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二章 異世界ライフ

78話 この集団、ヤバすぎる

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 中佐に辱めを受けたクレアをレベッカと共に俺の自宅まで運び、体が汚れていた上酷い臭いだったので入浴させたあと、リビングで世間話をしていた。雑談の理由は未だ体が震えているクレアを落ち着かせるためだ。

 「でな~この女騎士ったら騎士の癖に銃なんかにハマっててさ~」
 「いやいや、それは貴方が勧めてきたのでは~」

 こんな感じに2人で何とか明るい空気を築こうとしているが、依然としてクレアの顔は曇ったままだ。一応、微笑みつつ小さく頷いてくれてはいるが。
 向こうには聞こえないように、コソコソと話し出す。

 「困ったな……」
 「そうですね……無闇に外に出しても、また見つかるかもしれません」

 もしもクレアがまた例の中佐に捕まってしまったら、今度は性的虐待よりも恐ろしい暴虐が加えられるだろう。
 クレアを助けたのはいいがこれからどうしようとかと悩んでいると、突然玄関の扉が強い力でノックされた。
 何度も、何度も、扉が叩かれ、その度に悲鳴を上げる。
 これは危険だと、机に置いてあったガバメントを手に取ってレベッカとクレアへ顔を向けた。

 「いいか、絶対に動くなよ。俺が見に行ってやるから」

 俺が掛けた言葉に、2人は無言で首を縦に振った。
 足音をなるべく立てず、銃を握る手に力を込めながら殴打される音が響く玄関へと足を進ませる。
 扉の前に張り付くと、銃を片手に持ち替え、もう片方の手をドアノブに添えた。
 強烈なノックは収まらず、今にもドアが木端微塵になりそうだ。
 息と唾を呑み込むと、ノックする人物を無視して扉を強引に前へ押し開ける。

 「誰だ! ここは俺の家……え?」

 眼前には、迷彩服を着た自動小銃を持つ屈強な男達が綺麗に整列。
 幽霊や妖怪のような、見てはいけない存在を見てしまった気がした。

 「すみませんでした~多分、人違いかと……」

 アハハ、と苦笑しながら扉を閉めて逃げようとするが、

 「待った、お前とは話がある」

 ターバンを頭に巻き付け、眼鏡を掛けた40代前半ぐらいの男がこちらの顔を覗き込む。右の頬には一線の古傷が走っており、未知なる威圧を感じ取った。

 「は、はいいいぃぃいい!?」

 これ、マジで処刑されるんじゃないかと、俺は情けない悲鳴を木霊させた。
 しかしその間抜けな叫び声を響かせたのが良かったのか、もはや俺の相棒になりつつあるレベッカが駆け付けて来た。手にはいつもの剣……ではなく、すっかりお気に入りのスコーピオンを持っており、銃口を迷彩服の集団に向けている。

 「何だお前達は! この子に手を出すのは許さないぞ!」

 武装した集団を怒気の籠った声で威嚇している。旅行の時とか銃を贈呈した時とかは可愛いと思っていたが、やはりこういった非常時は世界中のどんな軍人よりも勇ましく見える。
 レベッカが来てひとまず安心していると、騒々しい足音が響き渡った。

 「何なんだよ?」

 音に気を取られて背後を振り向けば、さっきまで絶望の雰囲気を漂わせていたクレアが、爽快な笑顔でターバン姿の男に一直線に駆け抜けて行っているではないか。
 そういえば、この人にはヒズベラの恋人が居るとか言っていたような……いやまさか、気のせいだよな?

 「ナイ―ム、わざわざ来てくれたの!?」
 「お前こそ、こんな所に居たのか?」

 ナイ―ムと呼んだ男に、クレアは抱きつく。
 しばらくの抱擁が続くと、ナイ―ムとかいう怪しさ満載のオッサンが俺とレベッカを世にも恐ろしい眼光で睨み付けて来た。

 「小僧と小娘よ、お前らが俺の大切な人を……?」

 低音の声には、明らかな殺意が。

 「いやいやちちちち違いますぅ!」

 あんなに強気だったレベッカはすっかり威勢が衰え、安定しない口調で返答している。

 「そそそそうでございます!」

 かくいう俺も、震え切った声を出す。

 「本当に? 嘘はいけないぞ。答え次第では、処刑ではなく拷問で済ませるつもりなんだが」

 処刑は一瞬で死ねるが、拷問は永遠の苦痛を与えられ続ける。後者の方が圧倒的に嫌だ。当然処刑もだが。

 戦闘員らが所有する自動小銃の冷たさを彷彿とさせる銃口が一斉に俺達の方へと向けられる。
 俺は確固たる「死」を感じ、レベッカの表情にも同じものが張り付いていた。

 勘違いで殺される事になるとは……心の底から湧き上がる無念を体感していると、クレアが慌てた様子で保護されていた事をオッサンに話し始めた。

 「ま、待って――――ナイ―ム、私は中佐に暴行されて逃げて、途中でこの人達が助けてくれたの」
 「む、そうか」

 発言の意図を疑っているのか、俺、レベッカ、クレアの瞳をそれぞれまじまじと眺めるナイ―ム。
 数分経過し、彼がクレアの発言を信じる。

 「確かに、嘘は付いていないな。疑って申し訳ない」

 ナイ―ムが穏やかな声色と態度で謝罪を示す。

 「べ、別に大丈夫ですよ」

 ふう、助かったと――――レベッカと共に安堵の表情を浮かべる。
 すると、ナイ―ムがクレアに顔を向けた。

 「誤解だった事は分かったが、暴行とは……?」
 「その……婚約者の国防軍中佐に」
 「ああ、アイツか……」

 悪徳中佐の存在はナイ―ムも認知しているようだ。
 視線を今度はクレアから俺の方に移す。

 「坊ちゃん、悪いが、少し家に邪魔させてくれないか?」
 「いいですけど……」
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