妻が女神になりまして!?~異世界転移から始まる、なんちゃってスローライフ~

玉響なつめ

文字の大きさ
21 / 71
いざ! 第一村人発見からの信者獲得大作戦!!

20

しおりを挟む
 こうして信者を二人獲得して神域に戻ったヨシヤが目にしたもの。
 それは……巨大な蟻とお茶をする妻の姿だった。

「え、あ、あっちゃん?」

 最近は巣穴に籠もってなかなか出てこないヨシヤの眷属である女王蟻の〝あっちゃん〟がテントの外で椅子を出して座るハナの横にまるで忠犬かのようにちょこんと伏せているのだ。
 思わず二度見してしまったがそれも致し方ない。

 あっちゃんはあっちゃんの方でヨシヤの姿を見て嬉しそうにその鋭いアゴをぎちぎちならしているが、正直ヨシヤからするとちょっぴり怖い。
 だがそう、彼は律儀な男である。

「や、やああっちゃん、久しぶりだね。元気だったかい?」

 一度飼うと決めたペットからは決して目を逸らさない。それが彼のポリシーである。
 眷属とペットは違うのだというツッコミはここには存在しないのであった。

「あ、像ありがとね」

「あれはあっちゃんが用意してくれたのよ。ほんとなんでも出来る子ねえ!」

「えっ、そうなの?」

 あっちゃんが褒めてと言わんばかりに前足を挙げる。
 ヨシヤはその様子に若干引け腰になりつつも、そっと頭を撫でてやった。
 そうすると嬉しそうにギチギチ音を鳴らしていたのでやっぱりヨシヤとしては怖くもあったが、精一杯引きつりながらも笑顔を浮かべて見せる。
 ハナはそんな夫の様子に心の中で応援しながらも、立ち上がる。

「ヨシヤさんが尽力してくれたおかげで、信者が二人出来たわ。そして、私の神としてのランクがまた上がったの!」

「えっ、もう!? この間上がったばかりじゃないか」

 慌ててヨシヤがステータスを確認してみると、成る程『眷属レベル』が上がっている。
 そんな夫の様子に、ハナは満面の笑みで歩み寄ると彼の手を取った。

「家を建てましょう!」

「……は?」

 それは唐突な発言のようにヨシヤには思えた。
 家を建てる。
 事もなげにそんなことを言い出す妻にヨシヤはなんと返したら良いのかわからず、目を瞬かせるばかりだ。

「ここに着いた時に言ったでしょう? 女神としてのランクが上がれば、聖域は私の土地だから自由に出来るんだって。ようやく家を建てられるだけの神力が得られたの! どうせだったらヨシヤさんと間取りとか話し合いたいなって思って待ってたのよ」

 にこにこと笑いながらフリーペーパーの住宅情報雑誌を握りしめているハナに、ヨシヤはふつふつとこみ上げてくる喜びを噛みしめていた。

 いつかは夢の一戸建て。
 庭があって、ちょっとした家庭菜園なんて作って、可愛いペットを飼って……そんな夢を語った日々が、今目の前にあるのだ!

 庭というかただただ広がる草原に、可愛いペット(?)の蟻たちはすでに手にしているのだから、あとはマイホームなのである。

 それが! とうとう! 叶うのだ!!

「書斎! 書斎がほしい! なんなら秘密の小部屋付きで!」

「うふふ、できるわよー」

 きゃっきゃと話し合う二人の横で、あっちゃんが『秘密の小部屋って二人でバラしてたら秘密じゃないんじゃない?』って感じで小首を傾げていたが、夫婦は気がつかなかった。
 あれこれと話し合い、さすがに電化製品は無理かなあと零したヨシヤにそれも神力が補うから大丈夫だと太鼓判を押したハナに「神様パワーすげえ!!」と驚いたり、まあ楽しげである。

 結果として夫婦の寝室があったり、よその神様が来た際におもてなしするため大きくとったリビングダイニングと客間があったり、ヨシヤの理想だった書斎(別に読書好きなわけではない)と秘密の小部屋があったり、ハナがやってみたかった大きな浴槽だったりを詰め込んだものを住宅情報誌のイメージに載せて、ついに彼らの城を手に入れたのであった!

「この調子で頑張ろうね、ヨシヤさん!」

「おう、こうやって夢が叶うのっていいな!」

「じゃあ次はなにかしら、やっぱり畑?」

「そうだなー、でも俺、虫がダメだからなあ」
 
「大丈夫よ、神域に虫はいないもの。作物も良く育つわよ?」

「えっ、そ、そう……?」

 どういう理屈だとヨシヤは疑問が浮かんだが、深くは考えないことにした。
 割り切ることは必要なことである。

「大丈夫よ、あっちゃんたちも手伝ってくれるんだから!」

「そ、そうかな……? あっちゃんたちに畑仕事出来るのか……?」

 作物をちょん切りそうだけど。
 そう言いかけて、ヨシヤは気がついた。
 蟻だけに、地面を掘るのは得意なのでは……そう考えれば、とても彼らは有能ではないか。

「あ、そういえば言い忘れてたんだけど」

「うん?」

「ヨシヤさんが出かけている間に散策に行きたいって蟻さんたちを外に出してあげたらお土産に死にかけの蜂さん連れてきて眷属にしてあげてほしいってお願いされたんだけれど、どうする?」

「そういうのは早く言おうね!?」
 
 傷の手当ては済んでるわよ、と夢のマイホームを出てテントに行った先でヨシヤは確かに見た。
 大体三十センチくらいの、包帯を巻かれた蜂が土下座をするという、珍しい光景に何度か目をこすって……どうしていいかわからなかったヨシヤもまた、深々とお辞儀を返すのであった。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

処理中です...