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第一章 奈国連合( 建武中元元年・西暦五六年 )
別れ
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その後も、熊叡は囲都と奈国を行き来しながら、奈国でも優れた武具や武器の生産を始めたいと徐学に訴え続けた。そのためには、なんとしても呂強との交易を実現する必要がある。
イタクエアシは武闘派の族長だったが、戦略にも優れた策士だった。そのおかげで、彼は奈国連合との戦いは不利だと分かると、決して攻めてこようとはしなかった。
今、徐学が気がかりなのは、九州の南のヒダカ一族で、奈国連合と接しているのは狗南と八利の二国である。
狗南国と接しているのは耶馬国。高い山々が連なり、木々が生い茂る。こんなところで兵士の移動は困難だ。守りやすく、攻めにくい天然の要塞といってよい。そのため、両国は長い間、膠着状態が続いている。
八利国と接しているのが蘇奈国。この両国は石炭や鉄の原料が豊富で、米の生産量も多い。そのため、八利国は領地を広げようと、ずっと紛争が続いている。徐一族の直轄地でありながら、徐一族の誰もが、ここの王になりたがらない。今は、奈国から派遣された将軍が治める、異常事態となっている。
そんな理由もあって、徐学は熊叡を蘇奈国の王にしたいと考えているのである。
熊叡は決心した。徐学の考えと呂強との交易を実現するためには、自分が蘇奈国に行くのが最善の策だと分かった。
熊叡は、まず熙媛に会い気持ちを確かめることにした。
「熙媛、私と一緒に蘇奈国へ行ってくれるか」
熙媛の気持ちはとっくに決まっていた。熊叡以外の誰とも、結婚する気などなかった。小さく頷くと、黙って熊叡の両手にそっと自分の手を置いた。
熊叡は熙媛を引き寄せ、抱きしめて「決して、一人にはさせない」と耳元で囁いた。
もう迷いはない。熊叡はすぐに徐学の元に参上すると、蘇奈国の王を引き受けたいと申し出た。 徐学はそれを聞いて喜んだ。さっそく、奈国連合の王に召集をかけた。
最新の武具と武器を手に入れ、ほっとしていた十三国の王たちは、何事かと落ち着かない様子で集まってきた。
「熊叡を熙媛の婿として迎える」
徐学の宣言を聞いて、徐一族の王たちは騒めいた。徐一族以外の王たちは、熊叡の働きぶりを知っているので、歓迎の意を表した。
「徐家でない男を大王にするのか。それは許さん」祖奈国の王が叫んだ。
祖奈国は代々、徐福の直系が支配する国で、この国からは大王は出さないが、大王決定には強い権限をもつ。
「婚姻が成立したら、熊叡を蘇奈国の王として赴任させ、大王は私の代で終わりとする。次の大王は蘇奈国以外から選んでくれ」
この一言を受けて、祖奈国の王は「それなら何の問題もなかろう」と、あっさり徐学の提案に賛成の意を示した。こうなると、他の徐一族の王たちも反対する理由がない。熊叡と熙媛の婚姻は満場一致で認められた。
徐学は、前もって祖奈国の王に相談を持ち掛けていた。祖奈国の王も、奈国連合が分裂するような事態は避けなければならない。そこで、徐学の申し出に乗ったのである。
次の日には、国王たちの前で熊叡と熙媛の婚姻が執り行われた。慌ただしい式だったが、熊叡と熙媛にとっては、そんなことは問題ではなかった。
婚姻の席で、熊叡は徐学に二つのことを願い出た。一つは名を徐熊と改めることである。どうしても熊の名を残したかったのだ。もう一つは、アウトヨを蘇奈国の将軍として連れて行きたいということだった。
徐学は二つとも認めた。囲都から将軍と副将軍が同時にいなくなることは、奈国を守る上で大きな損失だが、最新の武具と武器を手に入れた今の体制なら、問題はないと考えたのである。
