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一章 異世界漂着

15話 財宝の手掛かり発見

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 最悪の事態が発生した。
 到着した駐屯地はまさかの――――昨日立ち寄った野営地であった。

 「…………」

 しかもテントの中を覗いてしまった。
 惨劇が広がる光景を前に、レベッカは生気の引いた顔で、泣き叫ぶ事もなく呆然と立ち尽くしている。
 テント内に雑に放置された死体は昨日よりも腐敗が進んでおり、ハエや蛆が新たな住人となっていた。

 「…………」

 俺も言葉が出ない。行く前に、しっかり確認を取っておいた方がよかったかもしれない。後悔の念が押し寄せた。
 しかし、いつまでも落ち込んでいるようでは進展がない。

 「……レベッカ、不幸な事だってある。気にしてもいいけど、今はその時じゃない」

 さっきやられたように、今度はこっちから彼女の肩をトントンと叩いた。
 掛けた言葉にレベッカの顔には血の気が戻り、慌ててこちらを振り返った。

 「も、申し訳ございません。仲間がやられてつい……」
 「謝るな。こういっちゃ聞こえが悪いけど、仲間が死ぬのは戦場ではごく普通の事だ」
 「……はい、そうですね。あなたの言う通りです」

 レベッカの声には悲しみが含まれているが、決別も混ざっている。

 「ほら、行くぞ。手掛かりがあるかもな」
 「……はい!」

 死没者に複雑な感情を抱きながらも、凄惨な現場を離れて別のテントへ向かった。
 次に突入したテントは司令室のような場所で、大きな机と簡易的な本棚が置かれているだけだった。他のテントにあったような死体はない。この事に、レベッカは胸を撫で下ろしていた。

 「ここは安全そうですね……」
 「ああ、そうだな。何人かは逃げたのかもな」

 会話をしつつ、本棚をガサゴソと漁る。しまわれているのは仕事や作戦に関する文書だけで、肝心の鏡に関する手掛かりはなかった。

 「そっちはどうだ?」

 全ての本棚を調べ終えたので、机を調査しているレベッカに声を掛けた。

 「こちらも特には……」
 「そうか……」

 結果にがっかりだが、こういう不運な事もある。
 司令室から出て行くと、テント以外の場所も探し始めた。
 堀や乗り捨てられた馬車など、目につく箇所は全て探したつもりだがやはり見つからなかった。
 ここに手掛かりはないと諦めかけた時、レベッカがある場所を指さしていた。

 「あそこは、どうでしょうか?」

 伸びる指の先には、明らかに不衛生なトイレが。
 汚物だらけの便所になんて近寄りたくないと思ったが、

 「…………」

 無言の圧力を掛けられているため、渋々向かう事に決めた。
 便所は一応男性専用だったので、そこには俺1人で入った。

 「くっせー……」

 用を足す便所は粗末な丸太小屋の中にあり、便器が3つ並んでいるが仕切りのないとても原始的なものだ。時代的に下水道が不完全なのでトイレは水洗式ではなく、汲み取り式だ。臭いが半端なく充満している。
 レベッカもこれは流石に敗北するだろう。俺も心が折れつつある。
 ここには臭いだけで何もないように思えるが、念には念を入れて、便器の奥をライトで照らして確かめた。

 「これはハズレ」

 一番右の便器には汚物しかなかった。

 「これも違う」

 真ん中の便器も今調べたものと遜色ない。

 「どうせこれも……」

 糞を見つめる作業はもうこりごりだと、最後の便器を照明で照らす。

 「ん?」

 予想外だ。左端の便器は何故か未使用のままで、糞尿は溜まっていなかった。代わりに、お目当てのものかもしれない紙がひっそりと眠っていた。

 「これはまさか、な……」

 未使用とはいえ便器の中に手を突っ込むのは抵抗がある。そこらに転がっていたモップを逆さに持つと、底の紙を掬い上げた。
 取った紙に記載されている文字は解読不能だが、重要な手掛かりかもしれないと考え、便所を飛び出してレベッカの元へ急いで向かった。

 「おい、何か変なの出てきたぞ」

 異臭が染み付いた紙を手渡す。

 「これは、日記かなにかでしょうか」

 言われてみれば、薄汚れた紙の文字は手書きだ。よほど慌てていたのか、途中から筆記体が殴り書きになっている。
 レベッカがじっくりとその文書を読む。顔には何故か嬉しそうな笑みが浮かんでいた。

 「どうしたんだ?」

 惨劇を見たせいで、ついに頭が狂ってしまったのかもしれないと思いつつ、解読中の彼女に話し掛けた。

 「……表情に出ていましたか」

 手紙を畳んで地面へと置き、顔を上げる。

 「手掛かりが、今の文書にありました」
 「という事は……」
 「ええ、鏡を奪還できる可能性がでてきました」
 「それはどこにあるんだ?」
 「場所は示されていませんが、強奪品があるとされている場所がいくつか書かれていました」
 「何個ある?」
 「3つです。1つはこの近くにある野営地です。2つ目は少し離れた地点にある武器保管庫で、最後は奴らが根城としている財宝保管庫ですね」

 最後のやつだけ強者感が凄い。

 「最も可能性があるのは財宝保管庫ですが、念のため前者の2つにも行ってみましょう」
 「い、行くって今からかよ?」
 「そうですが何か?」

 寝不足も相まってか既に疲れているため、本音はここから動きたくない。
 俺の体力が少ないだけなのか、この騎士の体力が常人よりも多いのか、よく分からないな。
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