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家族(?)が増えました
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ヨシヤは、虫が嫌いである。足が多かったり、突然飛んできたり、気がついたら周囲を飛んでいたり……別にそれで害があったわけではない。
幼い頃、毛虫でかぶれたことはあるがそれだって恨んだりするものでもない。
そう、ただただ苦手なだけなのだ。
見るだけでぞわっとしてしまい、竦み上がってしまうのだ。
ワアワア叫んで追い立て回し、潰したり殺虫剤をぶっかけようという殺意多めな『嫌い』ではなく、本当にヨシヤは虫が苦手なのである。
そんな彼が数奇な運命を経て蟲使いだなんてジョブを得て、蟻と蜂を使役するに至ったわけだが……。
(く……も……)
キイイイイイイィィヤアアアァァ!!
ヨシヤは内心で叫んだ。彼は実際に声を出したつもりだったが、あまりの驚きに悲鳴は悲鳴にならず、大口を開けて驚いているという風にしか周囲に認知されなかったのだ。
だってそうだろう、ただでさえ苦手なものが巨大化したのだ。
お前の蟻だって巨大化しているだろうという話はヨシヤの中では別問題だ。
いや、最初は驚いたけれども。
ただ、目の前の蜘蛛は蟻たちの比ではないほどでかいのだ。
(ヒィ)
怖いだとかそういう感情をぶっちぎってヨシヤはもはや動けない。
だって、蜘蛛なのだ。
そう、大きさもさることながら、蜘蛛なのである。
八本の脚に八つの目、腹部は大きく膨らんだその姿!
巨大化しているせいで余計にその体毛までハッキリと理解でいて、それがまたヨシヤの全身を震撼させる。
眠っているのか、或いはこちらを観察しているのか、蜘蛛の様子はとても大人しい。
だが、そこにいるだけで人々が畏れる理由には十分だとヨシヤは理解したのである。
(……あれ、でも……)
それは、蟲使いであるからなのか。
或いは、女神の使いであるからなのか。
それとも、ヨシヤがこの不可思議な世界にすっかり馴染んだからなのか。
彼は気がついてしまったのだ。
目の前の蜘蛛が、そこに居座っているのではなく――弱っている、という事実に。
気がつけば、今度は人の良いヨシヤである。
一体全体どうしたのか、もしかして意思疎通が出来れば穏便にここをどいてもらって万事解決に至るのでは? しかし近づきたくはない。
声をかけて攻撃されるくらいなら、最初から仮面を付けていくのはどうだろう。
いやいやそれは近くに宿場町の人が居るから無理な話だ。この仮面は一度付けたら神域に戻るまで外せないのだから!
(でも、今後この町に来なければいいだけだし……)
懐に手を突っ込んで、ヨシヤは悶々と考える。
目の前にある命と、自身が仮面を付けるという行為、天秤が傾くのはヨシヤにとって前者である。
(ええい、ままよ!)
ぐっと懐の中にある仮面を握りしめ、取り出そうとした瞬間。
仮面を通じて、声が聞こえた。
『……み……』
思わず周りを見渡すが、誰かがヨシヤに話しかけている様子はない。
だが、確かに聞こえたのだ。微かな声が。
『……を……み』
そして、ハッとする。
聞こえてくるのは、目の前からだ。
仮面を握りしめていることで、聞こえてきているのだとヨシヤは察した。
察する能力が高いのがヨシヤの売りであった!
この空気を読む男は、それによってご近所のお年寄りたちから愛される中年だったのである!!
『水……水を、誰か……』
そして聞こえてきたのはか細く、水を欲する声であった。
奇しくもこの土地は砂漠にほど近い気候で、最近は特に暑い日が続いていたのである。
ヨシヤは目を丸くして、一歩、また一歩と前へと歩き出す。
背後で宿場町の人間たちがざわついたのが聞こえたが、ヨシヤは腰にぶら下げていた水筒を迷わず蜘蛛の前に差し出したのであった。
幼い頃、毛虫でかぶれたことはあるがそれだって恨んだりするものでもない。
そう、ただただ苦手なだけなのだ。
見るだけでぞわっとしてしまい、竦み上がってしまうのだ。
ワアワア叫んで追い立て回し、潰したり殺虫剤をぶっかけようという殺意多めな『嫌い』ではなく、本当にヨシヤは虫が苦手なのである。
そんな彼が数奇な運命を経て蟲使いだなんてジョブを得て、蟻と蜂を使役するに至ったわけだが……。
(く……も……)
キイイイイイイィィヤアアアァァ!!
ヨシヤは内心で叫んだ。彼は実際に声を出したつもりだったが、あまりの驚きに悲鳴は悲鳴にならず、大口を開けて驚いているという風にしか周囲に認知されなかったのだ。
だってそうだろう、ただでさえ苦手なものが巨大化したのだ。
お前の蟻だって巨大化しているだろうという話はヨシヤの中では別問題だ。
いや、最初は驚いたけれども。
ただ、目の前の蜘蛛は蟻たちの比ではないほどでかいのだ。
(ヒィ)
怖いだとかそういう感情をぶっちぎってヨシヤはもはや動けない。
だって、蜘蛛なのだ。
そう、大きさもさることながら、蜘蛛なのである。
八本の脚に八つの目、腹部は大きく膨らんだその姿!
巨大化しているせいで余計にその体毛までハッキリと理解でいて、それがまたヨシヤの全身を震撼させる。
眠っているのか、或いはこちらを観察しているのか、蜘蛛の様子はとても大人しい。
だが、そこにいるだけで人々が畏れる理由には十分だとヨシヤは理解したのである。
(……あれ、でも……)
それは、蟲使いであるからなのか。
或いは、女神の使いであるからなのか。
それとも、ヨシヤがこの不可思議な世界にすっかり馴染んだからなのか。
彼は気がついてしまったのだ。
目の前の蜘蛛が、そこに居座っているのではなく――弱っている、という事実に。
気がつけば、今度は人の良いヨシヤである。
一体全体どうしたのか、もしかして意思疎通が出来れば穏便にここをどいてもらって万事解決に至るのでは? しかし近づきたくはない。
声をかけて攻撃されるくらいなら、最初から仮面を付けていくのはどうだろう。
いやいやそれは近くに宿場町の人が居るから無理な話だ。この仮面は一度付けたら神域に戻るまで外せないのだから!
(でも、今後この町に来なければいいだけだし……)
懐に手を突っ込んで、ヨシヤは悶々と考える。
目の前にある命と、自身が仮面を付けるという行為、天秤が傾くのはヨシヤにとって前者である。
(ええい、ままよ!)
ぐっと懐の中にある仮面を握りしめ、取り出そうとした瞬間。
仮面を通じて、声が聞こえた。
『……み……』
思わず周りを見渡すが、誰かがヨシヤに話しかけている様子はない。
だが、確かに聞こえたのだ。微かな声が。
『……を……み』
そして、ハッとする。
聞こえてくるのは、目の前からだ。
仮面を握りしめていることで、聞こえてきているのだとヨシヤは察した。
察する能力が高いのがヨシヤの売りであった!
この空気を読む男は、それによってご近所のお年寄りたちから愛される中年だったのである!!
『水……水を、誰か……』
そして聞こえてきたのはか細く、水を欲する声であった。
奇しくもこの土地は砂漠にほど近い気候で、最近は特に暑い日が続いていたのである。
ヨシヤは目を丸くして、一歩、また一歩と前へと歩き出す。
背後で宿場町の人間たちがざわついたのが聞こえたが、ヨシヤは腰にぶら下げていた水筒を迷わず蜘蛛の前に差し出したのであった。
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