主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ

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第二章 シリウスという男

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 シリウスは私を連れてあっちこっちと夜市を歩き回り、アレを買うかコレを買うかとなんでかあれこれ買い与えようとしてきて……いやいや私は地方から出てきた小さい子じゃないんですけど!?

 どうにも一緒に暮らすうちに情が湧いてしまったんだろう。
 そのせいで私の生まれや育ちに対して同情する気持ちが強く出て、オニイチャン気質なことも手伝って世話を焼いてやりたくなったわけだ。

 何故断定的なのかって?
 そりゃあ……本人がそう言ったからだよ。

「聞いてるのか? セレン」

「はいはい聞いてますよシリウス様! そろそろ寝ましょうよ、いっくら酒に強いからってあんなに何本も呑むとか何を考えてんですか」

「……呑みたかったんだ」

「限度ってもんがあるでしょうが、限度ってもんが」

 そう、家に帰ってきてから呑むとは宣言していたわけだから、夜市で買ってきた食品に加えて私も軽いおつまみを作ったんだよ。
 地下にある貯蔵庫の一角に酒蔵があって、シリウスは私が調理をしている間にそっから十本ほどのお酒を持ってきたんだよね。

 まあ家主が呑みたいってんだから止めはしないよ、酒量は弁えているって言われたらそれ以上言えることもないでしょ?

 ところがこれだよ!
 この酔っ払いめ!!

 最初は良かった。
 私にもお酒を勧めてくれて、呑みやすい果実酒。

 ところがシリウスが呑んでいたのはめっちゃ度数の高いお酒で、そいつを続けざまに呑んだだけじゃなくて『足りない』なんて言い出して追加で持ってきたんだよね。

 私は知っている。
 このお酒、度数が高いだけじゃなくてお値段も高いんだよ……それをこんな味わうんじゃなく水を飲むように呑みやがってえええ!
 このブルジョワめ! いやブルジョワだから仕方ないのか!?

「……お前が、自分のことを話してくれるのが嬉しかったんだ」

「え」

「聞かれたから答えた、その程度だろうが……いくらでも誤魔化せただろう?」

 ほんの少し頬を染めて。
 ふわりと微笑むシリウスに、ああ、この人ったら本当に私みたいな人間に絆されちゃったまあ、と呆れてしまった。

 呆れると同時に、嫌いになれないタイプの人間だなあとつくづく思う。
 こんなね、全身で喜びを表現する大型犬みたいな人、嫌いになれないでしょうよ。

「なのにお前はちゃんと答えてくれた。それって俺を少しは信頼してくれたってことだろう」

 何がおかしいのかくふくふ笑う姿はどっから見ても大型犬。
 くっそう、撫でてえな。

「懐かない野良猫が撫でさせてくれたみたいな気持ちになってな。つい、いい気分になった」

 な、な、な、にゃんですと~~~~!?
 こっちが相手を大型犬だと思っていたら、あっちは私のことを野良猫と思っていたとかなんだそのわんにゃん大戦争! 意味わかんない!!

「お前が話してくれたんなら、俺も少しは俺のことを話そう。フェアじゃないだろう?」

「え、いや別に無理に話していただくことはないですかね」

 思わず素で返したけど、彼はそれが面白かったのかまた笑ったのだった。
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