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39 ヴィード侯爵
しおりを挟む『聖女様の話聞いたか?』
『聖女様は本当に存在しているのね』
『今日ここで奇跡を披露されるらしいぞ!』
『一体どんな方なのかしら』
会場ではどこも聖女の話題で持ちきりだ。私はそんな人たちの中を堂々と歩く。するとちらほらと私に気づく人も。
『ほら、ヴィード侯爵よ』
『ヴィード侯爵ってたしか聖女の後見人だったよな』
『彼ほど幸運の持ち主はいないわよね』
『いいなぁ』
(はっ!幸運の持ち主か)
どうやらこの場にいる誰もが、聖女の存在を信じているらしい。馬鹿馬鹿しいと思うが、それはそれで私にとっては非常に都合がいい。
(聖女なんて、架空の存在に過ぎないのにな)
たとえ本当に存在していたとしても、最後に存在したのは今から二百年も前のこと。文献に記録が残っていようとも、実際に聖女をみた人間はこの時代には存在しない。
それなら銀髪で治癒能力があれば、誰でも聖女になれるということ。そしてそんな聖女を使えば、この国で一番の権力を持てるのではないか。
そんな考えが頭を過った。
天才だと思った。これまで私を馬鹿にしてきた奴らを見返せる。
そうして長い時間をかけてここまで準備をしてきた。その努力がようやく実るのだ。
(あの娘もあの男との結婚を望んでいたからな。せいぜい役に立ってくれるだろう。……そういえばたしかあの男の嫁はあの孤児の娘だったな)
あの伯爵家はいい金蔓だった。ただそこそこ見目のいい娘が、ペンゼルトン公爵家に嫁いでしまったのは予想外であったが。
さすがに公爵家に目をつけられるのは避けたい。だから娘が嫁いでからは、伯爵家から搾り取る金額が少なくなってしまったのは残念だった。
(まぁ公爵と離婚したあとにまた搾り取ればいい。金はいくらでもあるに越したことはないからな)
今回の計画にはかなりの金が掛かっている。それにこれからもあの薬を仕入れるのに、金がかかる。あいつらにはせいぜい私のために役に立ってもらわなくては。
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