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一章
1
しおりを挟む近隣国の多くが絶対君主制の王国が多い中、ルベイン公国は3大公が治める大国であった。
遥か昔、この公国も絶対君主制であったが何代にも渡る暴君や愚王が誕生した為国が傾いた。
そこで当時の有力貴族であった現在の3大公家の3家が取り纏める公国として生まれ変わった。
体制としては持ち回りによる統治。3家同士はお互い監視し合いその代の統治が問題なく回るように尽力した。
そしてこれはそんな公国で起きた珍事のお話である。
ーーーーーーーーーーーーー
「レスティア・エルフェ。幼少から私と婚約を結んでいたが破棄させてもらう。そして、このユリア・オルセン嬢と婚約を結ぶ事とする」
突然そんな大きな声が広間に木霊した。
ここは王宮の迎賓室の大広間であり、本日は長年冷戦が続いていた隣国の王国と和睦が成立し国交が回復した事を祝う祝賀パーティーであった。
ルベイン公国の貴族だけでなく、隣国の王族や貴族なども招待されていた為、多くの人間がこの場に一同に会していた。
そして名指しされた当の令嬢といえば、目を見開いて声が聞こえた方向へ体の向きを変えた。
振り返った人物はこの祝賀ムードに相応しいよう気品溢れるドレスに身を包み表情を判別され辛いよう淑女の嗜みとして扇子で口元を隠していた。
彼女こそ、レスティア・エルフェであった。
「・・・・まぁ。それはまことにございますか?」
周りがシンっと静まり返ったような気がしたが男の方はその様子に気が付いていない。
そしてよく見ると男の隣には小柄な女が寄り添うようにぴったり張り付いている。
「そうだ。貴女は私の婚約者だというのにいつも公務だなんだと一向に私との時間を作ろうとしなかった。そしてそんな時に支えてくれたのがこのユリアなのだ。私はそんな彼女と添い遂げたい」
「レオン殿下…」
何やらピンク色の二人の世界が繰り広げられているが、周りの者達は冷ややかに見るか、唖然としている者しかいなかった。
「どう言う事だ、レオン。先程から黙って聞いておれば」
そこに、新たな声がかかった。
広間の上座の壇上に座るこの国の公王が騒ぎの中心となっている所を睥睨していた。
「父上。ご報告が遅れてしまい申し訳ございません!私はこの度長年政略で婚約していたレスティアと婚約破棄し、この私の傍にいるユリアを婚約者に据えたいと思います」
「…政略…?今政略と言ったか?」
「そうです!幼少の頃から私の意志を無視し結んでいた婚約なのです。しかも、それならと相手の資質を見ていれば、私を蔑ろに扱いこの者は公務と銘打って城に入り浸り贅沢三昧、城を我が物顔で闊歩し召使いどもを自分の小間使いのごとく扱い私の命令より優先させ傍若無人に振る舞う始末。そのような者は未来の公妃に相応しくありません。国を傾ける毒婦となりましょう!」
「…貴様本気で言っておるのか?」
心底失望したと言わんばかりに公王は声を震わせた。
隣で椅子に腰掛ける公妃に至っては今にも気絶しそうな様相である。
「さらに!この者は私の大切なユリアに対して皆の前で貶めたり暗殺者を差し向けたり許しがたい行為を散々犯しています」
「…ほぉ?」
公王の片眉がピクリと動く。
「それで?貴様は何を望んでおるのだ」
「私はこのユリアを伴侶とする事を父上にお許し頂きユリアを公妃とする事。また重罪を犯したレスティアをエルフェ大公継承権の剥奪と蟄居を進言したく思います」
その言葉を聞いた途端、公王は憤怒の形相を一瞬の内に浮かべ、周りは信じられないモノを見る目をしていた。
「公王陛下。発言をお許し頂いても?」
漸くレスティア本人が再び声を上げた。
「レスティア殿…申してみよ」
「ありがとうございます。まず公王陛下が先ほど聞き返したようにこれは政略の婚約です。家と家の約束事ですが、こと大公家の婚姻となればその重要度は桁違いとなります。勢力の拡大であったり、軋轢を避ける為であったり様々でしょうが、言い難いですが殿下は此度の婚約の意味を正しく理解しておられない」
「な!何を言うか!この期に及んでこの私を愚弄するのか!」
レスティアの言葉を聞き声を荒げるレオンに涼しい視線をやるレスティア。
「まず、城で出仕する者らは単なる雇いの召使いではありません。皆階級は男爵位以上の領地持ちの貴族ですし、公務です。また、私は城に入り浸っているのでは無く城に居を構えています。贅沢三昧が何を指すのかは私には分かりかねますが、命令系統は公王陛下の指示の元行っております」
その言葉に周りの者らはうんうんと頷く。
「そして仮に婚約破棄が成立したとしましょう。その場合、成立してユリア嬢と婚姻なさったとしてもユリア嬢は公妃にはなり得ませんわ」
「く!貴様言わせておけば!貴様を公妃に据えユリアを愛人の地位にでも貶めようと言うつもりか!どこまで権力欲の強い女なのだ!」
「いいえ。そもそも前提が間違っているのです。ユリア嬢は公妃陛下では無く大公妃殿下となるのですわ」
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