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学園生活にも少し慣れてきた頃、私には悩み事があった。
「なんだか最近ずっと視線を感じるんだよね…」
そう、朝学園に来てから授業以外の時間に視線を感じるようになったのだ。
気がついたのはつい最近なのだがその視線はいつも一定の距離を保っている。
不気味だ。
だけどその視線からは敵意は感じられないのでどうしたらいいかと悩んでいるのだ。
「…そうね」
「そうね…ってエリザ知ってたの?」
「あれだけ露骨にオルガを見ていればねぇ…。それに入学してからずっと見られていることに気づかなかったオルガが心配になるわ」
「えぇっ!?ぜ、全然気づかなかった…」
「まぁ色々大変な時だったから仕方ないんじゃないかしら?」
「そうかなぁ?でも知ってたのなら教えてほしかったよー。ここしばらくは気になって落ち着かなかったんだから」
「それもそうね。今度から伝えるようにするわ」
「それで…この視線の人はほっといていいの?」
エリザが気づいていながらもそのまま放置していたのならば危険ではないのだろう。
でも気になる。
「今のところ問題ないわ。お兄様にも報告してはあるけど特に何も言われてないもの」
「ルシウスさんが何も言わないなら大丈夫かな?でもエリザはその人のこと知ってるの?」
「ええ、知ってるわ。カイラント・リスター、リスター伯爵家の嫡男よ」
「そんな人がどうして私を見てるんだろう?」
「そうねぇ…。オルガに一目惚れしたとかかしら?」
「ちょ、ちょっと!」
「ふふっ、冗談よ。彼の眼差しからはそういったものは感じられないわ。でもオルガへの憧れや尊敬する気持ちを感じるのは確かよ」
「うーん、それもどうかと思うけど…」
「あとで本人に確かめてみたら?」
「えー…」
とこんなやり取りをしたその日の帰り、まさか噂のカイラントと話すことになるとは思ってもみなかった。
今日の授業が終わりエリザと一緒に馬車で帰るためにいつも通り馬車乗り場まで歩いていたのだが、途中エリザが教室に忘れ物をしたことに気づき教室に戻ってしまったのだ。
エリザには一緒に行くと伝えたが『すぐに戻ってくるからここで待っていて』と言われてしまったので大人しく待っていたのだが、エリザがいないタイミングを見計らってたのか知らない女子生徒達に絡まれてしまった。
「ちょっとそこの平民!」
「!…えっと、私のこと?」
「そうよっ!この学園に薄汚い平民なんてあんたしかいないわよ!」
「あなた平民のくせに図々しいのよ!ここは平民の来る場所じゃないの。それにバーヤイマ公爵家の後見を受けているからって、エリザ様に対して馴れ馴れしいのよ!」
「それにルシウス様と同じ家に住んでいるなんてっ!」
突然絡まれすごい勢いで文句を言ってくる女子生徒達に私は戸惑っている。
(えーっと、薄汚いは余計だけどあとのことは確かにその通りなんだよな。…でもこの子達大丈夫なのかな)
最近知ったことなのだがバーヤイマ公爵家はこの国の筆頭公爵家だそうだ。
上には王家がいるだけで貴族の中で一番の家がバーヤイマ公爵家なのだが、その公爵家が私の後見人なのだ。
自分が偉くなったなんて勘違いはしていないが彼女達のこれからが心配になってしまった。
できればエリザが戻ってくる前に立ち去ってくれないかなと考えていたら、あまり反応がない私に痺れを切らしたのか一人の女子生徒が手を振り上げた。
「あんたその態度はなんなの!?生意気なのよっ!」
「っ!」
(やばい、ぶたれるっ!)
