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第五章 この愛は重いのか?
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久々に外に出るなあと思ったら、魔法で転移させられて庭先でアナベルと挨拶と世間話したら強制的に帰宅させられました。
一緒にいたのって多分……十五分くらい? もっと短かったかも?
アナベルに抱きつかれ(いい匂いがした)、挨拶して、ヴェゼルから睨まれながら感謝の言葉を言われ(なんでだ!)、シリウスが私に会わせてくれないのでずっと心配だったとアナベルに泣かれそうになって……。
そんなことないですよ幸せにやってますよって言おうとしたところでシリウスがアナベルを引き剥がしたかと思うと私を抱き寄せて再び転移魔法で戻ってきたと。
「これで義理は果たした」
「いやだめでしょ!」
独占欲とか心配だけでそんな恐ろしくコスパの悪い魔法を使うんじゃない!
そう、転移魔法ってのは便利なようで実はコスパが悪い。
ざっくり言うと魔法使いたちが知恵と魔力を込めて羊皮紙に書き込んで、超高額な純度の高い魔石を使い捨てにしなきゃ発動できないようなものだ。
まあ魔石さえあれば行き先が同じなら魔法使いがいなくても繰り返し使えるってのは便利だよね。
今のところ固定型の大型門とかじゃない限り、人間二人が精一杯なので実用的かと問われると難しいところだけど。
「って燃やしちゃうんだ!?」
泣くぞ! それ描いた魔法使いたち!!
「ああ、落とした」
絶対違うでしょ、それ!!
いい感じに暖炉の火で燃え上がる羊皮紙。
ああ~……もったいなぁい……。
(……そんなに私と外に繋がりができるのが怖いのかあ)
監禁型ヤンデレ、と呼んでいいのかどうか私にはよくわからない。
でも彼が恐れているのはとにかく私を〝失う〟ことで、その可能性となるものを排除したいのかどうかっていうと……今日、アナベルと私がくっついているのは微笑ましそうにしていたからそこらへん、よくわかんないんだよね。
「ねえシリウス」
「うん? どうした、食事か? それとも疲れたから甘いものか?」
「そうだね、お茶にしようか。昨日ケーキ焼いておいたから」
「ありがとう」
シトロンケーキ作っておいたんだよね。
今ならシロップもしっかり染み込んで美味しいことだろう。
そう、甘いお菓子に美味しいお茶を用意して、私は決意を固める。
「シリウスに大事な話があって」
「……大事な話?」
「別れ話とか無茶ぶりとかじゃないからそこは安心して」
私はずっと考えていた。
シリウスは差し出せるものはなんでも差し出して、私を手中に収め、守ろうとしている。
でも彼は私をそうやって守っていても、ずっと不安がっているんだよね。
私が好きだ、愛していると言って体を差し出しても、最終的に信じて切れていないって言うか……愛情を疑われているわけじゃないけど、私がまたふらっとどこかにいなくなりそうだと思っていそう。
私には何かを差し出せるようなものはない。
残念ながらこの身一つだけで、それを差し出しても価値があるのかって言われたら……まあないわけじゃないけど、絶世の美姫じゃないし、魔力が豊富って訳でもないし、シリウスにとっては価値があるってだけ。
なので私は秘密を明け渡すことにした。
「あのね、私特殊技能持ちなの。分析と分離。使いようによっちゃすごいこともできる……かもしれない」
「暗殺者たちの毒を解析して詳らかにできる」
「まあそうね。暗殺者だった私が言うのもなんだけど」
いわゆる貴族たちが秘匿している毒とかもね。
解毒方法がわからないから脅しになるそれを、分析できる人間がいたら。
あるいは、その毒を摂取した人間をどうにかできなくても毒素そのものを分解できたら?
見たことのない植物のエキスとか、ばらけちゃえすれば研究者たちがどうにかできちゃうんじゃないか?
「……私はそれを恐れてノクス公爵家に来た」
「ああ……」
「これを明かしたのはね、とある変わり者の薬師と貴方だけだよ」
「……え?」
「私の命綱みたいなもんだからさ、私にあげられるのはもうこれしかなかったんだよねえ」
転生者っていうのもあるけどこれについてはほぼ記憶がないんだからノーカンで。
全部明け渡したよ。
シリウスに、初めても恋も愛も差し出した。
いつか離れなくちゃいけないかもしれないとか思いながら、私はそれならそれで全部を彼に渡すことを愛情として示そうと決めたのだ。
残念な生き方をしてきた私には、それしか思いつかなかったから。
シリウスは私を見ていた。
驚いて、二の句が継げないようだった。
……それが、なんだか随分と間抜けな表情だったから、すごく可愛いと思った。
一緒にいたのって多分……十五分くらい? もっと短かったかも?
