婚約が白紙になりました。あとは自由に生きていきます~攻略対象たちの様子が何やらおかしいですが、悪役令嬢には無関係です~

Na20

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 楽しい時間はあっという間に過ぎていくもの。
 もっと遊んでいたいけど、そろそろ帰らなければ。
 今日のメインイベントはこれからなのだから。


「ねぇベル。この後なんだけど、帰ったら私の家族を紹介してもいいかしら?」

「もちろんです!えへへ、すごく楽しみです!」


 嬉しそうに笑うアナベル。
 その姿に私も嬉しくなってくる。
 それからアナベルと他愛ない会話をしながら、歩いて家へと向かった。


「さぁ着いたわ。ここが私の家よ」

「「おかえりなさいませ」」


 扉を開けると、ディランとマーサが出迎えてくれた。


「二人ともただいま。ベル、紹介するわね。ディランとマーサよ」

「アナベル様、ようこそいらっしゃいました。私は執事のディランと申します」

「うふふ、お嬢様のお友だちとお会いできて嬉しいですわ。侍女のマーサと申します」

「は、初めまして!アナベル・ホワイトと申します。今日はよろしくお願いします」

「二人はね、私の親同然の存在なの」


 私を優しく、時に厳しく導いてくれたディランとマーサ。
 今があるのは間違いなく二人のおかげ。
 そんな大切な二人と、大好きな友人が仲良くなってくれたらすごく嬉しい……



 ……いや、嬉しいんだけどね?


「そ、そんなことが……!それは間違いなく可愛いですね!」

「そうなのよ!あの時のお嬢様はそれはもう可愛らしくて……」

「その時の写真があるので、あとでご覧になりますか?」

「わっ、見たいです!」


 ものの数分で仲良くなっていましたよ。
 嬉しい。嬉しいけど……


「お嬢様はとても可愛らしくて」

「大変努力家で」

「それにすごく優しいです!」

「「よく分かっていらっしゃる」」

「ちょ……そ、そこまで!もう勘弁してちょうだい!ほら早く中に入りましょうよ!」


 なぜか三人して私を褒め出すんだもん。
 仲良くなってくれて嬉しいし、褒められるのだってそりゃあ嬉しい。
 でもね?恥ずかしくて居た堪れないのよ。
 そういうことは、せめて私がいないところでやってください!

 それよりも夕食までまだ少し時間がある。
 ひとまずアナベルを部屋に案内しないと。


「この部屋を使ってね」

「わぁ!すごく素敵なお部屋です」

「気に入ってもらえてよかったわ。荷物はテーブルの脇に置いてあるから、あとはよろしくねマーサ」

「かしこまりました」

「じゃあまた夕食でね」

「はい!」


 マーサにアナベルをお願いし、私はディランを連れ自分の部屋へと向かった。


「そういえば二人はいつ頃帰ってくるのかしら?」


 二人と言うのはもちろんジークとアンナのこと。
 彼らも大切な私の家族。きちんと紹介したい。


「お二人とも夕食には間に合わないと仰っていました。おそらく食後のお茶の時間には帰ってくるでしょう」


 二人とも忙しそう。
 でもその時間なら紹介できそうでよかった。
 それよりも……


「少し緊張するわね」

「アナベル様に別の姿をお見せに?」

「ええ」


 今日、私はアナベルに自身の秘密を明かすつもりだ。
 待ち合わせ場所で見せた転移魔法はそのはじまりである。

 この世界で初めてできた友達。
 隠していたことをさらけ出すのはどうしても不安になる。
 失いたくない。でもこんな私を受け入れてほしいと願っている自分もいて。
 矛盾しているのは分かっている。
 けれどそう思ってしまうのだ。


「……」


 もしも嫌われちゃったら、私はどうすれば……


「大丈夫ですよ」

「えっ?」


 ディランの言葉に我に返ったが、一体何が大丈夫だというのか。


「アナベル様はどんなお嬢様でも受け入れてくださるはずです」

「……どうしてそう言いきれるの?」

「それは、お嬢様の人を見る目はたしかだからです」


 人を見る目……


「私たち四人がその証拠にはなりませんか?」

「!」


 その言葉にハッとした。
 こんな私を信頼してくれている人たちがいる。
 それならもっと自分を信じないといけないのでは?
 そうじゃないとみんなに、そしてアナベルに失礼だ。


「……ディランありがとう」

「いえ、私はただ事実を言ったまでです。それでは私は夕食の用意をして参りますので、一旦失礼します」

「ええ、よろしくね」


 一人になった私は、ソファにもたれ目を瞑った。

 緊張なんてらしくなかったな。
 ……うん、大丈夫。
 きっとベルは受け入れてくれる。信じよう。

 私の心はもう定まった。
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