とっさに目を閉じて衝撃に備えたが衝撃が来ることはなかった。
むしろ手を振り上げていた女子生徒の苦しそうな声が聞こえてきた。
「い、痛いっ!誰よ!離しなさいっ!」
「…君たちは彼女に何をしているんだ?」
「っ!カ、カイラント様!?」
カイラントの名前が聞こえたので恐る恐る目を開けると、私と女子生徒の間に男子生徒が立っていた。
鍛えているのが一目で分かる後ろ姿に鮮やかな赤の髪、この人がカイラント・リスターなのだろうか。
「彼女に対する暴言と暴力。一体どう説明するんだ?」
「そ、それは…」
「こ、この平民が悪いのです!自分の身分を理解していないようでしたので教えて差し上げてただけです!」
「そ、そうです!」
「…ほぅ、それなら彼女の後見人にバーヤイマ公爵家が付いていることも知っているだろう?先ほどと同じことをバーヤイマ公爵家にも言えるんだろうな?」
「「「っ!」」」
「君たちはバーヤイマ公爵家に喧嘩を売ったんだ。覚悟しておくんだな。…大丈夫ですか?さぁ行きましょう」
「はい…」
カイラント・リスターと思われる男子生徒に促されその場を後にした。
その場から離れる時に女子生徒達の顔を見たが顔色は悪く泣いている者もいて少し可哀想だなとも思ったが、私にはどうすることもできずにその場を後にしたのだった。
「なんだか最近ずっと視線を感じるんだよね…」
そう、朝学園に来てから授業以外の時間に視線を感じるようになったのだ。
気がついたのはつい最近なのだがその視線はいつも一定の距離を保っている。
不気味だ。
だけどその視線からは敵意は感じられないのでどうしたらいいかと悩んでいるのだ。
「…そうね」
「そうね…ってエリザ知ってたの?」
「あれだけ露骨にオルガを見ていればねぇ…。それに入学してからずっと見られていることに気づかなかったオルガが心配になるわ」
「えぇっ!?ぜ、全然気づかなかった…」
「まぁ色々大変な時だったから仕方ないんじゃないかしら?」
「そうかなぁ?でも知ってたのなら教えてほしかったよー。ここしばらくは気になって落ち着かなかったんだから」
「それもそうね。今度から伝えるようにするわ」
「それで…この視線の人はほっといていいの?」
エリザが気づいていながらもそのまま放置していたのならば危険ではないのだろう。
でも気になる。
「今のところ問題ないわ。お兄様にも報告してはあるけど特に何も言われてないもの」
「ルシウスさんが何も言わないなら大丈夫かな?でもエリザはその人のこと知ってるの?」
「ええ、知ってるわ。カイラント・リスター、リスター伯爵家の嫡男よ」
「そんな人がどうして私を見てるんだろう?」
「そうねぇ…。オルガに一目惚れしたとかかしら?」
「ちょ、ちょっと!」
「ふふっ、冗談よ。彼の眼差しからはそういったものは感じられないわ。でもオルガへの憧れや尊敬する気持ちを感じるのは確かよ」
「うーん、それもどうかと思うけど…」
「あとで本人に確かめてみたら?」
「えー…」
とこんなやり取りをしたその日の帰り、まさか噂のカイラントと話すことになるとは思ってもみなかった。
今日の授業が終わりエリザと一緒に馬車で帰るためにいつも通り馬車乗り場まで歩いていたのだが、途中エリザが教室に忘れ物をしたことに気づき教室に戻ってしまったのだ。
エリザには一緒に行くと伝えたが『すぐに戻ってくるからここで待っていて』と言われてしまったので大人しく待っていたのだが、エリザがいないタイミングを見計らってたのか知らない女子生徒達に絡まれてしまった。
「ちょっとそこの平民!」
「!…えっと、私のこと?」
「そうよっ!この学園に薄汚い平民なんてあんたしかいないわよ!」
「あなた平民のくせに図々しいのよ!ここは平民の来る場所じゃないの。それにバーヤイマ公爵家の後見を受けているからって、エリザ様に対して馴れ馴れしいのよ!」
「それにルシウス様と同じ家に住んでいるなんてっ!」
突然絡まれすごい勢いで文句を言ってくる女子生徒達に私は戸惑っている。
(えーっと、薄汚いは余計だけどあとのことは確かにその通りなんだよな。…でもこの子達大丈夫なのかな)
最近知ったことなのだがバーヤイマ公爵家はこの国の筆頭公爵家だそうだ。
上には王家がいるだけで貴族の中で一番の家がバーヤイマ公爵家なのだが、その公爵家が私の後見人なのだ。
自分が偉くなったなんて勘違いはしていないが彼女達のこれからが心配になってしまった。
できればエリザが戻ってくる前に立ち去ってくれないかなと考えていたら、あまり反応がない私に痺れを切らしたのか一人の女子生徒が手を振り上げた。
「あんたその態度はなんなの!?生意気なのよっ!」
「っ!」
(やばい、ぶたれるっ!)
とっさに目を閉じて衝撃に備えたが衝撃が来ることはなかった。
むしろ手を振り上げていた女子生徒の苦しそうな声が聞こえてきた。
「い、痛いっ!誰よ!離しなさいっ!」
「…君たちは彼女に何をしているんだ?」
「っ!カ、カイラント様!?」
カイラントの名前が聞こえたので恐る恐る目を開けると、私と女子生徒の間に男子生徒が立っていた。
鍛えているのが一目で分かる後ろ姿に鮮やかな赤の髪、この人がカイラント・リスターなのだろうか。
「彼女に対する暴言と暴力。一体どう説明するんだ?」
「そ、それは…」
「こ、この平民が悪いのです!自分の身分を理解していないようでしたので教えて差し上げてただけです!」
「そ、そうです!」
「…ほぅ、それなら彼女の後見人にバーヤイマ公爵家が付いていることも知っているだろう?先ほどと同じことをバーヤイマ公爵家にも言えるんだろうな?」
「「「っ!」」」
「君たちはバーヤイマ公爵家に喧嘩を売ったんだ。覚悟しておくんだな。…大丈夫ですか?さぁ行きましょう」
「はい…」
カイラント・リスターと思われる男子生徒に促されその場を後にした。
その場から離れる時に女子生徒達の顔を見たが顔色は悪く泣いている者もいて少し可哀想だなとも思ったが、私にはどうすることもできずにその場を後にしたのだった。
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