(熊叡改め)徐熊の勧めで、将軍にチョウケンを昇格させ、副将軍には蘇奈国の将軍を就かせることにした。
蘇奈国への出発も慌ただしかった。徐熊と熙媛、そして腹心の部下アウトヨの3人だけの旅立ちだった。最新の武具や武器はおろか、これまで訓練した兵士は一人もついていない。徐熊は一から蘇奈国を作り上げなければならない。
蘇奈国に着くと、徐熊は最前線の様子を目の当たりにした。兵士も住民も、緊張感で表情が暗い。
「アウトヨ、この状況をどう思う」
「兵士も住民も全く余裕がありません。雒陽のように、除夕や正月が楽しく祝える国にしなくてはなりません」
「そのとおりだ」
徐熊は、次の日からさっそく蘇奈国の改造に取り掛かった。
まず、国の境に強固な柵を巡らした。柵の高さをこれまでのニ倍にしたのだ。次に、館の周りを一丈七尺の土塀で取り囲んだ。そして、いざという時は住民が逃げ込めるようにした。
兵士たちは戦いに慣れており、その統率のある動きはアウトヨも感心した。武具と武器については、石炭と鉄の原料が取れるため、最新の武具と武器を徐学から借り受け、鍛冶師に見よう見まねで作らせることにした。
呂強との交易は、まだまだ実現しそうにないが、大型船を泊めることができるように、港を整備した。そして、手始めに奈国連合内での交易をすすめた。順調にいけば、南のヒダカ一族の国々との交易に広げたいと考えていた。
翌年、徐宗が生まれた。熙媛は館内に白梅を植え、奈国の館のように白梅の香りがいっぱいの中で、徐宗を育てようと考えていた。
すべてが順調に進み、徐宗が十九歳になった春、久々に徐学から呼び出しがあった。徐熊は急いで奈国の館に参上した。
徐熊が館に入ると、謁見の間での挨拶もなく、徐学は部屋から出てくるといきなり「これから、ご先祖の墓にお参りする。ついてきなさい」と言って、徐熊を厩に連れて行った。
徐一族の王の墓は志賀島にあった。この島は二百八十三年前、漢との戦いに敗れた徐一族の祖先が、最初に上陸した場所である。その後、何代にもわたって王はここに埋葬されてきた。
今日、徐学は徐熊だけを伴ってこの島に渡った。外海を見下ろす高台に大きな石が置かれている。石に徐という名は彫られていない。漢を欺くため、王の墓といえど秦の痕跡を残さないようにしているのだ。だから、この墓の存在を知っているのも王だけである。
徐学の手に、二つのものが握られていた。一つは金印でもう一つは不老不死の秘薬が入った袋である。
「徐熊、儂も六十になった。いよいよ大王の位を譲る時が来た」
徐熊の目には、まだまだ元気な徐学だが、自分の寿命というものは本人には分かるもののようだ。
「儂はこの二つを、ご先祖の墓に葬ろうと思う。いつまでも、奈国を未開の国だと欺き通すことはできないだろう。偽りがばれた時、この秘薬は奈国を滅ぼす元凶になりかねない」
そう言うと、徐学は大きな石の下に金印と秘薬を投げ入れた。
周りを石で取り囲むと、もう何も見えない。すべてを隠し終えると、徐学は両手を合わせ「ご先祖様、どうか奈国をお守りください」と、深々と頭を下げた。徐熊も徐学にならって頭を下げた。
その年の十二月、徐学は崩御した。翌年、姐奈国の徐英が七代目大王となる。
徐学が亡くなって七年後、「我と子の 願い届かず 我が君の 年も心も 離れゆくのみ」と書置きして、熙媛が緑浜で入水した。
自分と子の徐宗はどんどん年を取っていくのに、徐熊の容姿は全く変わらない。徐宗が二十六歳になったとき、息子と徐熊の区別がつかなくなり、熙媛の心が壊れてしまった。
