対ソ戦、準備せよ!

湖灯

文字の大きさ
56 / 61
★vs張学良★

【柏原中佐救出作戦①】

しおりを挟む
 永野さんと阿南さん、それに鈴木侍従長の許しを受け、私は柳生さんと共に柏原くんの居る中国に向かうことになった。

「羽田に向かうぞ!」

 柳生さんが乗ってきた車に乗り込み、これからどうやって中国に行くのかと聞くと、彼はそう答えた。

 柏原くんが行ったように上海経由で行くのか、それとも北京経由で行くのか。

 どちらにしても時間はかかる。

 しかも航空機からパラシュートを使って柏原くんの居る張学良軍のど真ん中に降りたとしても、それはただ単に柏原くんと会えるだけで帰る手段はない。

 徒歩で帰るか、もし話がうまくまとまって先方が車を用意してくれたとしても無事日本軍の陣地までたどり着くことは困難だろう。

 それに護衛を付けてもらうのも、護衛が裏切る可能性もあり信用できない。



 羽田から、どうやって行くのかと聞くと、柳生さんは既に飛行機を手配していると言った。

「でも、さっき大本営の許しが出たばかりだから、軍の飛行機だからといってもそんなに早く手配は出来ないはずよ。それにもう午後だから民間の上海便も北京便ももう終わっているわ!」

「軍や民間以外にも飛行機はある!」

「まさか……」



 柳生さんの言葉を聞いて、ピンときた。

 彼は最近ずっと航空機の性能向上のために、各地の航空機メーカーに入り浸っていたはず。

 そしてせっかちで自信家の柳生さんが、大本営の許しなど一切気にしてはいない。

 おそらく彼は柏原くんが単身で中国に発った話を耳にした瞬間から、全ての手配を済ませたうえで大本営にやって来たのだろう。



 羽田に着くと、やはり日の丸を付けた飛行機が待っていた。

 前史の資料で知っている深山や連山とは全くシルエットの異なる、高翼型で4発の大型飛行機。

「これは?」

「コードネームはC-0(シーゼロ)輸送機。零式飛行艇(前史では二式飛行艇または二式大艇)を、地上任務仕様に改造したものだ。機体形状の変更で燃料タンク容量は少なくなったが、その分速力と積載能力は格段に上がったぞ」

「積載能力はどのくらいあるの?」

「3トンは乗るぞ! 現代の1個小隊を丸々輸送できてしまう」



 まさか1個小隊を連れて行くつもりかと思いキョロキョロと辺りを見渡すと、それに気付いた柳生さんが、10万を遥かに超える張学良軍のど真ん中にたかが1個小隊を連れて行っても気休めにもならないどころか逆に邪魔になると言って笑った。



 それを聞いて安心したが、こんなバカでかい飛行機をどうしたのか聞くと、愛知の川西航空機でちょうど爆撃と輸送に使える大型機の試作に携わっていて、今日は輸送機の方を長距離試験飛行に使うのだと教えてくれた。



 さすが柳生さん。

 ひとつの事だけをやり遂げるだけでなく、必ず2つか3つの成果を求める野心が凄い。

 そして乗ってみると、まさにその3つ目の野心の成果も乗り込んでいた。



「なにこれ!?」

 貨物室は空だとばかり思っていたら、そこには翼を分解された新たな飛行機が搭載してあった。

「平塚の日本国際航空工業が開発している『キ76』、後に三式指揮連絡機と呼ばれる飛行機の現在バージョンだ」

 柳生さんが胸を張って「現在バージョン」と言うことは、また何やら改造を施しているに違いない。

「でも、何に使うの?」

「まさか漢字の読み書きができん奴らの中へ、パラシュートで降りるわけにもいかんからな」

「でも滑走路なんて、どこにもないかもよ」

「なに大丈夫、ほんの少しの向かい風があれば、コイツの機体プラス5mほどの空地があれば着陸することができるし、1mあれば離陸もできる」



 凄い!

 さすがだと思っていると、柳生さんは得意そうに、しかも防弾仕様だと嬉しそうに話してくれた。



 中には川西航空機と日本国際航空工業の人たちも乗っていて、私が「いつも柳生が、お世話になっています」と頭を下げると、彼らは恐縮するように「お世話になっているのは、こっちのほうです」と、お礼を言った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

対米戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。 そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。 3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。 小説家になろうで、先行配信中!

太平洋戦争、回避せよ!

湖灯
歴史・時代
「対米戦、準備せよ!」「対ソ戦、準備せよ!」に続き、このシリーズの最終章となります。 時代は1040年代。 1944年のサイパン島の戦いの資料を持ち帰るべく、大本営から特命を受けた柏原大尉は水上偵察機で脱出しました。 敵のレーダー網を避けるため水上を這うように移動していたが、途中潜水艦に発見され、通報を受けて飛んで来たグラマンに襲われますが、硫黄島から飛んで来たゼロ戦に救われます。 しかしようやく本土に辿り着くと思われた房総半島上空で味方の誤射により機は重大なダメージを受けて墜落。 目が覚めたとき彼は10年前の1934年に戻っていて、柏原大尉の前には未来から来た技術者の男女2人が居て、彼らと共に戦争のない日本を築くために奮闘する物語です。 「小説家になろう」では「対米戦、準備せよ!」で先行配信中です。

日本が危機に?第二次日露戦争

歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。 なろう、カクヨムでも連載しています。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

小日本帝国

ypaaaaaaa
歴史・時代
日露戦争で判定勝ちを得た日本は韓国などを併合することなく独立させ経済的な植民地とした。これは直接的な併合を主張した大日本主義の対局であるから小日本主義と呼称された。 大日本帝国ならぬ小日本帝国はこうして経済を盤石としてさらなる高みを目指していく… 戦線拡大が甚だしいですが、何卒!

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

処理中です...