アナベルに抱きつかれ(いい匂いがした)、挨拶して、ヴェゼルから睨まれながら感謝の言葉を言われ(なんでだ!)、シリウスが私に会わせてくれないのでずっと心配だったとアナベルに泣かれそうになって……。
そんなことないですよ幸せにやってますよって言おうとしたところでシリウスがアナベルを引き剥がしたかと思うと私を抱き寄せて再び転移魔法で戻ってきたと。
「これで義理は果たした」
「いやだめでしょ!」
独占欲とか心配だけでそんな恐ろしくコスパの悪い魔法を使うんじゃない!
そう、転移魔法ってのは便利なようで実はコスパが悪い。
ざっくり言うと魔法使いたちが知恵と魔力を込めて羊皮紙に書き込んで、超高額な純度の高い魔石を使い捨てにしなきゃ発動できないようなものだ。
まあ魔石さえあれば行き先が同じなら魔法使いがいなくても繰り返し使えるってのは便利だよね。
今のところ固定型の大型門とかじゃない限り、人間二人が精一杯なので実用的かと問われると難しいところだけど。
「って燃やしちゃうんだ!?」
泣くぞ! それ描いた魔法使いたち!!
「ああ、落とした」
絶対違うでしょ、それ!!
いい感じに暖炉の火で燃え上がる羊皮紙。
ああ~……もったいなぁい……。
(……そんなに私と外に繋がりができるのが怖いのかあ)
監禁型ヤンデレ、と呼んでいいのかどうか私にはよくわからない。
でも彼が恐れているのはとにかく私を〝失う〟ことで、その可能性となるものを排除したいのかどうかっていうと……今日、アナベルと私がくっついているのは微笑ましそうにしていたからそこらへん、よくわかんないんだよね。
「ねえシリウス」
「うん? どうした、食事か? それとも疲れたから甘いものか?」
「そうだね、お茶にしようか。昨日ケーキ焼いておいたから」
「ありがとう」
シトロンケーキ作っておいたんだよね。
今ならシロップもしっかり染み込んで美味しいことだろう。
そう、甘いお菓子に美味しいお茶を用意して、私は決意を固める。
「シリウスに大事な話があって」
「……大事な話?」
「別れ話とか無茶ぶりとかじゃないからそこは安心して」
私はずっと考えていた。
シリウスは差し出せるものはなんでも差し出して、私を手中に収め、守ろうとしている。
でも彼は私をそうやって守っていても、ずっと不安がっているんだよね。
私が好きだ、愛していると言って体を差し出しても、最終的に信じて切れていないって言うか……愛情を疑われているわけじゃないけど、私がまたふらっとどこかにいなくなりそうだと思っていそう。
私には何かを差し出せるようなものはない。
残念ながらこの身一つだけで、それを差し出しても価値があるのかって言われたら……まあないわけじゃないけど、絶世の美姫じゃないし、魔力が豊富って訳でもないし、シリウスにとっては価値があるってだけ。
なので私は秘密を明け渡すことにした。
「あのね、私特殊技能持ちなの。分析と分離。使いようによっちゃすごいこともできる……かもしれない」
「暗殺者たちの毒を解析して詳らかにできる」
「まあそうね。暗殺者だった私が言うのもなんだけど」
いわゆる貴族たちが秘匿している毒とかもね。
解毒方法がわからないから脅しになるそれを、分析できる人間がいたら。
あるいは、その毒を摂取した人間をどうにかできなくても毒素そのものを分解できたら?
見たことのない植物のエキスとか、ばらけちゃえすれば研究者たちがどうにかできちゃうんじゃないか?
「……私はそれを恐れてノクス公爵家に来た」
「ああ……」
「これを明かしたのはね、とある変わり者の薬師と貴方だけだよ」
「……え?」
「私の命綱みたいなもんだからさ、私にあげられるのはもうこれしかなかったんだよねえ」
転生者っていうのもあるけどこれについてはほぼ記憶がないんだからノーカンで。
全部明け渡したよ。
シリウスに、初めても恋も愛も差し出した。
いつか離れなくちゃいけないかもしれないとか思いながら、私はそれならそれで全部を彼に渡すことを愛情として示そうと決めたのだ。
残念な生き方をしてきた私には、それしか思いつかなかったから。
シリウスは私を見ていた。
驚いて、二の句が継げないようだった。
……それが、なんだか随分と間抜けな表情だったから、すごく可愛いと思った。
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