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二章 異世界ライフ

106話 プレゼント

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 ダンジョン探索から一日が過ぎ去り、一時解雇を受けていたレベッカは無事に元の職業である騎士に戻れた。
 それだけでももちろんめでたいが、今日はもっと喜ばしい日だ。そう、今日でレベッカは20歳の誕生日を迎える。本人はおばさんになってしまうとかなり落ち込んでいたが、表情がいつもより緩和していたのも事実だ。
 という事で何かプレゼントを贈ろうと、俺は帝都の雑貨屋に訪れている。

 「何しよっかなー」

 アイツとの付き合いは割と長くなってきているが、趣味はよく分からない。まあ一応女の人だし、香水とか化粧とか、可愛らしいぬいぐるみを与えれば喜ぶかも。

 「うーむ、悩むなぁ」

 香水売り場に足を運んだのはいいが、値段も香りもバラバラでどれが彼女に相応しいのか全く判断できない。安物を買うのもよくないし、かといってあまりに高額過ぎる香水は俺の財力的に厳しい。
 苦悩に頭を支配されていると、昨日何度も聞いたあの声が耳に流れて来た。

 「あっ、セル坊――――こんな所で何してるの?」
 「げ、お前かよ」

 今は1人がいいんだと、アヴァカンの元を立ち去ろうとしてみるが――――

 「ちょ、ちょっと、何で逃げるのー!?」

 早歩きで移動したが現役軍人の彼女には敵わず、あっさりと捕縛されてしまった。

 「……悪いな。でも俺、プレゼント探してるから、付き合うだけで時間の無駄さ」

 右腕に絡み付く彼女の細いが筋肉の付いた手を引き離すと、アテもなく歩き始める。

 「ま、待ってよ! 私も手伝うから!」
 「手伝うって言っても――――というかアヴァカン、仕事は? サボりか?」
 「サボりじゃない! 友達がインフルエンザになったから看病しようと有給使って薬買いに来たの」
 「薬だって? それなら薬局に行けよ。ここは雑貨屋だぞ」
 「いや、薬はもう買ったんだけどどうせだしちょっと来てみたの」
 「そんな事してたら友達死ぬんじゃねえのか?」
 「多分大丈夫よ。友達はオークなんだけど体が凄い丈夫で、杭が心臓に刺さった事があるけど4日で完治したんだよ」

 やはり、流石は異世界だ。普通、杭なんていう巨大な釘のようなものが刺さったら即死だろうに短期間で治るとは。というかこれならもう薬はいらないんじゃ……?

 「そ、そうか、ははは……」

 反応に困り、とりあえず苦笑で応じる。

 「それでプレゼントとか言ってたけど誰の?」
 「ああ、そのプレゼントは――――ちょっと待った」

 アヴァカンにプレゼントを贈る相手の名前を言ったら面倒な事になりそうだと思い、口ごもる。

 「どうしたの?」

 きょとんとした顔で見つめられる。
 適当な嘘で誤魔化すか正直に白状するかで葛藤を極める。
 だがアヴァカンに嘘をついたところで見抜かれるだろうと思ったので、本当の事情を話した。
 「実はな……今日、レベッカの誕生日なんだ。それで買いに来た――――っておい、何だよその顔は」
 眼前のアヴァカンはニヤニヤとした笑みをこちらに向けていた。

 「あ、セル坊とレベッカって……もしかしてアベック?」
 「そんな訳ないわ! ただ、世話になってるからプレゼントやりたくて」
 「友達か……つまんなーい」

 つまらんとは失礼な。この女は一体何を期待しているのやら……。

 「で、プレゼントについてだけど……」

 考え込む様子を見せる。

 「分かるのか?」
 「え、分からないよ」
 「分からんのかーい!」

 関西人特有のツッコミをぶち込む。

 「だけど、欲しいプレゼントを特定する方法を思い付いたの」」
 「どんな方法だ?」

 何だか、奇想天外な方法を提案してきそうだ。

 「ズバリ、潜入作戦よ」

 内容はあまり理解できないが、その言葉からは中々危ない臭いが漂う。

 「どこに潜入するんだよ?」
 「レベッカの職場だよ。そうすれば、何か手掛かりを手に入れられるかもしれないでしょ?」

 確かに彼女の言う手段ならどんなプレゼントを求めているか情報をキャッチできるだろう。しかしこの行為はあまりに危険で、法律にも反する事だ。
 だから別の方法で望みのプレゼントを特定しないかと提案しかけたが、

 「そうと決まれば早速行くよっ!」
 「はあー、全くもう……」

 抵抗したところで無理やり連れて行かれるだろうと、俺は諦めて渋々彼女の後を追った。
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