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しおりを挟む私が今いるのは王城の一室だ。ここで数年間に渡り、シェザート殿下と王妃の仕事をさせられている。机の上には二人が数日溜め込んだ書類で山ができていた。
なぜ婚約者でしかない私がシェザート殿下と王妃の仕事をさせられているのかと言えば、都合がよかったから。ただそれだけ。
王太子教育をまともに受けてこなかったシェザート殿下が、与えられた仕事をこなすことなどできるわけがない。だが無駄にプライドだけは高く、できないと言いたくないがためにどうしようかと考えて思いついたのが、私に仕事をさせることだった。
『婚約者なんだから俺の代わりにやっておけ』
そう言って大量の仕事を私に押し付けてきた。私のことは婚約者だと認めないと言っていたのに、都合のいい時だけ婚約者扱いしてきたのだ。
そもそも王太子教育をきちんと終えていないのに仕事を任せる国王も国王だし、さらにこれに便乗して王妃も私に仕事を押し付けてくるようになった。仕事を押し付けてきた張本人たちは、お茶会にパーティーにと遊んでばかり。私は王太子妃教育はすでに終わってはいるものの、まだ結婚していないので公爵家の人間だ。それにも関わらず、国王はこれを黙認している。
私もそんな人たちの代わりなどしなければいいのだが、押し付けてくる仕事はどれも重要案件ばかりで、誰も処理しなければ国がたち行かなくなってしまう。自国内だけならまだしも、他国に迷惑をかけるわけにはいかない。だから私は仕方なく仕事をこなす日々を数年も送っている。
始めのうちは大臣や文官たちから感謝されたが、時が経つにつれ、私が仕事をするのが当たり前だと思われるようになっていった。
当然ながら王家の人間からは一度も感謝されることはなかった。
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