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しおりを挟む「うまくいってよかったな」
「ええ。無事に受け取っていただけたし、周りの反応も悪くなかったわ」
「ああ。これでようやくヴィーもひと息つけるな」
「そうね。今回はちょっと頑張りすぎたから明日からはゆっくり過ごすことにするわ」
「そうだぞ。ヴィーは働きすぎだ。少し休んだってお金はドンドン入ってくるから心配いらないさ」
「ふふっ、リオは本当に私が何を考えているのかよく分かっているわね」
私が離婚してから今までほとんど休まずに働き続けていたのは、離婚するまでの時間をあまりにも無駄にしていたから。自由に動けるようになった今、その無駄を取り返そうと躍起になっていたのだ。おかげでヒット商品が生まれ、ベル商会も大人気商会へと成長した。それに大好きなお金もたくさん稼ぐことができている。
ただずっとこのまま同じペースで走り続けられるかと聞かれればそれは無理だろう。安定して利益を出せるようになった今、次に向けて少し休憩するのもいいだろうと思っていたところだ。それは自分の中で思っていただけでまだ誰にも言っていないのに、リオには私の考えていることが何でも分かってしまうようだ。
「当たり前だろう。…俺はずっとヴィーだけを想ってきたんだ」
「リオ…?」
「なぁ、ドレスを渡した日に俺が言ったこと覚えているか?夜会の日に大切な話があるから聞いてほしいって」
「っ、…覚えて、いるわ」
国王様と王妃様への挨拶をするために一旦忘れることにしていたが、先程と同じ熱の籠った視線が私を貫く。どうしてだかドキドキする。無事に新商品を献上することができて気が緩んでいるのだろうか。
「よかった。じゃあここは人が多いから外に出よう」
リオはそう言い私の手を取って歩きだした。私はまだ外に行くことに対して返事をしていないのに、強引な気もするがとてもそんなことを言える雰囲気ではなかった。リオの纏う雰囲気が急に変わり、それに私の手を取るリオの手がひどく優しいものだったから。
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