「熙媛、一人にさせないと約束したのに、年の差をどうすることもできなかった。許しておくれ。ただ、私は年が変わらないのと同じように、お前への心も少しも変わっていないのだよ」
徐熊は王の位を徐宗に譲ると、隠居し決して表舞台に出ることはなかった。
イタクエアシは武闘派の族長だったが、戦略にも優れた策士だった。そのおかげで、彼は奈国連合との戦いは不利だと分かると、決して攻めてこようとはしなかった。
今、徐学が気がかりなのは、九州の南のヒダカ一族で、奈国連合と接しているのは狗南と八利の二国である。
狗南国と接しているのは耶馬国。高い山々が連なり、木々が生い茂る。こんなところで兵士の移動は困難だ。守りやすく、攻めにくい天然の要塞といってよい。そのため、両国は長い間、膠着状態が続いている。
八利国と接しているのが蘇奈国。この両国は石炭や鉄の原料が豊富で、米の生産量も多い。そのため、八利国は領地を広げようと、ずっと紛争が続いている。徐一族の直轄地でありながら、徐一族の誰もが、ここの王になりたがらない。今は、奈国から派遣された将軍が治める、異常事態となっている。
そんな理由もあって、徐学は熊叡を蘇奈国の王にしたいと考えているのである。
熊叡は決心した。徐学の考えと呂強との交易を実現するためには、自分が蘇奈国に行くのが最善の策だと分かった。
熊叡は、まず熙媛に会い気持ちを確かめることにした。
「熙媛、私と一緒に蘇奈国へ行ってくれるか」
熙媛の気持ちはとっくに決まっていた。熊叡以外の誰とも、結婚する気などなかった。小さく頷くと、黙って熊叡の両手にそっと自分の手を置いた。
熊叡は熙媛を引き寄せ、抱きしめて「決して、一人にはさせない」と耳元で囁いた。
もう迷いはない。熊叡はすぐに徐学の元に参上すると、蘇奈国の王を引き受けたいと申し出た。 徐学はそれを聞いて喜んだ。さっそく、奈国連合の王に召集をかけた。
最新の武具と武器を手に入れ、ほっとしていた十三国の王たちは、何事かと落ち着かない様子で集まってきた。
「熊叡を熙媛の婿として迎える」
徐学の宣言を聞いて、徐一族の王たちは騒めいた。徐一族以外の王たちは、熊叡の働きぶりを知っているので、歓迎の意を表した。
「徐家でない男を大王にするのか。それは許さん」祖奈国の王が叫んだ。
祖奈国は代々、徐福の直系が支配する国で、この国からは大王は出さないが、大王決定には強い権限をもつ。
「婚姻が成立したら、熊叡を蘇奈国の王として赴任させ、大王は私の代で終わりとする。次の大王は蘇奈国以外から選んでくれ」
この一言を受けて、祖奈国の王は「それなら何の問題もなかろう」と、あっさり徐学の提案に賛成の意を示した。こうなると、他の徐一族の王たちも反対する理由がない。熊叡と熙媛の婚姻は満場一致で認められた。
徐学は、前もって祖奈国の王に相談を持ち掛けていた。祖奈国の王も、奈国連合が分裂するような事態は避けなければならない。そこで、徐学の申し出に乗ったのである。
次の日には、国王たちの前で熊叡と熙媛の婚姻が執り行われた。慌ただしい式だったが、熊叡と熙媛にとっては、そんなことは問題ではなかった。
婚姻の席で、熊叡は徐学に二つのことを願い出た。一つは名を徐熊と改めることである。どうしても熊の名を残したかったのだ。もう一つは、アウトヨを蘇奈国の将軍として連れて行きたいということだった。
徐学は二つとも認めた。囲都から将軍と副将軍が同時にいなくなることは、奈国を守る上で大きな損失だが、最新の武具と武器を手に入れた今の体制なら、問題はないと考えたのである。
(熊叡改め)徐熊の勧めで、将軍にチョウケンを昇格させ、副将軍には蘇奈国の将軍を就かせることにした。
