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おや? 神域の様子が……
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ヨシヤは目を泳がせた。
果たして真実を告げるべきなのか、ふわっと告げるべきなのか、避けるべきなのか!
「これは……その、決して責任を感じていただきたいわけではなく、事実として受け取っていただきたいんですが」
「ええ」
ヨシヤは少しだけ悩んだ後、決心した。
まず、マーサがどんな状況であったのか。
夫婦がどんな覚悟で、田舎へ移り住んだのかを話した。
確かにナタリーの過保護にはマーサも辟易していて、それがストレスとなっていたのも事実だろう。
だが彼女はとても理知的で、優しい女性だと短い付き合いながらもヨシヤは感じている。勿論妻の方がもっと優しいと思っているけれど、そこは胸の内だけだ。
「そんな……マーサが、そこまで悪かっただなんて! 私、知らなかった……!!」
「あの、誤解しないでいただきたいのですが、それは決してナタリーさんがどうこうではなく、妊婦というのは命をその身で育むため、危険がつきものであって……マーサさんが、その危険を負っていただけなんです。でも、リチャードさんもマーサさんも、子供を諦めなかった、その強さがあったんです」
正直に言えば、ヨシヤだって羨ましい。
愛する妻との間に子供が出来たら、どれほど嬉しいし幸せになれるだろう。
もし、自分が彼らと同じ境遇になったなら……赤ん坊のせいで妻も失うかもしれない、無事に生まれてこないかもしれない、きっと彼らと同じようにそんな恐怖と戦いながらも日々、あがいていたかもしれない。
「今はもう大丈夫ですし、大分お腹も大きくなって食欲も出ているみたいですし」
「そう……なんですね……よかった」
ほうっと息を吐き出しつつ気落ちをした表情のナタリーに、ヨシヤもそれ以上はなんと言っていいのか困惑したが何も思いつかなかったので黙った。
「しかし……手紙には、体調が良くなかったということは記されていました。それが妊娠によるリスクであることは我々も理解出来ますし、実を言うと我々も彼女たちのことを案じて方々手を尽くしたことがありまして……その折に、医師にかかっていたということも突き止めているのです」
「えっ」
なにそれこわい。
思わずそう口に出してしまいそうであったが、すんでの所でヨシヤはそれを飲み込んだ。
いくら重めの友情だったとしても、これはいささか重すぎる。
ストレスマッハだから探さないでくれとまで手紙を残されて、行き過ぎた友情だと自覚と反省をして尚、人を使って探していたとは……。
そこまで……とヨシヤは思わず顔が引きつるのを感じた。
そんな彼の様子を見て慌てたようにギャレッドが手を振る。
「あっ、いえ、見つけて追いかけようとか説得しようとは思っていませんでしたよ!? ただ、その、本当に暮らしに困っているようなら影ながら援助ですとか……」
「ええ……」
いやもうストーカーとそれ何が違うんだとヨシヤは思わずにいられなかったが、成る程、マーサが耐えきれなかった理由は十分伝わった気がする。
それでも彼らなりに接触はしないようにしようというのが反省点なのだろうか。
おそらくギャレッドはそこまでではないのだろうが、妻のナタリーがマーサ不足で気落ちしていることからやったことなのだろう。
とはいえ、ヨシヤからするとちょっぴり理解出来ないものがある。
ドン引きのヨシヤにギャレッドも少し思うところがあったのか、気まずそうに咳払いをして言葉を続けた。
「と、とにかく。マーサは確かに妊娠により障りが出ていたのでしょう、それも命に関わるほどであったことはヨシヤさんの言からも、医師に通っていたことからも窺えます。ですが、今はそれも大丈夫になったんですよね」
「はい」
ギャレッドの言葉に素直に頷いたヨシヤに、男はそれまでの柔和な表情を一転させ冷たい目でヨシヤを見つめる。
それに思わずビクッとしたヨシヤだが、それに反応するかのように腰の道具袋が僅かに動いて慌てて彼はそれを押さえ込んだ。
幸いその行動は目の前の夫妻には見えていなかったようだが、どうにも袋の中からは蟻たちの不満そうな気配が感じられてヨシヤからすると前門の虎後門の狼といったところだろうか。
いや、前門のヤンデレ後門の蟻が正しいかもしれないだなんて馬鹿なことを考える余裕は合った。
むしろ切羽詰まっていたからかもしれない。
「……ヨシヤさんのおかげで、とありましたね。ヨシヤさん、あなたは、何者なのですか」
果たして真実を告げるべきなのか、ふわっと告げるべきなのか、避けるべきなのか!
