瞳孔

Hai-ne(灰猫)

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受付

 セミナーの会場は代々木にあった。

それぞれに別の案件で外出していた僕と沢田君。

会場で直接、落ち合うことになっていた。

僕は代々木駅の立ち食い蕎麦で昼食を済ませ、
改札を出ると会場へ向かった。

 「お、早いね。お待たせ!」

待ち合わせのエントランスに沢田君の姿が見えた。

「いえ、スミマセン!忙しいのに!」

「いえいえ、大丈夫ですよ。今回のセミナー?
 あんまり仕事とか思っていないですし(笑)」

「えっ!?思ってくださいよ(笑)」

 受付には3人の女性スタッフがいた。

どこか、お揃いのような白いスーツ。

「こちらにお名前をお願いします」

 僕と沢田君は用意されていた参加者名簿に
それぞれ署名し、参加費を支払い、領収書を受け取った。

 会場のドアに向かおうとした瞬間に受付の
女性の一人と目が合った。

 40代くらいのスレンダーな女性。

僕の顔を見ると、驚いたように目を開いた。

まるで、街で偶然に推しの俳優に出くわしたような

表情と瞳の動き。

なんだか、久しぶりに見たような気がした。

 以前、村上春樹さんが小説の中のセリフの中で

(関係を持つことになる女性は、出逢った瞬間に分かった)

みたいなことを書いていた。

実は、僕もその感覚を知っていた。

20代の頃はそれがなぜなのか分からなかった。

だけど、30代の頃にふと気が付いた。

それは相手の瞳孔の動きにあると。

振り返れば、初対面で僕に好意を抱いてくれた女性には

必ず、同じような瞳孔の変化があった。

そして、大抵、その方々とはSEXまでの関係に至った。

 だけど、失敗? 勘違いのケースもあった(笑)

そう、そんな瞳孔の動きを女性が見せた理由が、単に僕が

忘れているだけで、実は元々知り合いで(笑)

その女性は久しぶりの再会に一瞬、驚いただけ。

そんなパターンもあった(笑)

(まぁ、僕ももう、オジサンですし。今日はそっちかな?)

淡い夢などは見ずに、一応、仕事の場でもあったので

後々、失礼などがないようにそちらの方向で記憶を辿った。。

(どこかでお会いしたかのかなぁ?)

そんな事を考えていると、沢田君が声を上げた。

「あっ!どうも!粟山先生!本日はおめでとうございます!!」

「あっ!!沢田君!!来てくれたの?ありがとう!!」

 僕が記憶の中で探していた女性と沢田君が話をしていた。

(えっ?この方が粟山さん!?受付の方じゃないのっ!?)

僕はキョロキョロと沢田君と彼女の顔を交互に見回した。

僕の戸惑いを察したように、彼女が口を開いた。

「あの、初めまして……粟山です」

「あ、初めまして灰猫と申します。沢田君がいつも……」

軽い会釈の後で再び感じた、広がった彼女の瞳孔。

(そうか、『初めまして』だったんだ……)

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