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2章
関係性
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起きたのは朝7時30分だった。賢はすでに起きていた。当たり前だが、いつもと違う景色が目の前に広がっていた。部屋の広さ。布団。部屋の明るさ。目の前にいる人。
「おはようございます」
「おはよう」
賢は、俺の人生を明るく変えてくれるのだろうか。いろんな感情が混ざり合って白くなる。一番綺麗なようで、一番汚い色と言われる。果たして自分の思いが正しいのかどうかすら、今は分からない。
いつもと違う光景だが、いつかは当たり前の光景にしたい。昨日、賢からもらった歯ブラシを使って歯を磨く。新品だから賢がどうこうということは無いのだが、好きな人の部屋で歯を磨くというのは少し照れくさかった。少し長めの歯磨きと洗顔をしてから、部屋に戻ると、部屋着姿の賢がいた。緊張しているが、居心地は良かった。
まだまだ緊張が解けないまま、いつも通りを装いながら頑張って会話をする。どうやってもいつもどおりの生活はできないのだが、それでも必死に頑張る。そわそわしていると賢がやっぱり話しかけてきた。
「どうしたの、お腹すいた?」
「あっ、えっと、はい」
「そっか。今日は仁もいるし、なんか作るか」
賢がキッチンに立つ姿を見ながら、こういう時、自分にも料理スキルがあれば役に立てたのか、なんてことを考える。今すぐにはどうやっても解決しない問題だが、いずれは考えなければいけないことの一つだ。
昨日も見た、素敵な立ち姿。すらりと伸びた身長にいう全く違和感のない顔立ちと体。その全てから作り出される料理が美味しいのだから、もはや完璧を超えた何かである。そんな姿に見惚れていたら、目の前に料理が並んでいた。
「出来たぞ」
「あ、ありがとうございます」
なぜこの期に及んで敬語なんだ。賢は疑問に思っていた。もう少しラフに接して欲しいと思っている。しかし年が2歳も違えばそうはいかないのだろう。
かつての賢もそうだった。研究室に入り浸っていたわけではないが、少しだけ所属していたサークルが上下関係などないかのような荒れ方だった。結局賢はそのサークルから抜けたが、あの時の空気感を思い出せば、仁が緊張して敬語になるのは正しいのかもしれない。ここは緊張をほぐしてやるべきなのか。
朝飯は美味しそうに食べてくれるし、行儀も悪くない。客が来ているという事情だけで豪華になる朝食を食べながら、そんなことを考えていた。
朝起きれば知人がいるというのは気分が違う。しかし困った事態にもなっていた。仁とできることを何一つとして用意していなかった。困りに困り果て、どうしようかと悩んでいるところで、声が飛んでくる。
「賢さん、これからどうしましょう」
「どうしようかなあ」
本当に何もすることがない。賢の家には娯楽と呼べるものがほとんどない。筋トレのための道具と、乱雑に積まれた書籍ぐらいしか辺りにはない。2人で遊ぶというには少し無理がある。何をしようにも何も出来ない。生憎、この辺りには娯楽施設もほとんどない。手詰まりどころの話ではない。
「解散にするか」
「えっ、あぁ、はい」
「すまんな、何もなくて。次までには何か用意しておくよ」
「あ、お願いします」
二人の中では次があることを確信していた。ご飯を食べてから食器を流し、ややあってから解散となった。
「じゃあ、また大学でな」
「またお願いします」
何事もなかったとは言え、夜を一緒に過ごした友人を見送りながら、次までには楽しめるものを絶対用意すると決めた。賢には卒論よりも大事な急務ができた。なんとかして、達成せねばならぬ。
「はぁ、緊張した」
仁は緊張から解放された。好きな人の部屋に泊まることになるなんて想像していなかった。いくらなんでも展開が早すぎるのではないか。賢の自宅を出て、自分の家へと帰りながら、そんなことを考える。
いつもと変わらない日常に戻っていく。電車に乗って窓からいつもと同じ景色を見ながら帰る。この景色も2年後には見なくなるだろう。その時には、賢の隣にいることが出来るのだろうか。そんな不安を抱える。今日は土曜日だ。このあとのんびりしても怒られることはない。賢の家は、大学の行き道の途中にある。つまり、いつもの帰り道が少し短くなるような感覚でいいのだ。
「賢さんの家、何もなかったな」
生活感がないというより殺風景だった。しかし、食べ物だけはなぜか豊富だった。仁の部屋は物で囲まれているが、実用的なもので囲まれているわけではない。ある意味対称的な部屋なのだろうか。いつもと同じ電車。いつもと同じ空間。そこにあるのは、日常だった。
ダラダラと帰路につき、何事もなく乗り換えもなく、30分ほどで家に着く。帰ってきて、自分の部屋に入る。
「ただいま」
誰もいない実家に帰宅。親は何処かへ出かけているようだ。
自室でパソコンを立ち上げ、レポートに取り掛かる。相変わらずレポートだけはめちゃくちゃな量が出されていた。文献を持って帰ってきていたので、それを調べながらひたすら考える。しかし賢のことが過ぎってレポートがなかなか進まない。