蘇奈国への出発も慌ただしかった。徐熊と熙媛、そして腹心の部下アウトヨの3人だけの旅立ちだった。最新の武具や武器はおろか、これまで訓練した兵士は一人もついていない。徐熊は一から蘇奈国を作り上げなければならない。
蘇奈国に着くと、徐熊は最前線の様子を目の当たりにした。兵士も住民も、緊張感で表情が暗い。
「アウトヨ、この状況をどう思う」
「兵士も住民も全く余裕がありません。雒陽のように、除夕や正月が楽しく祝える国にしなくてはなりません」
「そのとおりだ」
徐熊は、次の日からさっそく蘇奈国の改造に取り掛かった。
まず、国の境に強固な柵を巡らした。柵の高さをこれまでのニ倍にしたのだ。次に、館の周りを一丈七尺の土塀で取り囲んだ。そして、いざという時は住民が逃げ込めるようにした。
兵士たちは戦いに慣れており、その統率のある動きはアウトヨも感心した。武具と武器については、石炭と鉄の原料が取れるため、最新の武具と武器を徐学から借り受け、鍛冶師に見よう見まねで作らせることにした。
呂強との交易は、まだまだ実現しそうにないが、大型船を泊めることができるように、港を整備した。そして、手始めに奈国連合内での交易をすすめた。順調にいけば、南のヒダカ一族の国々との交易に広げたいと考えていた。
翌年、徐宗が生まれた。熙媛は館内に白梅を植え、奈国の館のように白梅の香りがいっぱいの中で、徐宗を育てようと考えていた。
すべてが順調に進み、徐宗が十九歳になった春、久々に徐学から呼び出しがあった。徐熊は急いで奈国の館に参上した。
徐熊が館に入ると、謁見の間での挨拶もなく、徐学は部屋から出てくるといきなり「これから、ご先祖の墓にお参りする。ついてきなさい」と言って、徐熊を厩に連れて行った。
徐一族の王の墓は志賀島にあった。この島は二百八十三年前、漢との戦いに敗れた徐一族の祖先が、最初に上陸した場所である。その後、何代にもわたって王はここに埋葬されてきた。
今日、徐学は徐熊だけを伴ってこの島に渡った。外海を見下ろす高台に大きな石が置かれている。石に徐という名は彫られていない。漢を欺くため、王の墓といえど秦の痕跡を残さないようにしているのだ。だから、この墓の存在を知っているのも王だけである。
徐学の手に、二つのものが握られていた。一つは金印でもう一つは不老不死の秘薬が入った袋である。
「徐熊、儂も六十になった。いよいよ大王の位を譲る時が来た」
徐熊の目には、まだまだ元気な徐学だが、自分の寿命というものは本人には分かるもののようだ。
「儂はこの二つを、ご先祖の墓に葬ろうと思う。いつまでも、奈国を未開の国だと欺き通すことはできないだろう。偽りがばれた時、この秘薬は奈国を滅ぼす元凶になりかねない」
そう言うと、徐学は大きな石の下に金印と秘薬を投げ入れた。
周りを石で取り囲むと、もう何も見えない。すべてを隠し終えると、徐学は両手を合わせ「ご先祖様、どうか奈国をお守りください」と、深々と頭を下げた。徐熊も徐学にならって頭を下げた。
その年の十二月、徐学は崩御した。翌年、姐奈国の徐英が七代目大王となる。
徐学が亡くなって七年後、「我と子の 願い届かず 我が君の 年も心も 離れゆくのみ」と書置きして、熙媛が緑浜で入水した。
自分と子の徐宗はどんどん年を取っていくのに、徐熊の容姿は全く変わらない。徐宗が二十六歳になったとき、息子と徐熊の区別がつかなくなり、熙媛の心が壊れてしまった。
「熙媛、一人にさせないと約束したのに、年の差をどうすることもできなかった。許しておくれ。ただ、私は年が変わらないのと同じように、お前への心も少しも変わっていないのだよ」
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