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7.皇宮のしきたり
2 (8.8 改稿)
しおりを挟む麗華はそっと引き戸を開けて外に出た。
「わ、庭があるのね」
外に出ると、この建物の名前の通りに蘭の花々が美しく咲き誇り、松などの植木も見事であった。
「それにしても、この宮には本当に誰もいないのね……」
麗華はここに来てから、一度も侍医以外の人間を見かけない、気配を感じない事に疑問を感じていた。
庭が手入れされているところを見ると人の手が入っている事は確実なのだろうが、あまりにも人気がなかった。
時々訪れていた瑞麗たちもこの宮に来て麗華には贅沢だけど皇宮で一番ボロだと笑っている声が窓から聞こえていた。
麗華自身はここの雰囲気が気に入り素敵だと思ったが。
「でも、確かにここだけ人が寄り付かないし皇宮からも一番遠いみたいよね。サボりかしら」
宮の主人がおらず朽ちて忘れ去られたのだろうか?
「まぁ、でも今はそんな事より道を覚えなきゃ」
麗華は少し自分に気合いを入れて宮から足を踏み出した。
この場所は龍族全ての番様や龍妃様方がお住まいになる宮が集中している区画らしい。
どうして自分なんかがここにとは思うけれど、自分はまだ選定を受けていない微妙な立場であるので運ぶ場所に困ったのかもしれないと勝手に解釈する。
もちろん他国のように後宮があるわけではないが、そういう場所ではある。
番は基本龍族が離したがらないので龍族の宮で一緒に過ごす事が多いが、龍妃には自宅となる宮が一棟与えられている。
ちなみにとことこ歩いていくと、番達を楽しませる為に作られたと思われる東屋や庭園、舞台、舟遊び場などたくさんの素敵な場所があった。
そんな時、向こうの方から煌びやかな一団が麗華の方へ歩いてきた。
麗華は初めて見る華やかな空間に驚いて硬直してしまう。
「何をしておる。序列4位のお方の龍妃、金英(ジンイン)様が通るのじゃ。道を空けぬか」
硬直する麗華に年配の侍女が怒りを露わにした。
「あ!申し訳ございません!」
麗華は青くなって、急いで自分の身体を端に寄せた。
「無礼者が。これだから田舎者は」
侍女の声に麗華は震え上がる。
龍妃と言えばこの皇宮で番様同様大切にされている。無礼があれば物理的に首が飛ぶ。
麗華はそれでもここで声を上げるべきでは無いと感じ頭を下げたまま一団が通り過ぎるのをじっと待った。
……………………?
しかし、じっと待てども待てども一団が通り過ぎる気配は無い。
寧ろ自分のすぐそばにいるような気配がする。
「……?」
「お前は…もしや、先日の選定の儀で龍王陛下に無礼を働いた女ではなくて?」
「……ッ!」
「ああ!金英様確かにそうですよ。この一帯は顔見知りしかおらぬのできっとそうに違いありません」
麗華は更に縮こまった。
「ふぅん?よくもまあこの皇宮を平気な顔で歩けること。正に厚顔無恥とはこの事ねぇ」
「まことに」
「卑しい奴婢のようですから仕方のない事かと」
「ほほほ」
龍妃の言葉に麗華はバッと顔を上げた。
「そのような事は…!」
「無礼な。発言を許した覚えはないぞ」
「あっ!」
ガクッと近くにいた侍女に無理矢理地面に膝をつかされた。
「教養もない大きなネズミですこと。お前など選定が終われば直ぐに切り殺されるわ。龍王陛下に無礼など一族郎党皆殺しでもありえるもの」
「……っ…」
麗華は何も言い逃れ出来なかった。
いくら龍王が自分で動いたとしても、粗相で切られる事はこの世界じゃよくある事だ。
「規則に従い棒叩きに処しても良いのだけど、まだ選定前だからまずいかしら」
「金英様。今手を下すのは御身にも類が及ぶ可能性が」
「そうよね。口惜しいわ。こんなドブネズミなど早く皇宮から排除すべきですのに」
そう金英は嗤って麗華の前を通り過ぎて行く。
その際地面に手をつかされた麗華の足を踏んで行く事も忘れない。
「いっ…!」
「クスクス」
一団は笑いながら去って行った。
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