君に嫌われるまで死ねない

月址さも

文字の大きさ
20 / 21
第一章

17.魔法動物

しおりを挟む
「はあ、遅くなってごめんなさい」

「お、おう」

 急いで飛び乗った船の上でそう謝ると、彼はなぜかかなり驚いた顔をしていた。

(あれ、もしかして私の服、なんか変......?)

 あれから大通りで新しい服を買い、飲み水を買った私。
 母の呪縛から逃れた今なら一応好きな服を選べるのだが、未だに他人から見て、おかしいかどうかは気になってしまう。

(ど、どうしよう。もし変だって言われたら......)

 内心そんな風にドキドキしていると、リックが突然咳払いをした。

「っ、ごほんっ」

「っ!」

 しかし私の不安とは裏腹にそのまま彼は「じゃ、行こう」と言わんばかりに船内に親指を向けてそれ以上何も言わなかった。

 船首に移動した私たちの目に入ったのはブルーオパールのような透き通った海。
 こんな状況じゃなければビーチで海水浴でも......なんて考えてしまう。

 フェープは山岳地帯と呼ばれる所にあり、ここシンピゴールからは北に約三時間かかる。
 つまり、これから少し長い船の旅が始まるということ。

「で? どういう作戦なんだ?」

 そう言いながらドカッと船首の長椅子に座るリック。
 私は周囲に人があまりいないことを確認し、簡単に説明した。

 まずこの作戦の目標は”とある生き物”を殺すこと。
 そのためにはその生き物が収容されている施設に侵入する必要がある。

「施設に入るのは私だけ。貴方には逃走用の船と死体を入れる大きなかごを用意して欲しいの」

「......はあ、それはいいけど。アンタはどうやって施設に入るんだ?」

 まさか関係者なのか?と続ける彼に首を横に振る。
 関係者ではないが前世で出入りした記憶があるから、なんて口が裂けても言えないだろう。

「侵入方法に関しては企業秘密よ。作戦決行は今日の日づけが変わるころ、私が標的を捕まえて外に出たら馬車まで一緒に運んで欲しいの」

 そう伝えるとリックは少し黙った末に、了解と短く返答した。

(まあ、こんな説明で納得はできないわよね......)

 ふと訪れる沈黙に少しだけ気まずく思う。
 しかし彼はこの計画のために一時的に協力しているだけの敵。なんでも話すような仲ではないのだからこれでいい。

「......なあ、そういやアンタはなんで魔法動物のことを知ってるんだ?」

「っ!」

 ふと、思わぬ質問されて冷や汗が出る。

 魔法動物。
 その歴史は五十年と浅く、ミデリーではその存在はあまり浸透していない。

 今まで見つかった魔法動物は私たちが目的とする生き物を含めて三体。
 彼らは他の動物にはない不思議な力を持ち、ほとんどが厄災の神だと恐れられている存在だ。

 一体目は姿が透明で、そのまま行方不明。
 二体目は川で死んでいるのを発見された。

 そして三体目が我々が目的としている生き物。その名をソリドドラゴンという。
 全身紫がかった黒色で、鳥のような羽のある翼と硬い外皮を持つ外見からそう名前がついた魔法動物だ。

 発見は一ヶ月前、場所は山岳地帯。
 変わった鳴き声に気づいたフェープの住人がその姿を見つけた。要請を受けた騎士団が捕獲に成功し、今は古い廃墟を改築した隔離施設に収容されている。
 そしてドラゴンのある厄介な性質のため、国は扱いに困っている状態だった。

(これも前世の記憶から分かるけど、もちろん話すわけにはいかないわよね......)

「それも企業秘密ね、別に貴方に教える義理はないわ」

 内心動揺しながらもそう返すとリックはつれないねえー、と大きなため息を吐いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。 イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。 8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。 ※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

私たちの離婚幸福論

桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

2度目の結婚は貴方と

朧霧
恋愛
 前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか? 魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。 重複投稿作品です。(小説家になろう)

ヤンデレ王子に鉄槌を

ましろ
恋愛
私がサフィア王子と婚約したのは7歳のとき。彼は13歳だった。 ……あれ、変態? そう、ただいま走馬灯がかけ巡っておりました。だって人生最大のピンチだったから。 「愛しいアリアネル。君が他の男を見つめるなんて許せない」 そう。殿下がヤンデレ……いえ、病んでる発言をして部屋に鍵を掛け、私をベッドに押し倒したから! 「君は僕だけのものだ」 いやいやいやいや。私は私のものですよ! 何とか救いを求めて脳内がフル稼働したらどうやら現世だけでは足りずに前世まで漁くってしまったみたいです。 逃げられるか、私っ! ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

処理中です...