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★連合艦隊エジプトへ★
【カイロの魔の手②】
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「戦場を視察?」
「そうです。護衛は我々イギリス軍が総力を挙げて行いますので、まずはスエズ運河を通り艦隊を地中海に出せば零戦の航続距離も心配ないでしょう」
ここからイタリア軍の前線基地シディバッラニまでの距離は1000㎞弱。
零戦の航続距離は増槽を搭載すれば3000㎞を越えるから、わざわざ地中海に出なくても往復できる。
彼らは零戦の存在は知っているが、そのスペックまでは知らないと言う事を明かした。
しかし問題は、そこではない。
いったん地中海に出てしまえば、何が起きても不思議ではない。
イタリア軍の潜水艦……いや、ことによるとイタリアと同盟関係になるドイツのUボートさえも待ち構えているかもしれない。
戦闘機1機、駆逐艦1隻でも被害を受ければ、戦闘になる可能性だってある。
海軍がこのような大艦隊をもってここまで来たのは決して戦争の視察を兼ねたわけでもなければ、まして戦争をしに来たわけでもないはず。
永野大将が言った。
「もしイタリア軍が我が艦隊の出現に驚いて攻撃を仕掛けて来れば、我々だって黙っているわけではない。比叡や霧島、それに利根と筑摩の主砲をもってすれば、イタリア軍の地上砲の射程外から充分彼らの兵力を削ぎ落とすことはできます。しかし我々は戦争をしに来たのではなく、この大艦隊は東京五輪に協力してくれた選手たちの安全と日本を戦争に引き込もうと企む者たちへの抑止力として編成されたものです。そのために道中では対潜哨戒活動を絶やさないできた。帰り道もまた然り。部下たちを安全に日本に居る家族のもとに返すのが私の使命と考える」と言ったあと、付け加えた。
「我々はこのエジプトに到着する前からイタリア軍の戦力も、貴方たちの戦力も知っていました。知っていたからこそ選手たちの安全のためにこの様な大艦隊を編成してもらいました。数的に見ればイタリア軍が圧倒的に有利で、到着したころには最悪カイロはもうイタリア軍に占領されているかもしれないと。だが貴方たちは数的劣勢の中で驚異的な力を発揮して、イタリアの大軍を押し止めた。これは素晴らしい仕事だと、同じ軍人として感銘を受けました。貴方たちの母国もまた同じで、決して貴方たちを見捨てはしない。直ぐに補充部隊を派遣して必ず侵略した敵を追い払うことになるでしょう。そのとき貴方たちと貴方たちの栄誉のためにも、決して部外者たる我々が力を貸すことがあってはならない。そうではないでしょうか」と。
永野大将が言い終わった後、突然通訳をしていた薫さんが話に割って入り私を慌てさせた。
薫さんは宴会場の隅々まで通るような声を上げてボーイにスコッチウィスキーを持ってくるように頼むと、グラスを丁寧にイギリスと我々軍人に配り「お互いの栄誉のために‼」と大声を上げた。
これには会場に居た大勢の人たちも賛同して、皆が乾杯を交わし宴会の場は大いに盛り上がった。
“芸者かよ⁉”
と、私は場の雰囲気を和らげ、機転を利かした薫さんに小声で言うと彼女は「これは女性にしかできない裏技よ」と明るく答えた。
晩餐会の帰り道で温厚で大人しい草加少将が言った。
「バカヤロー! テメーらの戦争の片棒を担がされて堪るかよ、見ず知らずのイタリア人とは言え、人がたくさん死ぬんだぜ‼」と。
たしかに、そのとおり。
実際にこの艦隊が地中海に出て砲撃を行えば、一方的にシディバッラニに居るイタリア軍を殲滅することは可能だろう。
しかし戦争と言っても、人を殺すことは誰も本意ではない。
軍人は殺人鬼ではない。
やらなければ、やられるから戦っているだけなのだ。
それにもう一つ。
この場所に日本の陸軍の軍人が居なかった事にホッとした。
陸軍の軍人の一部には、功名心に駆られて勝手な行動をする者が居る。
