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青年の主張 2
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アレンとキリアンはそれぞれ文官と騎士ということで、面識はそれまでなかった。
そしてこの城内勤務の末端文官と末端騎士というのは折り合いが悪く、初めこそ互いに警戒していたところはあったものの……話をしてみれば存外、馬が合ったのである。
アレンはよく喋る男だった。
やれ家族がどうの、妹が可愛い、恋人の仕事が忙しくて構ってもらえない……そんなよくある話を延々と繰り返すのだが、キリアンはそれが意外といやではなかった。
アレンと共にいると女性陣に声をかけられることも減るし、それでもと勇んでくる相手にはアレンが上手いことやってくれるのだ。
得がたい友と出会えて良かったとキリアンは心から思ったものである。
ちなみにアレンは自分のおしゃべりに快く付き合ってくれるキリアンと出会えて良かったと思っているので、当人たちにとってウィンウィンの関係であった。
そんな中、アレンが訓練中のキリアンのところにやってくるなり「今日、僕の妹が来るんだよ」と言ったのだ。
「……ああ、お前の自慢の妹か」
「そうそう。ほら、前に言っただろ? あいつの見合い相手を探しててさ~、それで僕がお前を父上に推薦してみたんだよ」
「は? 何それ初耳」
「初めて言ったし。大丈夫だよ、僕に書類を届けにくるってことしかあの子は知らないから」
お前が気に入らなかったら自分の部署の人間を紹介するので安心しろと快活に笑うアレンにさすがのキリアンも今回ばかりは渋面を作らざるを得ない。
とはいえ、アレンを通じてアシュリー家の事情とやらは知っていたので、城内勤務ができる程度に信頼の置ける人間で、派閥と縁遠そうな人物を選びたいという意図自体は理解できる。
確かにそういう意味でキリアンは該当するに値する人間であった。
騎士爵にいつかは届きそうな若手、つまり有望株だ。
見目だって悪くない。
そういう理由で、彼に見合い話が舞い込むのはこれまで何件もあったが上司に頼んで断ってもらっていたのだ。
キリアンにとって結婚というものはそこまで真面目に考える必要性がないもので、いずれは所帯を持ちたいなあとは思うものの今はまだ剣の道を邁進したいなというのが正直なところである。
ちなみに騎士爵を得るための昇進試験については、剣の技量だけでなく礼儀作法をより具体的にこなさなければ無理だと言われているためやる気はこの時一切なかった。
「お兄様、こちらにいらしたのね!」
そう、その時までは、の話である。
キリアンの前に現れた少女の姿を見て、目を奪われたその瞬間からキリアンの世界は変わったのだ。
俗に言う一目惚れ。
遅まきの初恋。
落ち着いた色合いの金の髪は日の光を浴びると彼女の周りだけ輝いているようだ。
まるでそれこそ、光の冠を被っているかのように見えるのは自分だけだろうか。いや、そんなわけがない!
灰青の瞳はまるで強い日差しから彼を守る薄雲のようにすら思えた。
ああ、こんなに愛らしい人がこの世界に存在していただなんて!
アシュリー伯爵に連れられたまだ幼さの残る可憐なその姿に、心臓が打ち抜かれた思いのキリアンはどうやって挨拶を交わしたのかすら記憶が定かではない。
のちに『初めての思い出が……!!』と嘆いてアレンに呆れられるのだが、それはまた別の話である。
そしてこの城内勤務の末端文官と末端騎士というのは折り合いが悪く、初めこそ互いに警戒していたところはあったものの……話をしてみれば存外、馬が合ったのである。
アレンはよく喋る男だった。
やれ家族がどうの、妹が可愛い、恋人の仕事が忙しくて構ってもらえない……そんなよくある話を延々と繰り返すのだが、キリアンはそれが意外といやではなかった。
アレンと共にいると女性陣に声をかけられることも減るし、それでもと勇んでくる相手にはアレンが上手いことやってくれるのだ。
得がたい友と出会えて良かったとキリアンは心から思ったものである。
ちなみにアレンは自分のおしゃべりに快く付き合ってくれるキリアンと出会えて良かったと思っているので、当人たちにとってウィンウィンの関係であった。
そんな中、アレンが訓練中のキリアンのところにやってくるなり「今日、僕の妹が来るんだよ」と言ったのだ。
「……ああ、お前の自慢の妹か」
「そうそう。ほら、前に言っただろ? あいつの見合い相手を探しててさ~、それで僕がお前を父上に推薦してみたんだよ」
「は? 何それ初耳」
「初めて言ったし。大丈夫だよ、僕に書類を届けにくるってことしかあの子は知らないから」
お前が気に入らなかったら自分の部署の人間を紹介するので安心しろと快活に笑うアレンにさすがのキリアンも今回ばかりは渋面を作らざるを得ない。
とはいえ、アレンを通じてアシュリー家の事情とやらは知っていたので、城内勤務ができる程度に信頼の置ける人間で、派閥と縁遠そうな人物を選びたいという意図自体は理解できる。
確かにそういう意味でキリアンは該当するに値する人間であった。
騎士爵にいつかは届きそうな若手、つまり有望株だ。
見目だって悪くない。
そういう理由で、彼に見合い話が舞い込むのはこれまで何件もあったが上司に頼んで断ってもらっていたのだ。
キリアンにとって結婚というものはそこまで真面目に考える必要性がないもので、いずれは所帯を持ちたいなあとは思うものの今はまだ剣の道を邁進したいなというのが正直なところである。
ちなみに騎士爵を得るための昇進試験については、剣の技量だけでなく礼儀作法をより具体的にこなさなければ無理だと言われているためやる気はこの時一切なかった。
「お兄様、こちらにいらしたのね!」
そう、その時までは、の話である。
キリアンの前に現れた少女の姿を見て、目を奪われたその瞬間からキリアンの世界は変わったのだ。
俗に言う一目惚れ。
遅まきの初恋。
落ち着いた色合いの金の髪は日の光を浴びると彼女の周りだけ輝いているようだ。
まるでそれこそ、光の冠を被っているかのように見えるのは自分だけだろうか。いや、そんなわけがない!
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ああ、こんなに愛らしい人がこの世界に存在していただなんて!
アシュリー伯爵に連れられたまだ幼さの残る可憐なその姿に、心臓が打ち抜かれた思いのキリアンはどうやって挨拶を交わしたのかすら記憶が定かではない。
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