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しおりを挟む私達は場所を応接室へと移した。
「改めて、ルナリアの父のバルトラ・オーガストだ」
「母のレティア・オーガストよ」
「兄のラスター・オーガストです」
「イシス・ロイガートと申します。本日はお時間をいただきありがとうございます」
訓練場での勝負が終わりようやく挨拶が始まった。勝負の結果、父はイシス様を認めてくれたようだ。どうなることかと思ったがひと安心である。
「いや、先ほどは申し訳ない。だがイシス殿の実力を知ることができてよかった」
「私もとてもいい経験になりました。ありがとうございます」
「ふふっ、突然の勝負にも文句を言わずに感謝の言葉が出るなんて素敵な人じゃない、ねっあなた」
「そうだな」
「それにあの強さ!俺も剣には自信があったけどあの勝負で自分が傲っていたことに気がついたよ。イシス殿はルナの相手に申し分ないね」
「ああ。私もイシス殿が素晴らしい人だと分かったよ。イシス殿、あの勝負は親が娘を想うがゆえということで大目に見てもらえるとありがたい」
「いえ、親が子を想うのは当然のこと。気にしないでください」
どうやらあの勝負のおかげですんなりとイシス様は家族に受け入れてもらえたようだが、私が想像していた挨拶とはずいぶんと違う。まぁ結果良ければなんでもいいのだが。
「では改めてですが、私とルナさんの結婚を認めていただけますか?」
「ああ、認めよう」
「ありがとうございます!必ず幸せにします」
「お父様、ありがとうございます」
無事に結婚を認めてもらうことができた。
その後はこれからのことを話し合った。ロイガート公爵様の意向は確認済みなのでそれと擦り合わせながら色々と決めていく。とりあえず婚約期間は一年間設けることとなった。今私は十九歳、イシス様は二十五歳なので遅すぎることはない。
それとイシス様の強い希望で騎士団長の職は結婚前で辞めることになった。私は事前に聞いていたので驚かなかったが私の家族は驚いたようだ。イシス様は私と共に冒険者として活動する。もちろん食堂も手伝ってくれるそうだ。なのでライージュ国に戻り次第騎士団を退団する旨を伝え、婚約期間中に引き継ぎを終わらせる予定だ。
ロイガート公爵様からは公爵様が持つ伯爵位を継ぐのはどうかと提案されたが、私もイシス様も貴族でいることにこだわっていないので遠慮させていただいた。だからイシス様も結婚と同時に平民となる。
S級冒険者の元辺境伯令嬢と元騎士団長で元公爵子息の最強平民夫婦となるだろう。
そうして両家から結婚の許可をもらった私達は晴れて婚約者となったのだった。
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