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第一章 モブ暗殺者ですけど、生き残るためにはどうするべきでしょうか?
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「えっ? え、ええと……えっ?」
おっ、いい感じに呆気にとられてくれたね!
その機を逃さず、私は彼女が次の言葉を口にする前に言葉を続けた。
「貴女を守るのは仕事です。そちらの彼は騎士として公爵家に使える忠誠心やそのほか諸々ありますが、私は純粋にお給金で貴女を守ります。お金が発生するから、きちんとお仕事をします」
「えっと……はい」
「気にしないでとは言いません。私が怪我をしたら、治療費はちゃんと公爵家に請求します」
「貴様ッ」
ヴェゼルさんが私のことを睨んできたが、無視だ無視。
私は彼女の信頼を得ないと雇ってもらえないんだよ、切実なんだよこっちは!
……それから、彼女の憂いを払うためにも必要なんだよ。
「孤児院にいた頃も護衛が雇われて怪我くらいしていたでしょう? でもあれもお給料が発生して、そこには食事と治療も含まれていたから護衛たちも頑張った。それと同じです」
「……」
「きちんと対価ありきの関係です。……ね?」
彼女はまだ、家族に会えて嬉しいだけの女の子。
尊い血筋だから他者の命よりも重んじられる、そんな立場を受け入れ切れていないだけの、女の子。
(でも公女として迎え入れられて、その待遇を受けていることとそれがぶつかり合う)
多分そのことにはある程度、公爵も察しがついているに違いない。
だから護衛騎士じゃなくて、シリウスと私に護衛を任せようと考えたんじゃなかろうか。
まあ勿論、護衛騎士もつくだろうけどね。
「諸々打ち合わせ等はまた後日行うと思います。その際はよろしくお願いいたしますね、お嬢様」
ウィンクをしてみせれば、彼女はちょっとだけ泣きそうな顔をしつつ、こくんと頷いてくれた。
うんうん、理解力が高くて健気で可愛い。ヒロイン最高。
「話はまとまったようだな。アナベル、ご苦労だった。部屋に戻って休むといい」
「はい、お父様……」
名残惜しげに去って行くアナベルに私は笑顔で手を振ってあげる。
それだけでどこかホッとした表情を浮かべるんだからかぁわいいこと!
「座るといい、セレン」
「はい、公爵様」
「アナベルと話していたあの〝マルディ〟や〝ジュディ〟というのはなんだ」
「ああ、あれですか? あれは曜日ですよ」
「そんなことはわかっている。あの子がこの家に来た時の名前は『ベル』だった。それなのに別の名前がまだあると?」
「……なるほど、ご存じなかったのですね」
まあそりゃそうか、公爵サマともなれば天上の人だもんな。
嫌味ではなく本当に少し驚いたから声に出しちゃったんだけど、睨まれちゃったので慌てて答えた。
「名前がわからない子は、捨てられた曜日で名前をつけるんですよ一時的なものです」
「なに……?」
「いずれ孤児院を出る際、新しく名前をつけます。どうせ戸籍上は孤児院の子供として記載されるので、最初からつけるよりは次の雇い主がつけるんです。……彼女のいたところは国営でしたからね、怪しげなところではないのでおそらく神官に頼んで祝福と共に送り出してもらえていたと思いますが」
「……」
「だから孤児院育ちって言っても、みんな名前をもらってからはそちらを名乗ります。孤児院時代の名前を名乗るんじゃ、曜日だらけになっちゃいますからね。大抵の人が言わないんじゃないですかねえ」
唖然とする公爵様。
もしかしたら事前情報にはあったかもしれないけど、目の当たりにしたことはなかったのかもしれない。
(そうよね、慰問に行くのは夫人や使用人の仕事だもんね)
そして慰問で子供たちの名前の話なんて、大したことではないのだ。
大人たちからしてみたら、だけどね。
ちなみに複数同じ曜日の名前がいるとわかりづらいと思われるかもしれないけど、私がいた孤児院は年齢順に一番目のマルディ、二番目のマルディってな感じで上が抜けていくと順番が繰り上がっていくシステムだった。
(さすがに裏社会や娼館に連れて行かれる子は戸籍から消えることもある……なんて話はしない方がいいんだろうなあ)
摘発してくれんのは世間的に良いことだろうけど、その後のアフターフォローまで続くとは限らないのが世の中ってもんだ。
私を引き取った裏組織は勿論、非合法なのでよろしくない集団ではあったけど……それでも私たちを簡単に使い捨てにはしなかったし、そういう意味で必要悪なんだろうし、彼らが出資してくれていたからこそ成り立っていた孤児院でもあった。
国営の孤児院がない地域だったのだ。
摘発されてそこが潰されたら、その後、国が責任を取ってくれるのかっていったらそれはとても微妙だ。
できるんなら最初から国営のがあるはずだからね!
「お嬢様はまだ公爵家のご令嬢ではないのでしょう。優しい家族と再開できただけの少女です。ですから騎士たちの忠誠も、彼らの犠牲も、彼女には重すぎる」
「だろうな」
「まあ先程もお嬢様に申し上げましたが、私は雇われの身ですからね。それで、部下となった私は、上司のことをなんとお呼びすれば?」
当然だと思った質問に対し、彼らは顔を見合わせる。
そして何故か大きなため息をつかれてしまったことは納得がいかない。
文句は言わないけどね。
私は雇い主の希望を最大限叶えるタイプだからね!
