7 / 107
2章
もう一度
しおりを挟む
2限が終わった。レポートを出し、感想を言い、議論をして90分が過ぎていく。自分の思った意味の通りに知識を吐き出すのは難しい。しかしこの過程を通して知識から知恵へと変わっていくのだろうか。という疑問を持ちながら、講義室から退室する。
研究棟に向かう。友人にご飯に誘われたが、用事という名目で断ってきた。研究棟に向かってる途中で賢を見かける。自動販売機で飲み物を買っていた。
「賢さーん」
「おっ、仁じゃねーか。今から行くのか」
「行こうと思ってます」
「じゃ、行くか」
「お願いします」
会話の後、二人で研究棟に向かう。大学のことを話しながら研究室に向かう。エレベーターに乗ってすぐ到着。賢が扉を開けて、俺がそれに続く。賢さんと研究室の人が一言二言話をした後、紹介された。研究室には何人かの学生がいた。
「こいつが仁、研究のことが知りたいらしいからしばらくここで話すわ」
「はいよ」
「じゃあ始めるか。研究の紹介して、中身説明して、それが終わったらひとまずご飯だな」
「分かりました」
そこから賢の研究の紹介が始まった。いまいち言葉がわからなくても、メモを取りながら少しでも多くの知識を得るために必死だった。
賢はどうすれば正しく伝わるか考えながら言葉を発しているようだった。少し時間が経過した頃、隣の部屋から教授と思しき人が出てきた。なるべく気にしないようにしつつも、どうすればいいのかは分からなかった。
「まぁ、こんな感じかな、どうかな、分かるかな」
「うーん、ぼんやりとは」
「なるほど、ありがとう」
「いえ、こちらこそ」
「ひとまず、ご飯にするか」
「そうですね」
「そんなに緊張する?」
「まぁ、初めてなので」
「それはそうか」
研究室を出て少し歩けばいつもの食堂があった。食券を買って、いつもより空いている席に座る。少し時間が外れていることもあり、人は少なかった。昼休み特有の騒がしさはどこかに消えて、家で食べる昼食と変わらないような空気だった。
「そういえばこの前食べたラーメン、伸びてなかったのか」
「まぁ、あれくらいなら食べれますよ」
「そうか」
仁は涼しい顔で答えていた。食べにくそうにしていたように見えたが、味に問題がなければ良いようだ。
仁は美味しそうにラーメンを食べる。賢はこれからの予定のことを考えながら定食を食べる。ギスギスした感じはないが、賢は何か話題を探して話しかけるべきかずっと考えていた。しかし、先に話題を出したのは仁だった。
「そういえば賢さん、卒論は終わりそうなんですか」
「まだ分かんねえ、夏休みに入ってから追い込んで、秋に二回目の中間発表があるから、そこ次第だ」
「そうなんですね」
「まぁ、なんとかなるだろう。このペースでいければ」
「なるほど、それはよかったです」
賢は質問に答えるが、それが正しい答えかは分からない。仁は相変わらずラーメンを啜っているが、果たして味がわかっているのかは分からない。
賢はもう食べ終わっていた。少ししてから仁も食べ終わる。会話がずっと続いているわけでもなく、キリのいいところで席を立つ。
食堂から出てから、来た道を戻って研究室へ。賢は話題に困っていた。ひとまず、かつて自分が2年だった頃に思っていたようなことから聞いてみようと思った。
「どう?今ってレポート多い?」
「まぁ、うーん。って感じですかね。出来なくはないので困ってないです」
「なるほど、講義自体は忙しかったりしないの?」
「空きコマはあるので、そういう時間使ってレポート書いてますね」
「真面目だ」
「高校の頃から一夜漬けのプロみたいなことしてたので、抜け出したくて」
「真面目すぎるだろ」
豪快に笑う賢につられて、仁も笑う。緊張している姿はどうしても見えてしまうが、笑っている姿は愛想笑いではなかった。
研究室に戻ってからも、雑談は続く。研究室には賢の他にもゼミの学生や教授と思しき人の姿もあったけれど、仁の存在を排除することなく話を聞いてくれていた。
研究のことだけじゃなく、私生活のことや大学生としてのうまい立ち回り方も話題に上がり、その時には他のゼミ生が会話に入ってくることもあった。そんな話で盛り上がり、ふと時計を見ると、5限がもうすぐ始まる時間だった。
「やば、そろそろ行かなきゃ」
「はいよ、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
賢に見送られながら研究室から出て、講義室に向かう。このとき仁はもう自覚していた。完璧に恋をしていると。賢を好きになっていることが完璧に分かっていた。だから、頑張りたいと思った。その前にまずは5限だ。めんどくさいけど、頑張ろう。その想いを胸に、仁は講義室へと入っていった。
