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14.龍王の番と新たな火種
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しおりを挟む「麗華」
「あ!お帰りなさいませ!」
炎輝が麗華のいる私室に入って来た。麗華は炎輝を待っている間、そわそわと落ち着かない様子であったのを知るのは、傍に控えた皇宮の侍女達だけであった。
彼女らは番である麗華をごく丁寧に扱っていたが、そんなに親しくもないので部屋の中では度々沈黙の時間帯が起きていた。
ただ、麗華に向けて負の感情を持っていないか出さない能力に長けているのかはわからないが、麗華の容姿を見ても特に何の反応も示さなかったので、麗華にとっては楽だった。
「待たせたか?」
「いいえ、大丈夫です。陛下はもう執務は終わったのですか?」
「ああ。今日はもう終いだ。食事にしよう」
「はい!」
炎輝はごく自然な振る舞いで、傍に寄って来た麗華を腕に抱き上げた。
右腕一本で麗華を支える炎輝に麗華は驚嘆した。
「きゃっ!!」
「大人しくしておれ。流石に暴れられては適わぬ」
炎輝は身長が高い。正確な高さは分からないが恐らく6尺以上ありそうな気がした。
そんな炎輝に抱き上げられると、身体が小さめの麗華にとってみれば、視界が急に高くなり巨人にでもなった気分になる。
しかも、この抱き上げ方は昔瑞麗が小さかった頃、父にされていたのを見た。炎輝から見たら私は幼児か何かに見えているのだろうか。
「お、下ろして下さいっ……」
「高い所は苦手か?」
そうじゃないけれど。
侍女達の視線が心無しか生暖かい気がした。それか微笑ましそうに見てくる。
麗華は気恥しさで顔を真っ赤にするが、炎輝は満足そうにしていた。
「怖くないならこのまま行こう。腹は空いているか?」
「あ、はい」
「そうか。何が好物か分からなかったので色々用意してある筈だ。楽しみにしていよ」
麗華は嬉しくなった。
麗華自身自分の好みなど、今まで選り好みしていられなかった環境だったので分からなかった。
その自分の好みを気にしてくれている人がいる、というのは麗華の心に暖かい何かが広がっていく感覚を齎した。
「さぁ、着いたぞ」
少しの距離ではあるが、食事が用意されているのであろう部屋に移動した。
「わぁ……!」
思わず声を上げてしまうくらいの光景が目の前に広がっていた。
麗華の目の前には大きな円卓の机の上に目にも鮮やかな料理の数々が湯気を立てて並べられていた。
「美味しそうだな。さっそく食べようか」
炎輝は麗華の輝いた表情を見て愛おしそうに声をかける。
そのまま侍従に促されるまま炎輝が大きな椅子に座ろうとするので麗華は慌てた。
「陛下!私も椅子に座ります」
「……何故?」
「……何故?」
炎輝は純粋に何故そうしなければいけない?という不満で、麗華は何故が何故という訳の分からないオウム返しになってしまった。
炎輝は麗華を膝の上に横抱きで乗せて満足そうに一つ頷く。
「このままで良いではないか。問題ない」
「でも!それでは陛下が食べ辛いのでは……」
「全く問題ない。それにな、麗華」
「?」
「龍族は番に給餌行動をするのが当たり前だ。愛情表現なのでな。私もいつかやってみたかったのだ」
「給餌……?行動……?」
麗華は言葉の意味をしっかり理解出来なかった。
どういう事だろう?
「ほら、麗華。口を開けなさい」
「え?っむぐっ」
炎輝の命令に疑問を浮かべながら聞き返したら、その空いた口の隙間から食べ物を箸で入れられたのだ。
給餌って親鳥が雛鳥にするあれだろうか。
頭が盛大に混乱しながらも、次々口の中に放り込まれてゆく食べ物をしっかり咀嚼する。
「ほら、これはどうだ?自国の料理だけではなく、南方で使われている香辛料を使った汁だ」
「!!……おいしいです」
「であろう。気に入ってもらえて良かった」
正直、全ての料理が見た事も食べた事もないような料理ばかりで麗華は驚きの連続であった。
炎輝も色んな料理を口に運んで来るが、まず初めに食べさせるのは一欠片のみ。その際麗華が微妙な反応になった料理たちはその料理の皿ごといつの間にか消えていた。
ぱっと顔が輝いた料理は二口目、三口目が先程より多めに運ばれ麗華はもはや雛鳥よろしく完全に給餌されていたのだった。
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