妻が女神になりまして!?~異世界転移から始まる、なんちゃってスローライフ~

玉響なつめ

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いざ! 第一村人発見からの信者獲得大作戦!!

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「よく来てくださいました! ずっとお礼が言いたかったんです。行商に来ておられると知っていたらすぐに行ったんですが……」

「い、いえいえ。こちらこそなんだか済みません、あの後どうしたかなーって気になりまして……」

「それが! 聞いてくださいよ!」

 よくぞ聞いてくれたと言わんばかりにリチャードが目を輝かせる横で、マーサが温かい飲み物を入れてやってくる。
 彼女の顔色はとても良く、心なしか以前会った時よりも明るい雰囲気になっていた。
 そして何より、ヨシヤの目にはハッキリと見えていたのだ。

 逆子が治り、双子の胎児はすくすくと成長している……その姿が。

(良かった)

 思わずほっとして笑みを零したヨシヤに、リチャードが怪訝そうな顔をする。
 そんな夫の様子に苦笑したマーサが、彼の行動を諫めるかのように肩を叩いた。

「すみません、ヨシヤさん。この人ったら、私の体調が良くなってからずっとこの調子で……実は、あのお祈りをした後からとても体調が良くなって、村の産婆さんからも元気に生まれてくるだろうって太鼓判を押していただいたんです」

「そうなんですよね、良かった……! 本当に、良かった……!!」
 
 ヨシヤはこの世界での産婆がどんなものか知らない。
 元の世界にいる時でも、産婆という存在は名称だけ知っていたけれど一般的には病院で産むという地域で暮らしていたこともあり、どのくらい頼りになるかは全くわからなかったが、それでも『元気に生まれてくる』と第三者からも言われたことがなによりも嬉しかったのだ。

 喜びを露わにするヨシヤに、マーサが照れくさそうに、それでもどこか誇らしげに笑った。

「……実は、大きな町で暮らしていた時、子供か私の体調かを選んだ方がいいと医師に言われていたんです。それでも生みたくて、こちらの村で暮らすことにしていたんですけれど……」

「産婆さんにも、お腹の子はあまり元気がなさそうだって言われていて、その上マーサも段々と伏せるようになってしまい、正直……ヨシヤさんとお会いした時は、途方に暮れていた頃だったんです」

「そうだったんですね……」

 その頃を思い出したのだろう、マーサが少し悲しげに目を伏せて、大きなお腹をそっと撫でる。だがその悲しげな表情もすぐに笑顔になった。

「なのにヨシヤさんにお祈りをしていただいて、あのお声を聞いたらもう元気になったんです! 本当に……なんて感謝をしたらいいのか、わかりません」

「いえ、そんな……俺の方こそ、押しかけてお祈りをするとか相当胡散臭いことをしてしまったのに、こうして温かく出迎えてもらえただけで」

「ヨシヤさんは我々夫婦の救いの主です。勿論、ブロッサム様にも感謝の祈りを捧げたいと思うんですが……そのことで」

 リチャードとマーサが寄り添い晴れやかな笑みを見せた後、困惑した様子を見せる。
 それにヨシヤも首を傾げると、彼らは顔を見合わせてから、そっと言葉を選ぶように口を開いた。

「その……祈りたくても、ご神体はヨシヤさんがお持ちで、この間のお話から推察するに、まだ世に知られていない女神様であられるようで……」

「あ、ああー! そうですね、そういうことでしたか!」

 ヨシヤは慌ててご神体の宝石を取り出した。
 それを危なっかしい手つきでテーブルに置くと、夫妻はほっとしたような笑みを浮かべ、その石に向かって目を瞑り一心に祈りを捧げている。

 その間にヨシヤはどうしたものかと袋の中を確認するべく口を開いたところでにょきっと巨大な蟻の頭部がほんの僅か出てきた。

「……っ、……! ……!!」

 ヨシヤが必死に悲鳴を飲み込んだところを見て、蟻は首を傾げているがヨシヤを確認してから一度引っ込み、そしてポポイといくつかの欠片がヨシヤの手に放り投げられる。
 そして自動的にしまった袋の口を見て唖然としつつ、手のひらに視線を落とせばそこにはご神体と同じ輝きを持つ、大人の小指ほどのサイズの像があるではないか。
 いや、これを像と呼ぶべきかはヨシヤには判断できない。見ようによってはなにかの像に見える……かもしれない、そのレベルだ。

(……もしかして会話を聞いて、慌ててハナが用意してくれたのか?)

 ハナは大変出来た妻であるが、物作りに関しては少々難がある。
 学生時代の美術に関しては聞いてくれるなと遠い目をしていたのは懐かしい思い出だ。

 となると、石を削っただけでそれっぽく見えたからこれでいいだろうという結論に至ったのでは……とヨシヤは推測する。
 だが、それもこれもリチャードとマーサのために急いで準備したのだと思うと微笑ましい。

「あの、リチャードさん、マーサさん。よろしければ、これを……」

「……これは?」

「え、ええと……実は、ブロッサム様を祈ってくださる人が増えたらいいなあと思って、手慰みに作ってみたものなんですが、あの、正直、像とかは作ったことがなくてですね……そのご神体を見つけた場所で見つけた石で作ったんです」

「まあ! ありがとうございます……これでいつでもお祈り出来ますね!」

「元気な赤ちゃんが生まれるといいですねえ。あの、こうしてまた……行商の折に伺っても?」

「勿論です、ヨシヤさんなら大歓迎ですよ!」

 信者獲得、大成功の瞬間であった。
 それも一挙に二人である。
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