君に嫌われるまで死ねない

月址さも

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第一章

8.頭痛

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 そうこうしているうちに、問診票を片手に魔女はまた僕の前に座り直した。

「で、何の薬が欲しいの?」

 そう聞かれてふと、頭の中に浮かんだのはあの子のこと。しかしこれは、まだ相談できないので慎重に考えを巡らせる。

(何か、欲しい薬......あっ)

 そこまで思って僕は魔女にこう告げた。

「最近、頭痛が酷いんです」

「頭痛?」

 そう言うと彼女は意外だったのか、拍子抜けな顔をする。

 最近で思いつくとしたらこれだろう。
 三ヶ月くらい前からずっと僕を悩ませていた頭痛。しかしそれはただの偏頭痛ではなかった。

「不思議な風景が見える?」

「はい、そうなんです」

 彼女が反芻はんすうした言葉に、僕は相づちをうった。
 実はこの頭痛は痛みと共に見たことがない場所や人が脳裏に映るのだ。
 最初は脳みそに傷でも入ったのかと思って侍医に見てもらったが、異常は見当たらないと言われた。

「なるほど、医者もお手上げってやつね」

「あの、僕は何かの病気なんでしょうか?」

「ごめんなさい。私たちも専門書は読んでいるんだけど医者がだめなら病名は分からないわ」

「そう、ですか......」

 あの人智を超える魔女でも、分からないことがあるのか。
少し落胆しながらも、ふと向かいの窓を見るとそこには器に入った水を飲んでいるフユがいた。

(あ。あいつ、いつの間に)

「とりあえず再生のポーションで様子を見てみましょう。マリア、十一番の棚を」

 するとそう言った途端、なにやら慌てた様子のマリアがこちらに来た。
 そのまま耳打ちでシルビアに何かを伝えると、彼女は少し残念そうな顔になる。

「あらそうだったわね。ごめんなさい、再生のポーションは品切れだったみたい。住所と名前を教えてくれれば後日配達するわ」

 ここに書いてね、と魔女は紙とガラスペンを僕に手渡した。
 なるほど、またここに取りに来なくても配達してくれるのか。よし、じゃあ名前を――

「分かりま――......」

 分かりましたと言おうとした瞬間、何かに気づいて固まる僕。

「どうかした?」

「い、いえ。今書きます」

 言われた通り、僕は紙に名前と住所を書く。
 そうして所々つまずきながらもなんとか、全て記入することが出来た。

「ふぅん、ジェームズって言うのね。貴方」

 紙を見ながらシルビアはそう言った。
 相談の末、代金は受け取った時に支払うことにし、依頼はそのまま終了した。

「また、来てね。ジェームズくん」

「お待ちしております、ジェームズ様」

 こうしてシルビアとマリアに手を振られながら、僕は終始引きつった顔のまま、魔工製薬所を後にした。
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