お飾りの公爵夫人は夫の初恋でした

Na20

文字の大きさ
1 / 52

1

しおりを挟む

 ある国には時折、聖女という存在が現れる。
 だからなのか、その国には聖女信仰が深く根付いていた。
 ただ最後に聖女が現れたのは今から二百年も昔のこと……

 文献によれば、聖女はありとあらゆるケガや病気を治す治癒能力を持っていたという。
 そして世にも珍しい、美しく輝くシルバーの髪が聖女の証であると記されていた。



 ◇◇◇



 ――チュン、チュチュン


「ん……」


 窓の外から鳥のさえずりが聞こえてくる。


「……もう、朝?」


 どうやら目覚める時間が来てしまったようだ。
 できればもう少し眠っていたかったが、今日はやることがたくさんある。ここで二度寝をするわけにはいかない。


「ふわぁ~……」


 寝ぼけナマコを擦りながら、のそのそとベッドから起き上がる。閉じていたカーテンの隙間から差し込む光は暖かい。

 よかった。今日は晴れているようだ。

 私は窓へと向かい、カーテンを開ける。
 するとそこには昨日の雨が嘘だったかのように、雲一つなく晴れ渡った空があった。


「う~ん!」


 両腕を目一杯、空へと向かって持ち上げる。この調子なら午後には雨水も乾いて、畑に種を蒔くことができそうだ。
 起きたばかりではあるが、頭の中でこれからの予定を組み立てていく。


 (まずは洗濯でしょう?そのあと掃除をしてから街に買い物に行って……たしかそろそろ砂糖がなくなりそうだったわ。あと新しい小説が出てるか本屋にも行かないと)


 好きなもののことを考えると、それだけでワクワクする。


 (買い物から帰ったらお昼を食べて、種蒔きをして……そうだ、今日の夕食はお肉にしよう)


 こうして一日の予定を立てるのが私の毎日の日課である。

 一通り今日の予定を決め終えたので、さっそく朝の準備に取り掛かろうではないか。

 私は目の前の窓に手を掛け、そして開けた。
 開いた窓から朝の爽やかな風が部屋へと入り込み、緑色のカーテンをゆらゆらと揺らす。


「気持ちいい……」


 今日はいい一日になりそう。なんの根拠もないが、そんな予感がした。
 昔から私の勘はよく当たる。だからきっとこの予感も当たる気がするのだ。


「よしっ!」


 そろそろ朝の支度に取りかかることにしよう。
 今日は予定が詰まっているので、のんびりしている暇はない。
 まずは桶に溜めた水で顔を洗い、続けて歯を磨く。
 それが終われば次は着替えだ。
 クローゼットの扉を開く。今日は種蒔きをする予定なので、汚れても大丈夫な服がいいだろう。クローゼットから丈夫そうな茶色のワンピースを選んだ。
 ……まぁ御大層に選ぶなどと言ってみたが、もっぱら畑仕事をする日はこの服だったりする。
 そもそもクローゼットの中には今選んだ茶色のワンピースの他に、あと二着しか服が入っていない。だから自ずと着る服は限られてくるのだ。
 あと入っているのは、大切な碧色のハンカチだけ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました

Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。 「彼から恋文をもらっていますの」。 二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに? 真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。 そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?

Debby
恋愛
 キャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢とその婚約者のシアン・フロスティ公爵令息の前に、昨年までシアンが留学していた隣国での友人が現れた。  その友人はロベリーと名乗り、シアン不在の時を狙い、キャナリィに何かと声をかけてくる。  キャナリィの幼馴染み兼親友のクラレット・メイズ伯爵令嬢の「必要以上にキャナリィに近付くな」と言う忠告も無視するロベリーと何故かロベリーを受け入れるキャナリィ。  キャナリィの不貞の噂が学園に流れる中開かれた新入生歓迎のガーデンパーティーで、ロベリーに心惹かれた令嬢によってそれは取り返しのつかない事態にまで発展してしまう。 「で、まずはあなたが私に嫌がらせをする理由をお聞かせいだいても宜しいかしら?──」  キャナリィに近付くロベリーの目的は?  不貞を疑われたキャナリィは無事にその場を収めることが出来るのだろうか? ---------- 覗いて頂いてありがとうございます。 ★2025.4.26HOTランキング1位になりました。読んでくださったかた、ありがとうございます(^-^) ★このお話は「で。」シリーズの第二弾です。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入りました。良かったら覗いてみてくださいね。 (*´▽`人)アリガトウ

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

あなたの言うことが、すべて正しかったです

Mag_Mel
恋愛
「私に愛されるなどと勘違いしないでもらいたい。なにせ君は……そうだな。在庫処分間近の見切り品、というやつなのだから」  名ばかりの政略結婚の初夜、リディアは夫ナーシェン・トラヴィスにそう言い放たれた。しかも彼が愛しているのは、まだ十一歳の少女。彼女が成人する五年後には離縁するつもりだと、当然のように言い放たれる。  絶望と屈辱の中、病に倒れたことをきっかけにリディアは目を覚ます。放漫経営で傾いたトラヴィス商会の惨状を知り、持ち前の商才で立て直しに挑んだのだ。執事長ベネディクトの力を借りた彼女はやがて商会を支える柱となる。  そして、運命の五年後。  リディアに離縁を突きつけられたナーシェンは――かつて自らが吐いた「見切り品」という言葉に相応しい、哀れな姿となっていた。 *小説家になろうでも投稿中です

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります

柚木ゆず
恋愛
 婚約者様へ。  昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。  そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?

婚約を破棄したいと言うのなら、私は愛することをやめます

天宮有
恋愛
 婚約者のザオードは「婚約を破棄したい」と言うと、私マリーがどんなことでもすると考えている。  家族も命令に従えとしか言わないから、私は愛することをやめて自由に生きることにした。

処理中です...