婚約が白紙になりました。あとは自由に生きていきます~攻略対象たちの様子が何やらおかしいですが、悪役令嬢には無関係です~

Na20

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 今日の私は朝からソワソワしている。
 なぜなら今日、アナベルが我が家にやって来るからだ。
 友人を家に招くのは前世を含めれば初めてではないものの、現世では初めてのこと。
 楽しみではあるけど、どこか緊張している自分がいて。
 ああ、なんだか落ち着かな――


「お嬢様。お友達との待ち合わせはお昼過ぎでしょう?今はまだ朝ですよ。少し落ち着いてください」

「……マーサ」


 さすがマーサだ。
 緊張しているのを気づかれないよう普通を装っていたというのに……


「ほら、手が止まっていますよ?」

「……」


 今は朝食を食べているところなのだが、マーサに言われ目の前にある料理に目を向けると、あら不思議。全く減っていませんでした。


「緊張されているのは分かりますが、スープは温かいうちに食べてくださいね」


 うん、普通にバレてましたね。
 

「ごめんなさい。すぐに食べるわ」


 ケーキだけでなく、マーサが作る料理はどれも絶品である。
 それなのにそんな極上スープが冷めてしまうなど、絶対にあってはならない。


「そんなに急いで食べなくても料理は逃げませんよ」

「だって~」

「だってじゃありません」


 相変わらずマナーに厳しいマーサ。
 でもそれは私を思ってのことだと分かっている。だから腹が立つことはない。
 それに完全に胃袋をつかまれている。
 そんな私がマーサ相手に勝てるわけがないのだ。


「……はーい」

「もう……」

「まぁお前も落ち着きなさい」


 しかしここで強力な味方の登場である。


「ディラン!」


 ディランはマーサほど厳しくはない。むしろ甘すぎるくらいだ。きっと私の肩をもって……


「お嬢様がめずらしく子どもらしいんだ。微笑ましいじゃないか」


 え、子ども……?


不思議な力前世の記憶をお持ちだからか、お嬢様は昔から大人びていただろう?私はお嬢様が特別な存在であることを嬉しいと思う反面、少し寂しくも思っていたんだが、お前は違うのかい?」

「……いいえ。私も同じです」

「だろう?だからたまにくらい子どもらしくしたっていいんじゃないか」

「そうね……私たちにとってお嬢様はいつまでもかわいい子よね」

「ああ、そうだとも」

「ディラン!」

「マーサ!」

「……」


 えっと、なんか思ってたのと違うんですけど。なぜか二人は熱く握手を交わしているけど、前世合わせるとアラフォー、いやアラフィフの私には恥ずかしい話で。
 もう子どもみたいなことをするのはやめよう。うん、そうしよう。


 ◇


 アナベルとは領都の広場で待ち合わせをしている。せっかくだし色々と散策をする予定だ。
 約束の時間より早く着いたからか、まだアナベルの姿はない。
 それから少しして、まもなく約束の時間というタイミングでアナベルがやってきた。


「ダリア様!」


 手に大きな鞄を持ったアナベルが駆け寄ってくる。
 まるでドラマのワンシーンのようだ。
 令嬢が走るなんてと言われるだろうが、アナベルは走る姿すら愛らしい。


「ベル、久しぶりね」

「お久しぶりです!お待たせしちゃいましたか?」

「私もさっき来たばかりよ。元気だった?」

「はい!」


 日にちにしてみれば大したことないが、これまで学園で毎日会っていたのだ。
 たった数日でも久しぶりな感じがする。
 それにアナベルの私服姿を見るのは初めてだ。
 制服姿も尊いが、ワンピース姿もまたよき。


「それじゃあ早速……っとその前に。少し失礼するわね」

「ダリア様?」


 私はアナベルが持っている鞄に手を触れる。
 ずいぶんと大きな鞄だが、それもそのはず。
 今日はただ家に招待しただけではない。なんとお泊まりなのである。


「これは内緒よ?」


 でもこんなに大きな鞄を持っていたら疲れちゃうもんね。だから……


「え……き、消えた?」


 ついさっきまであった鞄はどこにも見当たらない。
 まるで消えてしまったような……そう転移魔法を発動したのだ。


「荷物があると大変でしょう?私の家に送っておいただけで、消えたわけじゃないから安心してね」


 さらっと言ったものの、心臓はバクバクである。
 目の前で転移魔法を見たアナベルは、果たしてどんな反応を……


「さすがダリア様です!もちろん内緒にしますのでご安心ください!」


 口元に人差し指を当てるアナベル。
 か、可愛すぎる……!
 あまりの可愛さに悶えそうになるけど、ここは堪えないとね。


「ありがとう。それじゃあ行きましょうか」

「はい!」


 それからの私たちは本を見たり、かわいい雑貨を見たりと楽しい時間を過ごした。
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