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第一章
16.賭け
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急いで店を出るが外にリックと思わしき人影は見当たらない。
でもまだそんな遠くには行っていないはず。
私は路地の更に奥に向かって走るとそこの曲がり角にさっきの後ろ姿を見つける。
(いた!)
「ね、ねえ貴方!」
思わずそう声をかけると彼はすぐに立ち止まった。
そして私の姿を確認すると少し驚いたのか、茶色い眉毛がピクリと動く。
「? なんだ、まだ何か用かお嬢さん」
「あ、えーっと......」
やばい、慌てて追いかけてきたからなんて言うべきか考えてなかったわ。
でも前世のことなんて口が裂けても言えないし、なんて言えば......。
しかし声に出す言葉を考えているうちに口ごもる私を不審に思ったのか、リックは段々表情が曇っていく。
「? なんださっきの金額に不満があるのか? ああ、それとも――」
(え?)
その瞬間、ゆらりと二人の影が重なった。
「俺と遊びたいって言うんなら喜んで付き合うぜ、カワイイお嬢さん」
そう言って唇が触れそうな距離まで近づく彼に私は心臓がヒュッと縮む。
リックの右手はまるで逃がさないとでも言うように壁について私の横を通せんぼしていた。
(ううっ、なんなのこいつ......!? でも、ここで怯んだら絶対になめられるわ......)
私はぎゅっと手のひらに爪を立てて気合いで目の前の男を睨み返す。
そしてお互いに見つめあったまま、彼にこう言った。
「お......お金になることがあるの」
「! へえ、じゃあアンタ俺が誰なのか知ってたんだな」
そう言った途端、急に変化した彼の二人称に緊張が走る。
いくらあの時と違うとはいえ、目の前にいるのは私と私の愛する人を殺した殺人鬼。
正直言って怖いと思わない方が無理な話だった。
「あ、貴方はお金になることならなんでもするって聞いたわ。だから協力して欲しいの」
「......ふぅん、アンタにそんな話があるとは思えねーけどな」
どう見たって俺と同業者には見えねえし、とリックは鼻で笑った。
「――フェープの”隔離施設”」
「っ!」
そう口にした瞬間、リックはすぐに壁から手を離した。
そのままごくりと唾を飲む彼の目は明らかに先ほどとは変わっている。
「貴方にお願いしたいのはあの施設で守られているものを盗むことよ。どう? やる? 時間がないのよ、今決めて」
「......報酬は?」
「そうね、ひづめと羽は譲るわ。悪いけどあの子は殺すつもりなの」
殺すと口に出した瞬間、やっぱりその言葉が怖いと感じる。それでも一応、覚悟は決まっているつもりだ。
「殺す? あの魔法動物を......? ふぅん、まあ良いぜ。ちょっと面白そうだしな」
リックは一瞬訝しげな顔をしたが、どうやらこの話に興味が出たらしい。
よし、それなら気が変わらないうちに準備をしなければ。
「じゃあ、貴方は先にフェープ行きの船に乗って。私はちょっと用事を済ませてから行くから」
そう言うと、私は路地を全速力で逆走した。
「えっ? ちょっ、おいっ!」
そうして船で待っていたリックが目にしたのは先ほどまでのふわふわのピンク色に包まれた箱入り娘......ではなく、大きいトランクケースを抱えためちゃくちゃ質素な服の女性だった。
でもまだそんな遠くには行っていないはず。
私は路地の更に奥に向かって走るとそこの曲がり角にさっきの後ろ姿を見つける。
(いた!)
「ね、ねえ貴方!」
思わずそう声をかけると彼はすぐに立ち止まった。
そして私の姿を確認すると少し驚いたのか、茶色い眉毛がピクリと動く。
「? なんだ、まだ何か用かお嬢さん」
「あ、えーっと......」
やばい、慌てて追いかけてきたからなんて言うべきか考えてなかったわ。
でも前世のことなんて口が裂けても言えないし、なんて言えば......。
しかし声に出す言葉を考えているうちに口ごもる私を不審に思ったのか、リックは段々表情が曇っていく。
「? なんださっきの金額に不満があるのか? ああ、それとも――」
(え?)
その瞬間、ゆらりと二人の影が重なった。
「俺と遊びたいって言うんなら喜んで付き合うぜ、カワイイお嬢さん」
そう言って唇が触れそうな距離まで近づく彼に私は心臓がヒュッと縮む。
リックの右手はまるで逃がさないとでも言うように壁について私の横を通せんぼしていた。
(ううっ、なんなのこいつ......!? でも、ここで怯んだら絶対になめられるわ......)
私はぎゅっと手のひらに爪を立てて気合いで目の前の男を睨み返す。
そしてお互いに見つめあったまま、彼にこう言った。
「お......お金になることがあるの」
「! へえ、じゃあアンタ俺が誰なのか知ってたんだな」
そう言った途端、急に変化した彼の二人称に緊張が走る。
いくらあの時と違うとはいえ、目の前にいるのは私と私の愛する人を殺した殺人鬼。
正直言って怖いと思わない方が無理な話だった。
「あ、貴方はお金になることならなんでもするって聞いたわ。だから協力して欲しいの」
「......ふぅん、アンタにそんな話があるとは思えねーけどな」
どう見たって俺と同業者には見えねえし、とリックは鼻で笑った。
「――フェープの”隔離施設”」
「っ!」
そう口にした瞬間、リックはすぐに壁から手を離した。
そのままごくりと唾を飲む彼の目は明らかに先ほどとは変わっている。
「貴方にお願いしたいのはあの施設で守られているものを盗むことよ。どう? やる? 時間がないのよ、今決めて」
「......報酬は?」
「そうね、ひづめと羽は譲るわ。悪いけどあの子は殺すつもりなの」
殺すと口に出した瞬間、やっぱりその言葉が怖いと感じる。それでも一応、覚悟は決まっているつもりだ。
「殺す? あの魔法動物を......? ふぅん、まあ良いぜ。ちょっと面白そうだしな」
リックは一瞬訝しげな顔をしたが、どうやらこの話に興味が出たらしい。
よし、それなら気が変わらないうちに準備をしなければ。
「じゃあ、貴方は先にフェープ行きの船に乗って。私はちょっと用事を済ませてから行くから」
そう言うと、私は路地を全速力で逆走した。
「えっ? ちょっ、おいっ!」
そうして船で待っていたリックが目にしたのは先ほどまでのふわふわのピンク色に包まれた箱入り娘......ではなく、大きいトランクケースを抱えためちゃくちゃ質素な服の女性だった。
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