妻が女神になりまして!?~異世界転移から始まる、なんちゃってスローライフ~

玉響なつめ

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家族(?)が増えました

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 結論から言えば、ハシビロコウは無事生まれた。
 コカトリスたちを母と慕い、ヨチヨチと歩む姿はなんとも愛らしい。
 既に貫禄のある顔をしているが、そこは生来のものなのだからと夫婦も気にしないことにした。

 とりあえず水辺に生きる鳥であるというテレビでの知識を元に、定期的に湖周辺で遊ばせているが……果たしてこのハシビロコウが普通のハシビロコウなのか?
 それが夫婦共通の疑問であった。
 正直なところをいえば神域の主であるハナが疑問に思うくらい彼女にとっても『神域』というのは未知の空間なのだ。
 蟻たちがいくら掘っても地下はいくらでもあるし、蜂たちがいくら遠くへ行っても端の見えない世界、それが神域なのだ。

 しかし今のところメイド服を着たコカトリスたちも、ハシビロコウも、蟻も元気なのだから考えるだけ無駄だろうとヨシヤは思う。

(これからもここにいる〝家族〟を守る一家の大黒柱として頑張らなくっちゃな!)

 ぐっとこぶしを握って、ヨシヤは神域の外へ出た。
 念のため、懐には例の仮面も持っている。

 なんと珍しいことに、大神様からの新人神へのミッションが再びハナのところに巡ってきたのである。
 どうやら他の新人神のところへ一度行ったクエストのようであるが、失敗したらしい。

 これを成功させれば、ハナの女神レベルも上がるしそうなれば神域に暮らすあの子たちが豊かな暮らしをするのに役に立つ。
 そう思えばヨシヤだって気合いも入ろうものなのだ!

 一家の大黒柱。
 それがヨシヤの大事な矜持だ。別に大黒柱という言葉に彼はなんの意味もないと思っているし、神域という土地を持っているのはハナなので実質妻が世帯主みたいなもんだろうと思っている節はある。

 それでも今、外に出て行動を起こせるのは夫である彼なのだ。
 ヨシヤが行動し、それが繁栄された結果がハナの功績となり神域に影響を与えると思えば身も引き締まる思いというやつである。

 ちなみに、ハナは自身が女神でありヨシヤがその眷属であると理解して尚、自分たちは同等の関係であり、変わらぬ夫婦であると考えている。
 彼女にとってヨシヤは女神の夫ではないのだ。
 ヨシヤはハナの夫なのだ。

 似たもの夫婦である。

「しかし、指定の場所に行って困っている者を助けろって……」

 ヨシヤは首を傾げた。
 指定されたのは、随分と寂れた宿場町を出た街道あたりだろうか?
 宿場町に足を踏み入れてみれば、商人らしい男たちが随分と暗い顔をしてヒソヒソと話をしていて、陰気な空気が漂っている。

(……なんだ……?)

 その雰囲気にびびりながら、ヨシヤも情報を集めるため行商人であることをアピールしながら近くの屋台に座って隣にいた男から話を聞いた。
 すると、どうやらこの先に切り立った崖があってそこの狭い道を通らないと次の町へ行けないのだが、そこを塞いでいるモンスターがいて誰も通れないのだという。
 大手の商人たちならば護衛の冒険者を雇っていることもあるので対処もしようがあるのだろうが、大きな街道から外れた寂れた町を利用する商人たちではそれも叶わない。

 彼らも自身を守りながら旅をする行商人である以上、多少腕に覚えはあるものの皆が声を揃えて言うのだ。

『アレは無理だ』

 ヨシヤはその話を耳にして、ゴクリと店主から渡された酒を飲み込む。
 粗悪品なのか、お世辞にも酒は美味しいとは言えない代物だった。

「行ってみればいいさ。近づかなきゃあ問題ねえ。だが俺は……あんな・・・モンスターに出会ったのは、初めてだ……なんか悪いことの起きる前触れじゃねえといいんだが……」

 ヨシヤは覚悟を決める。
 行かねばなるまい。行かねば始まらないのだ。

 きっと救えという大神のミッションは、これに違いない。
 困っている者を救え、それはきっと足止めをくらった行商人たちでもあるだろうし、そしてそんな彼らを待ちわびるこの先の土地の人々のことなのだろうとヨシヤは思う。

 彼は教えてもらったことに礼を言い、男の分まで酒代を置いてその崖まで行ってみた。

 軽いバリケードのようなものがあり、それを越えれば崖はすぐ目の前であった。
 そして、教わらずともそれがなんであるのかヨシヤもすぐに見つけることが出来たのである。

「う、えええええええええええええええええええええええええ!?」

 思わず。
 そう、思わずヨシヤは叫んでいた。

 だが周囲にいた、どうやら宿場町の人々なのだろう。
 それを見張るためにいたらしい彼らもヨシヤのように叫ぶ人間を見慣れているらしい。苦笑を浮かべただけで、疲れた顔をしていた。

 そう。

 ヨシヤの眼前にあるのは、馬車一台がギリギリ通れそうな細い道……に座り込んだ、巨大な蜘蛛の姿であった!
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