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三章 異世界verの中東戦争

163話 怪物の終焉

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 サタンの体が膨張し、華やかな軍服が散り散りに。
 爪は鷹のような鋭く太いものに、眼球の色は碧から緑一色に変貌。
 体格も人間とは遠くかけ離れた巨体へと姿を遂げる。

 「……巨人かよ」

 小さく、自然に呟く。
 いや、巨人という表現よりも怪物が適切だ。巨人は体躯こそ大きいが人の形は保っている。だがサタンの風貌は――――それこそ魔獣だ。肌は深い緑色に変色し、筋肉質な肉体だ。爪も一度でも当たれば致命傷になり得る程、鋭利である。

 「こっちに寄るな!」

 サタンの頭部目掛けて鉛玉をぶつけるが、それらは全て跳ね返される。

 「ハンドガンじゃ無理か……!」

 ガバメントでの攻撃を諦めアサルトライフルに持ち替えようとすると、怪物となったサタンが猛突進を繰り出した。
 奴が眼前に迫った瞬間、何とか避けられたが凶悪な爪でガバメントが弾き飛ばされてしまった。

 「俺の銃に……! くそっ」

 ライフルを構えセイフティを解除すると怪物に乱射。
 小銃の弾はハンドガンとは比べ物にならないぐらい強力なので少しは怯むだろうと思ったが、

 「無理か……」

 銃弾は強靭な肉体に吸収される。
 そしてサタンは奇声を吐き上げながら走り回る。もう理性も正気も何もかもを失ったようだ。
 こんな状態でこそ真正面から戦うべきではないと、最後のスモークグレネードを奴の前に投げ付ける。態勢を整え、絶好の瞬間を見計らい、死に至らしめる必要がある。
 一筋縄ではいかなさそうだが、奴を今ここで殺しておかなければ街へ解き放たれ、大惨事になるだろう。
 だから絶対に逃げることはできない。
 白煙が展開している間に大量に積まれた木材へと退避。木が古いので廃材置き場みたいな所だと思う。
 木材の端から顔を少し覗かせると、サタンが暴れながら俺を探していた。魔獣の体液を注いだことにより力や速度は強化されたようだが、代わりに視力が低下したみたいだ。

 「にしても、どう倒すか……」

 銃弾が効かない、俺にとっては最も不都合なことだ。
 プレートキャリアはいじるが手榴弾はない。

 「チッ、対戦車ミサイルでもあれば一発で……」

 ああ、イライラする。
 そんな風に不満を漏らしているとポーチから一つの瓶が落ちた。

 「硫酸か……」

 瓶を取って呟く。
 この硫酸をどうにかして奴にぶっ掛ければ俺に勝機が舞い降りるかもしれない。
 そう思い付くと、それからの行動は早かった。

 「こっちだ怪物野郎!」

 サタンの前に飛び出て両手を振りながら変顔したり中指立てたりして挑発。

 「GUAAAAAAA!」

 怒り狂った怪物は咆哮を響かせ、爪をこちらに向けて突っ込む。

 「お前の冷静さはどこ行ったんだ? 単細胞!」

 だがこれは想定内……というか、こうなってくれないと困るのだ。
 蓋をナイフで剥がすと、硫酸がたっぷりと詰まった瓶を直線上に駆けるサタンの顔面に浴びせた。
 強酸性の液体を正面から被った彼は悶絶し、爪で顔を掻きむしる。
 醜悪だった顔は酸で爛れ、より恐ろしく。だが怯えてはならない。トドメは、これからだ。
 地面でのたうち回り苦しむサタンの背後を奪うと、首にライフルを乱射する。

 「これでも厳しいかぁっ!」

 弾はやはり通らず、ライフルの弾は尽きた。
 痛みが引いたのかサタンが立ち上がって振り向き、睨む。
 皮膚は酸で溶かされ、瞼は他の肉と合体している。視界はもう見えないはずだ。

 「これ、使うか」

 ザッハールから貰ったもう一つの拳銃――――Ⅿ92Fを引き抜き、すぐさまマガジンを挿そうとするとそれに赤い文字で何かが記されていた。

 「……強装弾か。コイツは助かるな」

 小さく微笑むと、マガジンを銃に押し込みスライドを引いた。

 「じゃあな、サタン。ここで安らかにな」

 トリガーは、とても軽かった。
 腕に衝撃が加わると同時に、サタンの額に三つの穴が。

 「…………」

 寸前のところで奴は停止し、しばらくして工場の冷たい地面に崩れ伏した。
 指一本すら動かないサタンの亡骸を見下ろす。

 「感謝しなよサタン、お前も相当無理してただろ」 

 屍に、そんな言葉を送った。
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