妻が女神になりまして!?~異世界転移から始まる、なんちゃってスローライフ~

玉響なつめ

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おや? 神域の様子が……

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「な、何者って……行商人ですよ、マーサさんからの手紙にも、そう記してあったでしょう?」

「そうですね、それを疑ってはおりません。マーサは、妻の大切な友人です」

 ギャレッドは頷いたが、視線はヨシヤに定められたままだ。
 その冷たさに嫌な汗が滲むのを感じても、ヨシヤは目を逸らすことができなかった。

 ここで逸らしたら殺される、そんな物騒な感覚があったからだ。
 野生動物を前にした時はこんな恐怖を覚えるのだろうか、ああ、そういえば最初の森で巨大なムカデと出会った時にもこんな感覚だったなあ。

 そんなことをぼんやりと考えていると、ナタリーが急に勢いよく立ち上がったかと思うとギャレッドの頬を思い切り引っぱたいた。

「えっ」

 驚いたヨシヤとギャレッドだが、ナタリーは肩を怒らせていて男たちはキュッと口を引き結ぶ。
 あ、これアカンやつ。
 そう本能が悟った。

「ギャレッド、あなたなんて態度を取るの!? マーサを救ってくださった恩人に向かって! マーサの恩人であるならば、私の恩人でもあるのよ!?」

(いやそれ、どういう理屈!?)

 助けてくれたことには感謝したいがぶっ飛びすぎている理屈にヨシヤは慄いた。
 叩かれたギャレッドの方は妻のためを思って不審人物が何者であるか問い質そうとしただけであるのに、なんとも情けない表情で慌てて妻に縋った。

(あ、そういえばこの人って婿さんなんだっけ……)

 異世界だろうと夫婦関係は色々である。
 こういう時は空気になったものだと思って何も聞かない、見ない、それに越したことはないのだとヨシヤは知っていた。
 なんなら、ご近所の老夫婦の夫婦喧嘩によく巻き込まれていたという経験則である。

 それから、一時間ほど経っただろうか。
 ヨシヤが『ハナとの思い出~出会いからあっちゃんに出会うまで~』を脳内でエンドレス再生している中、目の前の夫婦喧嘩がようやく収束したようであった。

「落ち着かれました?」

「はい……大変申し訳ありませんでした……」

 若干ギャレッドの顔が先ほどよりも腫れている気がするが、あえてヨシヤはそこには触れないで置いた。
 男同士だって触れてはならぬものを察知して気遣う行動、これこそ紳士の振る舞いなのだ。

「私が何者か、お話しするか考えたのですが……荒唐無稽と笑われてしまうやもしれません」

 ヨシヤは出来る限り神妙な面持ちを作って、そう切り出した。
 夫婦が顔を見合わせるのも無理はない、直前まで彼は誤魔化そうとしていたのだ。

 それをヨシヤは無視して、というか彼らが喧嘩中にハナと会話しただけなのだが……結果として話すことに決めたのだ。

「実は、私は神の啓示を受けた者です。ただ、世にあまり知られぬ神ゆえ、人に話すことは滅多にいたしません。私自身がこのようななり・・ですし、説得力に欠けますので……」

 ハハハと思わず乾いた笑いが出たが、そこは仕方がない。
 なんせ神の眷属だと名乗るには、自分の姿が野暮ったいとヨシヤ自身も承知しているのだ。

(いいんだ、こんな俺でもいいってハナは言ってくれるんだから……!)

 愛妻の言葉が彼を支えているのだ。
 それ以上のものなどあるはずもない。

「私にお声をくださった神は、妊娠を司る女神ブロッサム様。マーサさんの苦しみを見て、信じるかどうかを委ねた結果、彼女は女神を信じ、救われたのです」
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