研究棟に向かう。友人にご飯に誘われたが、用事という名目で断ってきた。研究棟に向かってる途中で賢を見かける。自動販売機で飲み物を買っていた。
「賢さーん」
「おっ、仁じゃねーか。今から行くのか」
「行こうと思ってます」
「じゃ、行くか」
「お願いします」
会話の後、二人で研究棟に向かう。大学のことを話しながら研究室に向かう。エレベーターに乗ってすぐ到着。賢が扉を開けて、俺がそれに続く。賢さんと研究室の人が一言二言話をした後、紹介された。研究室には何人かの学生がいた。
「こいつが仁、研究のことが知りたいらしいからしばらくここで話すわ」
「はいよ」
「じゃあ始めるか。研究の紹介して、中身説明して、それが終わったらひとまずご飯だな」
「分かりました」
そこから賢の研究の紹介が始まった。いまいち言葉がわからなくても、メモを取りながら少しでも多くの知識を得るために必死だった。
賢はどうすれば正しく伝わるか考えながら言葉を発しているようだった。少し時間が経過した頃、隣の部屋から教授と思しき人が出てきた。なるべく気にしないようにしつつも、どうすればいいのかは分からなかった。
「まぁ、こんな感じかな、どうかな、分かるかな」
「うーん、ぼんやりとは」
「なるほど、ありがとう」
「いえ、こちらこそ」
「ひとまず、ご飯にするか」
「そうですね」
「そんなに緊張する?」
「まぁ、初めてなので」
「それはそうか」
研究室を出て少し歩けばいつもの食堂があった。食券を買って、いつもより空いている席に座る。少し時間が外れていることもあり、人は少なかった。昼休み特有の騒がしさはどこかに消えて、家で食べる昼食と変わらないような空気だった。
「そういえばこの前食べたラーメン、伸びてなかったのか」
「まぁ、あれくらいなら食べれますよ」
「そうか」
仁は涼しい顔で答えていた。食べにくそうにしていたように見えたが、味に問題がなければ良いようだ。
仁は美味しそうにラーメンを食べる。賢はこれからの予定のことを考えながら定食を食べる。ギスギスした感じはないが、賢は何か話題を探して話しかけるべきかずっと考えていた。しかし、先に話題を出したのは仁だった。
「そういえば賢さん、卒論は終わりそうなんですか」
「まだ分かんねえ、夏休みに入ってから追い込んで、秋に二回目の中間発表があるから、そこ次第だ」
「そうなんですね」
「まぁ、なんとかなるだろう。このペースでいければ」
「なるほど、それはよかったです」
賢は質問に答えるが、それが正しい答えかは分からない。仁は相変わらずラーメンを啜っているが、果たして味がわかっているのかは分からない。
賢はもう食べ終わっていた。少ししてから仁も食べ終わる。会話がずっと続いているわけでもなく、キリのいいところで席を立つ。
食堂から出てから、来た道を戻って研究室へ。賢は話題に困っていた。ひとまず、かつて自分が2年だった頃に思っていたようなことから聞いてみようと思った。
「どう?今ってレポート多い?」
「まぁ、うーん。って感じですかね。出来なくはないので困ってないです」
「なるほど、講義自体は忙しかったりしないの?」
「空きコマはあるので、そういう時間使ってレポート書いてますね」
「真面目だ」
「高校の頃から一夜漬けのプロみたいなことしてたので、抜け出したくて」
「真面目すぎるだろ」
豪快に笑う賢につられて、仁も笑う。緊張している姿はどうしても見えてしまうが、笑っている姿は愛想笑いではなかった。
研究室に戻ってからも、雑談は続く。研究室には賢の他にもゼミの学生や教授と思しき人の姿もあったけれど、仁の存在を排除することなく話を聞いてくれていた。
研究のことだけじゃなく、私生活のことや大学生としてのうまい立ち回り方も話題に上がり、その時には他のゼミ生が会話に入ってくることもあった。そんな話で盛り上がり、ふと時計を見ると、5限がもうすぐ始まる時間だった。
「やば、そろそろ行かなきゃ」
「はいよ、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
賢に見送られながら研究室から出て、講義室に向かう。このとき仁はもう自覚していた。完璧に恋をしていると。賢を好きになっていることが完璧に分かっていた。だから、頑張りたいと思った。その前にまずは5限だ。めんどくさいけど、頑張ろう。その想いを胸に、仁は講義室へと入っていった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる