婚約破棄は決定事項です

Na20

文字の大きさ
11 / 43

11

しおりを挟む

「それは本当か!?」


 これまでの出来事を話すと、やはり叔父は私が今までどのような扱いを受けていたのか知らなかったようだ。


「はい。もう何年も王家の仕事を押し付けられていますし、私はいまだに王太子殿下に受け入れてもらえていません。それにすでに別の女性と懇意にしていて、側妃として迎え入れるつもりのようです」

「王家はなんて恥知らずなんだ!何年も前からなら国王陛下も黙認しているということか」

「ええ、おそらくは。国王陛下は王妃様に弱いですからね。それに国王陛下としては持参金さえ手に入れば、私がどう扱われていようとも関係ないのでしょう」

「そんなひどい話があるか!」

「叔父様、落ち着いてください」


 国王からすれば私はただの金づるだ。私が父から大切にされている娘であれば、金づるを失わないためにシェザート殿下や王妃を諌めただろうが、父が私に無関心なのは社交界では有名な話。だから国王は我関せずを貫いているのだ。


「……すまなかった」

「落ち着いたのならよかったです」

「そうじゃない」

「……?」

「私がもっと気にかけていればリリアナが辛い思いをしなくて済んだのに……!本当にすまなかった!」


 叔父は立ち上がり私に頭を下げた。突然の出来事に驚いたが、叔父が謝る必要はない。そう伝えなければと私も立ち上がり口を開いた。


「頭を上げてください!叔父様が謝る必要は……」

「いや、今さらだが謝らせてくれ。大切な姪が辛い目に遭っていたのに、兄上の言葉を信じて何も知ろうとしなかった私の落ち度だ」

「……父の言葉?」

「ああ。私に会う度に兄上が言っていたんだ。『国一番の存在になれば、間違いなくあの子は幸せになれるんだ』ってね」

「!」


 叔父の言葉を聞いて、私はあの日の父の言葉を思い出した。


『これでお前は幸せになれる』


 この言葉だけなら、父が私に言い聞かせるために言った言葉に聞こえる。だが父が叔父に言っていたという言葉を聞くと、なんだが違和感を覚えた。


 (まるで自分に言い聞かせているような……。いえ、今は関係ないわね)


 ふとそんな考えが頭を過ったが、今一番重要なのは叔父に保証人になってもらうことだ。それ以外のことは後で考えればいいだろう。


「リリアナの父親である兄上がそう言うのだからそうなのだろうと安易に思い込んでしまった。リリアナの幸せはリリアナにしかわからないというのに……」

「叔父様。私は王太子殿下と結婚すれば、間違いなく不幸になるでしょう」

「リリアナ……」

「ですがこのまま不幸になるつもりはありません」

「……何か考えがあるんだな?」

「はい。そのためには叔父様の協力が必要なのです」

「私にできることなら協力しよう。リリアナの考えを聞かせてくれ」

「実は―――」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる

櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。 彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。 だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。 私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。 またまた軽率に短編。 一話…マリエ視点 二話…婚約者視点 三話…子爵令嬢視点 四話…第二王子視点 五話…マリエ視点 六話…兄視点 ※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。 スピンオフ始めました。 「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

あなたの思い通りにはならない

木蓮
恋愛
自分を憎む婚約者との婚約解消を望んでいるシンシアは、婚約者が彼が理想とする女性像を形にしたような男爵令嬢と惹かれあっていることを知り2人の仲を応援する。 しかし、男爵令嬢を愛しながらもシンシアに執着する身勝手な婚約者に我慢の限界をむかえ、彼を切り捨てることにした。 *後半のざまあ部分に匂わせ程度に薬物を使って人を陥れる描写があります。苦手な方はご注意ください。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

「婚約破棄だ」と笑った元婚約者、今さら跪いても遅いですわ

ゆっこ
恋愛
 その日、私は王宮の大広間で、堂々たる声で婚約破棄を宣言された。 「リディア=フォルステイル。お前との婚約は――今日をもって破棄する!」  声の主は、よりにもよって私の婚約者であるはずの王太子・エルネスト。  いつもは威厳ある声音の彼が、今日に限って妙に勝ち誇った笑みを浮かべている。  けれど――。 (……ふふ。そう来ましたのね)  私は笑みすら浮かべず、王太子をただ静かに見つめ返した。  大広間の視線が一斉に私へと向けられる。  王族、貴族、外交客……さまざまな人々が、まるで処刑でも始まるかのように期待の眼差しを向けている。

聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~

キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。 パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。 最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。 さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。 その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。 王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。 こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。 ※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。 ※カクヨムにも掲載中です。

【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ

さこの
恋愛
 私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。  そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。  二十話ほどのお話です。  ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/08/08

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

処理中です...