特にこのような遠隔地ではなおさら。
統率の整った海軍だけでよかったと、心からそう思った。
「そうです。護衛は我々イギリス軍が総力を挙げて行いますので、まずはスエズ運河を通り艦隊を地中海に出せば零戦の航続距離も心配ないでしょう」
ここからイタリア軍の前線基地シディバッラニまでの距離は1000㎞弱。
零戦の航続距離は増槽を搭載すれば3000㎞を越えるから、わざわざ地中海に出なくても往復できる。
彼らは零戦の存在は知っているが、そのスペックまでは知らないと言う事を明かした。
しかし問題は、そこではない。
いったん地中海に出てしまえば、何が起きても不思議ではない。
イタリア軍の潜水艦……いや、ことによるとイタリアと同盟関係になるドイツのUボートさえも待ち構えているかもしれない。
戦闘機1機、駆逐艦1隻でも被害を受ければ、戦闘になる可能性だってある。
海軍がこのような大艦隊をもってここまで来たのは決して戦争の視察を兼ねたわけでもなければ、まして戦争をしに来たわけでもないはず。
永野大将が言った。
「もしイタリア軍が我が艦隊の出現に驚いて攻撃を仕掛けて来れば、我々だって黙っているわけではない。比叡や霧島、それに利根と筑摩の主砲をもってすれば、イタリア軍の地上砲の射程外から充分彼らの兵力を削ぎ落とすことはできます。しかし我々は戦争をしに来たのではなく、この大艦隊は東京五輪に協力してくれた選手たちの安全と日本を戦争に引き込もうと企む者たちへの抑止力として編成されたものです。そのために道中では対潜哨戒活動を絶やさないできた。帰り道もまた然り。部下たちを安全に日本に居る家族のもとに返すのが私の使命と考える」と言ったあと、付け加えた。
「我々はこのエジプトに到着する前からイタリア軍の戦力も、貴方たちの戦力も知っていました。知っていたからこそ選手たちの安全のためにこの様な大艦隊を編成してもらいました。数的に見ればイタリア軍が圧倒的に有利で、到着したころには最悪カイロはもうイタリア軍に占領されているかもしれないと。だが貴方たちは数的劣勢の中で驚異的な力を発揮して、イタリアの大軍を押し止めた。これは素晴らしい仕事だと、同じ軍人として感銘を受けました。貴方たちの母国もまた同じで、決して貴方たちを見捨てはしない。直ぐに補充部隊を派遣して必ず侵略した敵を追い払うことになるでしょう。そのとき貴方たちと貴方たちの栄誉のためにも、決して部外者たる我々が力を貸すことがあってはならない。そうではないでしょうか」と。
永野大将が言い終わった後、突然通訳をしていた薫さんが話に割って入り私を慌てさせた。
薫さんは宴会場の隅々まで通るような声を上げてボーイにスコッチウィスキーを持ってくるように頼むと、グラスを丁寧にイギリスと我々軍人に配り「お互いの栄誉のために‼」と大声を上げた。
これには会場に居た大勢の人たちも賛同して、皆が乾杯を交わし宴会の場は大いに盛り上がった。
“芸者かよ⁉”
と、私は場の雰囲気を和らげ、機転を利かした薫さんに小声で言うと彼女は「これは女性にしかできない裏技よ」と明るく答えた。
晩餐会の帰り道で温厚で大人しい草加少将が言った。
「バカヤロー! テメーらの戦争の片棒を担がされて堪るかよ、見ず知らずのイタリア人とは言え、人がたくさん死ぬんだぜ‼」と。
たしかに、そのとおり。
実際にこの艦隊が地中海に出て砲撃を行えば、一方的にシディバッラニに居るイタリア軍を殲滅することは可能だろう。
しかし戦争と言っても、人を殺すことは誰も本意ではない。
軍人は殺人鬼ではない。
やらなければ、やられるから戦っているだけなのだ。
それにもう一つ。
この場所に日本の陸軍の軍人が居なかった事にホッとした。
陸軍の軍人の一部には、功名心に駆られて勝手な行動をする者が居る。
特にこのような遠隔地ではなおさら。
統率の整った海軍だけでよかったと、心からそう思った。
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