********************
明日より18時投稿のみとなります
おっ、いい感じに呆気にとられてくれたね!
その機を逃さず、私は彼女が次の言葉を口にする前に言葉を続けた。
「貴女を守るのは仕事です。そちらの彼は騎士として公爵家に使える忠誠心やそのほか諸々ありますが、私は純粋にお給金で貴女を守ります。お金が発生するから、きちんとお仕事をします」
「えっと……はい」
「気にしないでとは言いません。私が怪我をしたら、治療費はちゃんと公爵家に請求します」
「貴様ッ」
ヴェゼルさんが私のことを睨んできたが、無視だ無視。
私は彼女の信頼を得ないと雇ってもらえないんだよ、切実なんだよこっちは!
……それから、彼女の憂いを払うためにも必要なんだよ。
「孤児院にいた頃も護衛が雇われて怪我くらいしていたでしょう? でもあれもお給料が発生して、そこには食事と治療も含まれていたから護衛たちも頑張った。それと同じです」
「……」
「きちんと対価ありきの関係です。……ね?」
彼女はまだ、家族に会えて嬉しいだけの女の子。
尊い血筋だから他者の命よりも重んじられる、そんな立場を受け入れ切れていないだけの、女の子。
(でも公女として迎え入れられて、その待遇を受けていることとそれがぶつかり合う)
多分そのことにはある程度、公爵も察しがついているに違いない。
だから護衛騎士じゃなくて、シリウスと私に護衛を任せようと考えたんじゃなかろうか。
まあ勿論、護衛騎士もつくだろうけどね。
「諸々打ち合わせ等はまた後日行うと思います。その際はよろしくお願いいたしますね、お嬢様」
ウィンクをしてみせれば、彼女はちょっとだけ泣きそうな顔をしつつ、こくんと頷いてくれた。
うんうん、理解力が高くて健気で可愛い。ヒロイン最高。
「話はまとまったようだな。アナベル、ご苦労だった。部屋に戻って休むといい」
「はい、お父様……」
名残惜しげに去って行くアナベルに私は笑顔で手を振ってあげる。
それだけでどこかホッとした表情を浮かべるんだからかぁわいいこと!
「座るといい、セレン」
「はい、公爵様」
「アナベルと話していたあの〝マルディ〟や〝ジュディ〟というのはなんだ」
「ああ、あれですか? あれは曜日ですよ」
「そんなことはわかっている。あの子がこの家に来た時の名前は『ベル』だった。それなのに別の名前がまだあると?」
「……なるほど、ご存じなかったのですね」
まあそりゃそうか、公爵サマともなれば天上の人だもんな。
嫌味ではなく本当に少し驚いたから声に出しちゃったんだけど、睨まれちゃったので慌てて答えた。
「名前がわからない子は、捨てられた曜日で名前をつけるんですよ一時的なものです」
「なに……?」
「いずれ孤児院を出る際、新しく名前をつけます。どうせ戸籍上は孤児院の子供として記載されるので、最初からつけるよりは次の雇い主がつけるんです。……彼女のいたところは国営でしたからね、怪しげなところではないのでおそらく神官に頼んで祝福と共に送り出してもらえていたと思いますが」
「……」
「だから孤児院育ちって言っても、みんな名前をもらってからはそちらを名乗ります。孤児院時代の名前を名乗るんじゃ、曜日だらけになっちゃいますからね。大抵の人が言わないんじゃないですかねえ」
唖然とする公爵様。
もしかしたら事前情報にはあったかもしれないけど、目の当たりにしたことはなかったのかもしれない。
(そうよね、慰問に行くのは夫人や使用人の仕事だもんね)
そして慰問で子供たちの名前の話なんて、大したことではないのだ。
大人たちからしてみたら、だけどね。
ちなみに複数同じ曜日の名前がいるとわかりづらいと思われるかもしれないけど、私がいた孤児院は年齢順に一番目のマルディ、二番目のマルディってな感じで上が抜けていくと順番が繰り上がっていくシステムだった。
(さすがに裏社会や娼館に連れて行かれる子は戸籍から消えることもある……なんて話はしない方がいいんだろうなあ)
摘発してくれんのは世間的に良いことだろうけど、その後のアフターフォローまで続くとは限らないのが世の中ってもんだ。
私を引き取った裏組織は勿論、非合法なのでよろしくない集団ではあったけど……それでも私たちを簡単に使い捨てにはしなかったし、そういう意味で必要悪なんだろうし、彼らが出資してくれていたからこそ成り立っていた孤児院でもあった。
国営の孤児院がない地域だったのだ。
摘発されてそこが潰されたら、その後、国が責任を取ってくれるのかっていったらそれはとても微妙だ。
できるんなら最初から国営のがあるはずだからね!
「お嬢様はまだ公爵家のご令嬢ではないのでしょう。優しい家族と再開できただけの少女です。ですから騎士たちの忠誠も、彼らの犠牲も、彼女には重すぎる」
「だろうな」
「まあ先程もお嬢様に申し上げましたが、私は雇われの身ですからね。それで、部下となった私は、上司のことをなんとお呼びすれば?」
当然だと思った質問に対し、彼らは顔を見合わせる。
そして何故か大きなため息をつかれてしまったことは納得がいかない。
文句は言わないけどね。
私は雇い主の希望を最大限叶えるタイプだからね!
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