54 / 71
勇者(?)が召喚されたらしい
51
しおりを挟む
季節は、夏を迎えていた。
……主に神域の外で。
神域は基本的に季節というものがない。
その世界を司る神――つまり、ハナのさじ加減といったところか。
彼女にとって大切なのは夫と、そしてこの神域に住まう生物たちがいかに暮らしやすいかである。
ゆえに過ごしやすい気候に常時設定しているのだ。
特にヨシヤは外へと行商に出る際は暑い思いをしているので、帰ってきた時には涼んで貰いたいと一部に氷山なんかも作ってみたりしちゃって氷を八木とメイド鳥舞台に頼んで採掘してもらって使用している。
ちなみに蟻たちに頼むと彼らは動きが鈍くなってしまい、可哀想だと思ったが小さな氷の粒に楽しむ姿が見えたのでなかなか平和である。
だがそんな中、いつものように森へ果物採取に出た蟻たちが八木の入れた特製ハーブティーを飲みながら寛ぐ夫婦の元にやってきたことで騒がしくなる。
そう、物理的に。
「……で?」
ミィンミンミンミン……
「ええと」
ミィンミンミンミン……
「だから」
シィワシィワシィワ……
「なにも聞えない……!!」
そう、神域にも夏が来たのである。
夏の風物詩、セミ――彼らが直訴に。
それもこれもあっちゃんの子供たちがお散歩という名の果物採取に出かけた際のことだ。
さすがに外の世界では季節があるため、密林などに行ったところで必ず果物が実っているとは限らない。
ましてや弱肉強食のジャングルである。
美味しい実などあれば強者が取って食っている。
それを蟻たちは探し出してヨシヤやハナに食べて貰おうと日夜努力を重ねているのだ。
それはともかく。
そんな中で、彼らはそのセミに出会った。
さなぎからちょうど羽化しようとしているその姿には蟻たちもつい力を込めて応援を……と思った矢先に巨大な昆虫系魔物が現れてセミを狙ったのである。
当然、応援していた弱い命を蟻たちは守り、そしてセミは無事に羽化することができた。
だがまあ、察しの良い人は気づいているだろうがこのセミもまた、昆虫系の魔物である。 そのセミはいまや、森の中で追いやられる存在となっていた。
地中で生まれ、そして羽化して同族と番い、一夏の間鳴いて恋して番ってそして次代へと繋ぐ……その当たり前が難しくなっているというのだ。
そして助けてくれた蟻たちに彼は問うたのだ。
自分の同族を見なかったか、と――。
蟻たちはみな顔を見合わせて相談し合い、ならば今こそ女神の出番で間違いない。
そう思って案内してきたのだ。
「うん、事情はわかった」
じぃわじぃわじぃわじぃわ
「でももうちょっと、そう、もうちょっとでいいから静かにして?」
かな、かなかなかなかな……
「バリエーション豊かだね!?」
一匹の巨大なセミが木に張り付いて鳴き声という訴えを上げるのを、ヨシヤは今日も精一杯突っ込んでいくのであった。
……主に神域の外で。
神域は基本的に季節というものがない。
その世界を司る神――つまり、ハナのさじ加減といったところか。
彼女にとって大切なのは夫と、そしてこの神域に住まう生物たちがいかに暮らしやすいかである。
ゆえに過ごしやすい気候に常時設定しているのだ。
特にヨシヤは外へと行商に出る際は暑い思いをしているので、帰ってきた時には涼んで貰いたいと一部に氷山なんかも作ってみたりしちゃって氷を八木とメイド鳥舞台に頼んで採掘してもらって使用している。
ちなみに蟻たちに頼むと彼らは動きが鈍くなってしまい、可哀想だと思ったが小さな氷の粒に楽しむ姿が見えたのでなかなか平和である。
だがそんな中、いつものように森へ果物採取に出た蟻たちが八木の入れた特製ハーブティーを飲みながら寛ぐ夫婦の元にやってきたことで騒がしくなる。
そう、物理的に。
「……で?」
ミィンミンミンミン……
「ええと」
ミィンミンミンミン……
「だから」
シィワシィワシィワ……
「なにも聞えない……!!」
そう、神域にも夏が来たのである。
夏の風物詩、セミ――彼らが直訴に。
それもこれもあっちゃんの子供たちがお散歩という名の果物採取に出かけた際のことだ。
さすがに外の世界では季節があるため、密林などに行ったところで必ず果物が実っているとは限らない。
ましてや弱肉強食のジャングルである。
美味しい実などあれば強者が取って食っている。
それを蟻たちは探し出してヨシヤやハナに食べて貰おうと日夜努力を重ねているのだ。
それはともかく。
そんな中で、彼らはそのセミに出会った。
さなぎからちょうど羽化しようとしているその姿には蟻たちもつい力を込めて応援を……と思った矢先に巨大な昆虫系魔物が現れてセミを狙ったのである。
当然、応援していた弱い命を蟻たちは守り、そしてセミは無事に羽化することができた。
だがまあ、察しの良い人は気づいているだろうがこのセミもまた、昆虫系の魔物である。 そのセミはいまや、森の中で追いやられる存在となっていた。
地中で生まれ、そして羽化して同族と番い、一夏の間鳴いて恋して番ってそして次代へと繋ぐ……その当たり前が難しくなっているというのだ。
そして助けてくれた蟻たちに彼は問うたのだ。
自分の同族を見なかったか、と――。
蟻たちはみな顔を見合わせて相談し合い、ならば今こそ女神の出番で間違いない。
そう思って案内してきたのだ。
「うん、事情はわかった」
じぃわじぃわじぃわじぃわ
「でももうちょっと、そう、もうちょっとでいいから静かにして?」
かな、かなかなかなかな……
「バリエーション豊かだね!?」
一匹の巨大なセミが木に張り付いて鳴き声という訴えを上げるのを、ヨシヤは今日も精一杯突っ込んでいくのであった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる