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二章 異世界ライフ

118話 中東オールスターズ

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 指導者フセインとの対談が終わったあと、俺達はペルシャで隠居するための住居をカセムとザッハールに紹介された訳なのだが……

 「これ、王様が住むやつじゃん!」

 二人の人間が暮らすにはあまりにも大きく、華美であった。

 「感謝しろよ、これは指導者の別荘の内の一つなんだからな」
 「べ、別荘って、本当に大丈夫なのでしょうか?」

 レベッカは困惑した表情で質問する。

 「大丈夫よ、何せこの別荘はもう使われてないからね」

 と、ザッハールがライフルをいじりながら言った。

 「それじゃあ俺達は屋敷の外警備しておくから、セルゲイとレベッカは早速くつろいでくれ」
 「何かあったらすぐ駆け付けるわ」

 庭で一度別れると、どこか重たい足を動かして別荘へとお邪魔した。
 別荘中央にあるリビングへ向かうと高品質な素材でなされたソファに寝転がった。

 「ペルシャ、すげーな……」
 「そうですね……まさか帝国にこんな所があったとは……」

 レベッカは荷物を整理しながら返答する。

 「それにしてもこの異世界、ヤバいの多すぎだろ……イラン軍も居るしヒズベラやラマス、挙句の果てにはイスラエルだって居る。もうシリア軍も出て来るんじゃないか?」
 「シリア軍、ですか」
 「知ってるのか?」
 「知っているといいますか、シリアの転移者と接触した事があります」
 「マジで!?」

 衝撃的な体験を耳にした俺はソファから飛び上がる。

 「確かあれは数か月前の事でした……」

 こうして、シリア兵と姫騎士による遭遇した経験談が始まった。
 今から三か月程前、彼女は新人の部下を連れて森で魔獣殺害の訓練を指導していたらしいのだが、突然閃光が降り掛かり、そこから数百人以上のシリア兵が出現したそうなのだ。

 「本当に心臓が止まるかと思いましたよ。部下の子達も相当怯えていました」

 まあ、そりゃそうだろうな。甲冑着た騎士が中東の軍人を見れば怖がる事は確実だ。

 「それでそのシリア兵はどこに居るんだ?」
 「帝都にも何人か居ますが、ほとんどは――――シリア民主連邦で生活しています」

 また変な国名が出たよ……これも未承認国家か?

 「もうお察しでしょうが、こちらも未承認国家とされていますね」

 やっぱりか。
 呆れるのはいいとして、その国はどこにあって、どんな場所なのだろうか。

 「シリア民主連邦は――――ここから恐らくかなり近い筈です。場所としてはペルシャの下側、つまり南です」
 「南部にあるのか……」
 「そしてそこにはシリア軍だけではなく」
 「え、まだ何か居るの?」
 「私もあまり詳しくはありませんが、イエメンという国のアスラム教武装組織『フーセ』がそこで活動しており、その組織もまた独自の自治区を持っているそうです」

 フーセも転移して来ているのは非常に危険だ。フーセはレベッカの説明通りイエメンで活動を行うアスラム教の反政府組織なのだが、これがまたヒズベラ並みに軍事力が高い。テロ組織といえばどんなに強くてもせいぜい戦車ぐらいしか持っていない。しかしフーセは短距離弾道ミサイルを保有し、実際にサウジアラビアやイスラエルに発射した事がある。紅海を運航する艦船もよく拿捕しているので、あまり近付きたくはない印象だ。だが逆をいえば、フーセを味方に置けば多大な力を手に入れる事ができる。だから困った時は……頼るかもしれない。

 「明日、シリアに行ってみますか?」
 「そうだな、暇だし、一緒に行くか」

 フーセが転移しているため本音はそれ程行きたくなかったが、かといって断っていい雰囲気でもないので、勢いで誘いに乗ってしまった。
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