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第18話 区切りをつけたい
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レオンと両思いであった……という事実は私にとってはとても照れくさいものでしたが、今はとても幸せです。
婚約についてはまだ正式な書面で解消されていないため、レオンと実際に婚約できるのはまだ相当先になるのでしょう。
やはり対外的にも、間を空けなければいけませんから。
(今にして思えば、私は殿下と婚約したからには殿下を愛し尽くさねばならないと思っていたのよね)
それはある意味で、政略結婚をする身としては正しいと今でも思っています。
その上で私は相手と信頼と、愛情を築いていけたなら……そう願っていたのです。
ただ未熟というよりもただの子供であった私にとって、それはいっそ盲目的とも言えるものだったのでしょう。
良い婚約者、良い王子妃、そしていずれは良い王妃にならねばならない。
その考えにばかり囚われていたような気もします。
(殿下のできないところをできるように、補佐としての役割を強く担うべきだと……それはもう、思いやりでもなんでもなかったんだわ)
アトキンス嬢のように朗らかに、殿下個人を肯定し支え合っていけるよう……そんな思いやりがきっと必要だったのです。
勿論、国政を将来担う者として切磋琢磨していかねばならないことも事実ですが。
まあ、私が殿下と交流を持とうにも最初から嫌われていたような気もするので……それも意固地になった部分もあったと思います。
私も幼かったのです。反省はしていますが……それをこの年齢まで引きずっているのですから、笑ってしまいますね。
(そういえば、なんであんなに嫌われていたのかしら)
王妃様には『照れているのよ』と言われたのでそれを信じていましたが……思い返してみると、出会い頭から嫌われていたような。
(どうして忘れていたのかしら)
本当に未熟で嫌になってしまうわね。
謝罪したい気持ちもありますが、何に対しての謝罪かと問われたら……どうしましょう。
思いやりを持てなくて申し訳ございませんでした、では馬鹿にしているようだし……。
寄り添えなかったこと? でもそれはお互い様だという話かもしれませんし。
今更何を言っても、言われても、お互いに受け入れられるほど私たちは成熟していないのかなと思います。
いずれにせよ、殿下と私の婚約はなくなることは確定しているのですから、お互いに伴侶を大切にして幸せになれたらと願うばかりです。
「そのためには早く王城で婚約の件をはっきりと終えたいのだけれど、いつになるのかしら……」
「あの件から一週間経っているのに音沙汰なしですからね」
レオンは相変わらず、そのせいで〝専属の護衛騎士〟という立場のままですからね。
多少なりとも不満は覚えているようですが……それでもお父様が内密に、伴侶として何をどう支えていくかなどの心構えや内容を教え始めているようなのでまだそこまで不満も大きくないようです。
レオンのお母様にはすでにご挨拶をいたしました。
大層喜んでくださって、私も嬉しくなったものです。
(……それでも、何が起こるかわからないものね)
油断はしてはならないでしょう。
私もレオンと両思いになったのだから、少しくらいは逢瀬を楽しむとかそういうこともしてみたいし、今後領地に対してどのような展望を抱くか語り合いたいものですけれど。
そういったことは、何もかもが落ち着いてから、ですね。
「ロレッタ」
「お父様」
「待たせたな、王城から使いが来た。明後日の正午、陛下がお呼びだ」
「かしこまりました」
お父様が手に持つのは、美しい白い封筒。
そしてそこには王家の印がきざまれています。
私はそれに向かって、小さくお辞儀をしたのでした。
婚約についてはまだ正式な書面で解消されていないため、レオンと実際に婚約できるのはまだ相当先になるのでしょう。
やはり対外的にも、間を空けなければいけませんから。
(今にして思えば、私は殿下と婚約したからには殿下を愛し尽くさねばならないと思っていたのよね)
それはある意味で、政略結婚をする身としては正しいと今でも思っています。
その上で私は相手と信頼と、愛情を築いていけたなら……そう願っていたのです。
ただ未熟というよりもただの子供であった私にとって、それはいっそ盲目的とも言えるものだったのでしょう。
良い婚約者、良い王子妃、そしていずれは良い王妃にならねばならない。
その考えにばかり囚われていたような気もします。
(殿下のできないところをできるように、補佐としての役割を強く担うべきだと……それはもう、思いやりでもなんでもなかったんだわ)
アトキンス嬢のように朗らかに、殿下個人を肯定し支え合っていけるよう……そんな思いやりがきっと必要だったのです。
勿論、国政を将来担う者として切磋琢磨していかねばならないことも事実ですが。
まあ、私が殿下と交流を持とうにも最初から嫌われていたような気もするので……それも意固地になった部分もあったと思います。
私も幼かったのです。反省はしていますが……それをこの年齢まで引きずっているのですから、笑ってしまいますね。
(そういえば、なんであんなに嫌われていたのかしら)
王妃様には『照れているのよ』と言われたのでそれを信じていましたが……思い返してみると、出会い頭から嫌われていたような。
(どうして忘れていたのかしら)
本当に未熟で嫌になってしまうわね。
謝罪したい気持ちもありますが、何に対しての謝罪かと問われたら……どうしましょう。
思いやりを持てなくて申し訳ございませんでした、では馬鹿にしているようだし……。
寄り添えなかったこと? でもそれはお互い様だという話かもしれませんし。
今更何を言っても、言われても、お互いに受け入れられるほど私たちは成熟していないのかなと思います。
いずれにせよ、殿下と私の婚約はなくなることは確定しているのですから、お互いに伴侶を大切にして幸せになれたらと願うばかりです。
「そのためには早く王城で婚約の件をはっきりと終えたいのだけれど、いつになるのかしら……」
「あの件から一週間経っているのに音沙汰なしですからね」
レオンは相変わらず、そのせいで〝専属の護衛騎士〟という立場のままですからね。
多少なりとも不満は覚えているようですが……それでもお父様が内密に、伴侶として何をどう支えていくかなどの心構えや内容を教え始めているようなのでまだそこまで不満も大きくないようです。
レオンのお母様にはすでにご挨拶をいたしました。
大層喜んでくださって、私も嬉しくなったものです。
(……それでも、何が起こるかわからないものね)
油断はしてはならないでしょう。
私もレオンと両思いになったのだから、少しくらいは逢瀬を楽しむとかそういうこともしてみたいし、今後領地に対してどのような展望を抱くか語り合いたいものですけれど。
そういったことは、何もかもが落ち着いてから、ですね。
「ロレッタ」
「お父様」
「待たせたな、王城から使いが来た。明後日の正午、陛下がお呼びだ」
「かしこまりました」
お父様が手に持つのは、美しい白い封筒。
そしてそこには王家の印がきざまれています。
私はそれに向かって、小さくお辞儀をしたのでした。
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