「これは……その、決して責任を感じていただきたいわけではなく、事実として受け取っていただきたいんですが」
「ええ」
ヨシヤは少しだけ悩んだ後、決心した。
まず、マーサがどんな状況であったのか。
夫婦がどんな覚悟で、田舎へ移り住んだのかを話した。
確かにナタリーの過保護にはマーサも辟易していて、それがストレスとなっていたのも事実だろう。
だが彼女はとても理知的で、優しい女性だと短い付き合いながらもヨシヤは感じている。勿論妻の方がもっと優しいと思っているけれど、そこは胸の内だけだ。
「そんな……マーサが、そこまで悪かっただなんて! 私、知らなかった……!!」
「あの、誤解しないでいただきたいのですが、それは決してナタリーさんがどうこうではなく、妊婦というのは命をその身で育むため、危険がつきものであって……マーサさんが、その危険を負っていただけなんです。でも、リチャードさんもマーサさんも、子供を諦めなかった、その強さがあったんです」
正直に言えば、ヨシヤだって羨ましい。
愛する妻との間に子供が出来たら、どれほど嬉しいし幸せになれるだろう。
もし、自分が彼らと同じ境遇になったなら……赤ん坊のせいで妻も失うかもしれない、無事に生まれてこないかもしれない、きっと彼らと同じようにそんな恐怖と戦いながらも日々、あがいていたかもしれない。
「今はもう大丈夫ですし、大分お腹も大きくなって食欲も出ているみたいですし」
「そう……なんですね……よかった」
ほうっと息を吐き出しつつ気落ちをした表情のナタリーに、ヨシヤもそれ以上はなんと言っていいのか困惑したが何も思いつかなかったので黙った。
「しかし……手紙には、体調が良くなかったということは記されていました。それが妊娠によるリスクであることは我々も理解出来ますし、実を言うと我々も彼女たちのことを案じて方々手を尽くしたことがありまして……その折に、医師にかかっていたということも突き止めているのです」
「えっ」
なにそれこわい。
思わずそう口に出してしまいそうであったが、すんでの所でヨシヤはそれを飲み込んだ。
いくら重めの友情だったとしても、これはいささか重すぎる。
ストレスマッハだから探さないでくれとまで手紙を残されて、行き過ぎた友情だと自覚と反省をして尚、人を使って探していたとは……。
そこまで……とヨシヤは思わず顔が引きつるのを感じた。
そんな彼の様子を見て慌てたようにギャレッドが手を振る。
「あっ、いえ、見つけて追いかけようとか説得しようとは思っていませんでしたよ!? ただ、その、本当に暮らしに困っているようなら影ながら援助ですとか……」
「ええ……」
いやもうストーカーとそれ何が違うんだとヨシヤは思わずにいられなかったが、成る程、マーサが耐えきれなかった理由は十分伝わった気がする。
それでも彼らなりに接触はしないようにしようというのが反省点なのだろうか。
おそらくギャレッドはそこまでではないのだろうが、妻のナタリーがマーサ不足で気落ちしていることからやったことなのだろう。
とはいえ、ヨシヤからするとちょっぴり理解出来ないものがある。
ドン引きのヨシヤにギャレッドも少し思うところがあったのか、気まずそうに咳払いをして言葉を続けた。
「と、とにかく。マーサは確かに妊娠により障りが出ていたのでしょう、それも命に関わるほどであったことはヨシヤさんの言からも、医師に通っていたことからも窺えます。ですが、今はそれも大丈夫になったんですよね」
「はい」
ギャレッドの言葉に素直に頷いたヨシヤに、男はそれまでの柔和な表情を一転させ冷たい目でヨシヤを見つめる。
それに思わずビクッとしたヨシヤだが、それに反応するかのように腰の道具袋が僅かに動いて慌てて彼はそれを押さえ込んだ。
幸いその行動は目の前の夫妻には見えていなかったようだが、どうにも袋の中からは蟻たちの不満そうな気配が感じられてヨシヤからすると前門の虎後門の狼といったところだろうか。
いや、前門のヤンデレ後門の蟻が正しいかもしれないだなんて馬鹿なことを考える余裕は合った。
むしろ切羽詰まっていたからかもしれない。
「……ヨシヤさんのおかげで、とありましたね。ヨシヤさん、あなたは、何者なのですか」
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