」
つっても、辛くしたらカレーと変わらんぞ。
「酸っぱいとか甘いのもどうだと思うよ」
ハヤシライスはトマトの酸味がアクセントだぞ。
「あれがご飯に合わないと思う、俺」
トマトカレーは美味いんだがな。
「なんだろう。ハヤシの酸味は主張しすぎなのが許せない」
お前あれだろ。酢豚のパイナップルが駄目な奴だろ。
「パイナップルは大丈夫」
お前の好みは微妙すぎて分からん。
「酢豚は全体的にパイナップルの味が溶け込んでるじゃん。あれなら別にそういう味だと思えるよ」
煮込みが足りんと味が行き渡らんがな。
「パイナップルがちゃんと煮えて無いのは論外でしょ。まずいカレーは駄目とか言ってるのと同じだよ」
「ということで、美味しいハヤシライスを作りますので」
「期待している」
ハードル上げられるだけ上げとるな。
「ハードルも下からくぐれるくらいまで上げれば無いと同じですからね」
「それはミエミエのフカしという奴でしょ」
優等生も丸くなったな。
「昔だったら、完璧以外は許さなかったね」
「そんなキャラ設定でやってた記憶はありませんよ。私はみんなのお母さんポジションを自認していましたよ」
「それは無いでしょ」
「そんなひどい」
「反応が早すぎる件」
「貴方に合わせているんですよ」
まあ、メシはよく作ってたがな。
「まあ正直。私はお母さんムープというのがよく分かりませんが」
「分からないでやってたのか」
「なので、多少の齟齬があった事は否めません」
メシ作って小言言ってりゃお母ちゃんだぞ。
「なるほど。つまり小言が足りなかったと」
「それも違うと思うなぁ」
つっても、お前も鍵っ子だったんだろ、ゲームチャンプ。
「俺には巨乳の妹がいるから。家族の絆とかはしっかりあったし」
巨乳は余計だ。
「私にも妹がいますが。まあ、巨乳ではありませんが」
「勝った」
「勝ち負けとかありますかね」
女は尻だぞ。
「スタイルは最高ですよ。私の妹」
「俺の妹のスタイルも最高だぞ。むっちむちで」
女の理想とする良いスタイルってのと、男が好きな体型は別なんだよなぁ。
「妹も、いつもダイエットしなきゃとか言ってるな。俺が許さないけど」
何やってんだよお前。
「夜中にピザ頼んで眼の前で食べてみせたりとかしてるけど」
「思春期の娘にそれは酷いですよ。私の妹だったら危険な事になっていますよ」
お前の妹はそうでなくても危険物だからな。
「最近は落ち着いてきましたよ」
「優等生に関しては、妹ラスボス説が出てたんだけど。そのへんどうなの?」
「例え世界の全てが敵に回ったとしても、妹に付きますよ私は」
そこまで思い詰めるのが怖いんだよお前ら。
「思い詰めるタイプなんですよ。妹は」
死にゃしねえんだから気楽に生きろって伝えておけよ。
「今度連れて来ます」
連れて来なくていいから伝えてやれ。
「今度連れて来ますから」
連れてくるなっつってんだよ。
「それでも今度連れて来ますよ」
くっそ。妙に押しが強くなったなこいつ。
「来るなら予め伝えておいてね」
「準備して待っていてくれますか」
「準備して留守にして待ってるよ」
お前とでかぶつは逃さんぞ。
「まあ、その日を楽しみにしておきましょう。さて、それではライスの準備を」
メシは炊けてるぞ。
「有り難い話ですが、実は用意出来ているのです」
冷凍メシ出して、って事はアレか。
「そう、焼き飯にします。そしてこの、シーフードの旨味を煮詰めたデミグラスソースを投入。それをチーズに絡めて焼きます」
手間と金のかかった事やるなぁ。
「それってパエリアじゃん。ハヤシライスじゃないじゃん」
「シーフードハヤシは定番で有りますし、焼きカレーがありならこれも有りでしょう」
「ぐぬぬ。シーフードハヤシでぐぐるとレシピが出おる……」
お前の判断基準はインターネットか。
「少なくとも、そういうのが正しいと思う人がいるって事だからね」
「さて、いただきましょう。美味しいですよ、多分」
味見しようぜ。
「愛情たっぷり入っているので美味しいはずですよ」
味見するのも愛情だぞ。
「一番に食べて欲しいんですよ」
「押し強くなったなぁ。まあ俺は諦めた」
「では、皿に分けますよ」
まあ、そんなに不味くはならんだろ。
「お。やっているね。ボクのオススメメニューの味はどうかな」
そこに現れたのはトコヨ荘の古株のテイさんだった。
テイさんの考案かよこれ。
「正しくは共同考案だねぇ。まあきっと美味しいと思うよ」
不味かったら残りは全部テイさんに食ってもらおう。
「同意」
「了承しました」
「お、戻ってきたか優等生。オレも混ぜろよ」
匂いを嗅ぎつけて、いつもの面々がやってくる。
ぐつぐつとチーズが煮える鍋を、好き勝手にお玉が掻き回る。
これだけ人数がいればまあ、不味くても余る事はねえかな。
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