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プラチナ級冒険者
しおりを挟むこの世界には冒険者という職業が存在する。冒険者になりたい者は、冒険者ギルドに登録することで冒険者になれるのだ。ただ一言で冒険者と言っても階級によって実力が違ってくる。
ギルドに登録したばかりの初心者はブロンズ級、中堅のシルバー級、一流と呼ばれるゴールド級。ゴールド級は相当な実力の持ち主だと言われている。ゴールド級になれるのは冒険者の中でもほんの一握りだが、ゴールド級より上の階級が存在する。それがプラチナ級だ。プラチナ級の冒険者は一人が国家級の戦力になるほどの実力の持ち主なのだ。
そしていつの間にかそのプラチナ級の冒険者が私の店の常連となっていた。
「こんにちは」
「こんにちは、ロストさん」
「あの、これよかったら…」
「これは…」
彼から手渡されたのは青い花弁の花束だ。私はそっと花に鑑定魔法をかける。
名前:アルネの花
効能:魔力回復(大)
備考:ダイ火山にのみ生息する花
(ダイ火山ってドラゴンの棲みかだって聞いたことあるけど…)
新しい客になってくれたらいいなと思っていた彼は、数少ないプラチナ級の冒険者だった。名前はロストさんといい、キュレール王国の出身で各地を旅しながら冒険者として活動しているそうだ。きっと依頼でダイ火山へ行ったのだろう。彼にとってはドラゴンなど大した驚異ではないのかもしれない。
「依頼先で見つけたんだ」
「可愛らしい花ですね」
「この花、ルル殿の瞳の色に似ているなと思って…」
「ふふ、お上手ですね。ありがとうございます」
「い、いえ…」
こうしてたまに彼が花を持ってくることがあるのだが、これは決して私への贈り物ではない。
「綺麗だからちょっともったいないですけど、この花で回復薬を作ればいいんですよね?」
いつも彼が持ってくる花は回復薬の材料なのである。鑑定魔法が使えなければ贈り物だと勘違いしてしまうところだ。
「あ、いや」
「次いらっしゃるまでに準備しておきますね」
「違っ」
「ママー!」
「セドル?」
彼が何か言おうとしたところにセドルが突然店へとやってきた。
「どうしたの?」
「あのね、ママにおねがいがあるの」
「おねがい?」
「ルル様すみません。実はケビンが余計なことを言ってしまって…」
レミアが申し訳なさそうに言った。今日はたしかケビンに剣を教えてもらっていたはずだ。一体何を言ったのか気になるが、今は店にお客がいるのだ。私はしゃがんでセドルの目を見た。
「セドル。今ママはお仕事中なの。だから少しだけ待っていてくれる?」
「あ!…ごめんなさい」
「大丈夫よ。じゃああっちの部屋で待っててくれる?」
「うん!ぼくまってる!」
「ふふ、偉いわ。レミア、よろしくね」
「はい」
二人に店の奥の部屋へと移動してもらった。彼には待たせてしまったお詫びをしなければ。
「お待たせしてすみませんでした」
「……」
「あの」
「…今のは?」
「えっと、私の息子です」
「息子」
「はい。あ、先ほど何か言おうとしてましたよね?どうかされましたか?」
「……」
「ロストさん?」
「……結婚、しているのか?」
どうやら彼は私のことを独身だと思っていたようで、子どもがいたことに驚いてるようだ。
「あ、いえ。実は離婚してるんです」
「っ!…失礼なことを聞いて申し訳ない」
「気にしないでください。この辺りの人はみんな知っていますから」
「だが…」
この世界でも離婚はめずらしいわけではない。平民の間では普通にあることだ。ただ彼は魔法剣士らしいのでおそらく貴族の血筋。だから離婚と聞いて気にしてしまうのだろう。
「じゃあ今度息子にお話を聞かせてくれませんか?」
「話、ですか?」
「ええ。息子は冒険のお話が好きなんです。ロストさんのお話はとても喜ぶと思うんです。あ、もちろんダメじゃなければですが…」
息子がと言いながらも、私自身冒険者の話はとても興味があるので是非ともお願いしたい。
「…わかりました。俺でよければ」
「わぁ!ありがとうございます!」
「っ!い、いえ…」
「ふふっ」
この知らせを聞いたらセドルはとても喜ぶだろう。その顔を思い浮かべて私は幸せな気持ちになるのであった。
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