異世界に飛ばされた俺は最強だけどクーデレの可愛い姫騎士に拾われて嫁にすることを決めたが、結婚どころか恋愛すら厳しそうな件

三章 異世界verの中東戦争

119話 肉百足という男

　夕方頃、ペルシャの最高指導者から与えられた豪邸のベランダで俺とレベッカは護衛の最強兵士らと共に晩酌を楽しんでいた。
　食事のメニューはアラブの料理……ではなく何故か初めて口にする和食だ。この食材達はカセムが持って来たのだが、何でも転移者の狂暴な日本兵から貰ったそうだ。その日本兵がとても気になるが、今は夕飯を楽しもう。

　「それでさ、その日本兵の名前は？」

　白米で固められた日本の代表的な食べ物ことおにぎりを齧りながらカセムに問いただす。

　「いや、本名は分からないんだよ。ただアイツは身長１８７センチ、体重９８キロあるって自称してたさ」

　カセムはうどんを啜りつつ答えた。

　「ただ――――」

　食べ終わったのか、うどんが入っていた容器を折り畳みテーブルにそっと置く。

　「あの日本兵、周りの人間からは『肉百足』とか呼ばれてたな。確かに毒虫みたいな雰囲気はあったぞ」
　「肉百足、か……」

　ニックネームだという事は理解できるが、酷い名称だ。そういえばその肉百足とやらは身長１８０センチを超えているみたいだが、当時の日本人の平均身長からするとかなりの超身長、いや巨漢だ。

　「それ、どんな転移者なのかしら……」

　マークスマンを務めるザッハールが表情を歪めて顎に手を添える。

　「ああ、かなり恐ろしい奴だったぞ、見た目はな」

　カセムは一度酒の溜まったグラスを傾けると、食材を提供してくれた日本兵の情報を話し始めた。

　「肉百足――――奴は、戦った事はないが、怪物そのものだ。何を考えてるのかも分からないし、何より目が怖いんだ」
　「目、ですか？」

　皆より一足先に食事を終えたレベッカが口を開ける。

　「奴の目、人のそれじゃないんだ。まるで、獲物を狙うムカデのような……とにかく、あまり会いたくはないな。周りの仲間らも怯えてたし」

　よほど嫌な出来事だったのか、彼は頭を振りながら酒を勢いよく口内へと流し込んでいった。