月曜日、また泊まりになるのだろうか。そうなれば着替えが必要だ。余計なことばかりを考えつつ、いやこれは恋なんだからこれからの人生に直結するだろう。
正直、気持ちを素直に受け止めてもらえたことに未だ困惑する気持ちはある。しかし、いい人に巡り合えた。それも事実だろう。しかし、次いくときはどうなるのかは、まだ分からない。死ぬというわけではないが、覚悟はしておいた方が良いだろう。レポートと賢のことを交互に考えながら、今までとこれからが違う大学生活になるであろうことを思う。
覚悟が必要かもしれない。ぼんやりと考え事をしていると思っていたより気疲れしていたようで、仁は机に突っ伏して眠ってしまった。
「おはようございます」
「おはよう」
賢は、俺の人生を明るく変えてくれるのだろうか。いろんな感情が混ざり合って白くなる。一番綺麗なようで、一番汚い色と言われる。果たして自分の思いが正しいのかどうかすら、今は分からない。
いつもと違う光景だが、いつかは当たり前の光景にしたい。昨日、賢からもらった歯ブラシを使って歯を磨く。新品だから賢がどうこうということは無いのだが、好きな人の部屋で歯を磨くというのは少し照れくさかった。少し長めの歯磨きと洗顔をしてから、部屋に戻ると、部屋着姿の賢がいた。緊張しているが、居心地は良かった。
まだまだ緊張が解けないまま、いつも通りを装いながら頑張って会話をする。どうやってもいつもどおりの生活はできないのだが、それでも必死に頑張る。そわそわしていると賢がやっぱり話しかけてきた。
「どうしたの、お腹すいた?」
「あっ、えっと、はい」
「そっか。今日は仁もいるし、なんか作るか」
賢がキッチンに立つ姿を見ながら、こういう時、自分にも料理スキルがあれば役に立てたのか、なんてことを考える。今すぐにはどうやっても解決しない問題だが、いずれは考えなければいけないことの一つだ。
昨日も見た、素敵な立ち姿。すらりと伸びた身長にいう全く違和感のない顔立ちと体。その全てから作り出される料理が美味しいのだから、もはや完璧を超えた何かである。そんな姿に見惚れていたら、目の前に料理が並んでいた。
「出来たぞ」
「あ、ありがとうございます」
なぜこの期に及んで敬語なんだ。賢は疑問に思っていた。もう少しラフに接して欲しいと思っている。しかし年が2歳も違えばそうはいかないのだろう。
かつての賢もそうだった。研究室に入り浸っていたわけではないが、少しだけ所属していたサークルが上下関係などないかのような荒れ方だった。結局賢はそのサークルから抜けたが、あの時の空気感を思い出せば、仁が緊張して敬語になるのは正しいのかもしれない。ここは緊張をほぐしてやるべきなのか。
朝飯は美味しそうに食べてくれるし、行儀も悪くない。客が来ているという事情だけで豪華になる朝食を食べながら、そんなことを考えていた。
朝起きれば知人がいるというのは気分が違う。しかし困った事態にもなっていた。仁とできることを何一つとして用意していなかった。困りに困り果て、どうしようかと悩んでいるところで、声が飛んでくる。
「賢さん、これからどうしましょう」
「どうしようかなあ」
本当に何もすることがない。賢の家には娯楽と呼べるものがほとんどない。筋トレのための道具と、乱雑に積まれた書籍ぐらいしか辺りにはない。2人で遊ぶというには少し無理がある。何をしようにも何も出来ない。生憎、この辺りには娯楽施設もほとんどない。手詰まりどころの話ではない。
「解散にするか」
「えっ、あぁ、はい」
「すまんな、何もなくて。次までには何か用意しておくよ」
「あ、お願いします」
二人の中では次があることを確信していた。ご飯を食べてから食器を流し、ややあってから解散となった。
「じゃあ、また大学でな」
「またお願いします」
何事もなかったとは言え、夜を一緒に過ごした友人を見送りながら、次までには楽しめるものを絶対用意すると決めた。賢には卒論よりも大事な急務ができた。なんとかして、達成せねばならぬ。
「はぁ、緊張した」
仁は緊張から解放された。好きな人の部屋に泊まることになるなんて想像していなかった。いくらなんでも展開が早すぎるのではないか。賢の自宅を出て、自分の家へと帰りながら、そんなことを考える。
いつもと変わらない日常に戻っていく。電車に乗って窓からいつもと同じ景色を見ながら帰る。この景色も2年後には見なくなるだろう。その時には、賢の隣にいることが出来るのだろうか。そんな不安を抱える。今日は土曜日だ。このあとのんびりしても怒られることはない。賢の家は、大学の行き道の途中にある。つまり、いつもの帰り道が少し短くなるような感覚でいいのだ。
「賢さんの家、何もなかったな」
生活感がないというより殺風景だった。しかし、食べ物だけはなぜか豊富だった。仁の部屋は物で囲まれているが、実用的なもので囲まれているわけではない。ある意味対称的な部屋なのだろうか。いつもと同じ電車。いつもと同じ空間。そこにあるのは、日常だった。
ダラダラと帰路につき、何事もなく乗り換えもなく、30分ほどで家に着く。帰ってきて、自分の部屋に入る。
「ただいま」
誰もいない実家に帰宅。親は何処かへ出かけているようだ。
自室でパソコンを立ち上げ、レポートに取り掛かる。相変わらずレポートだけはめちゃくちゃな量が出されていた。文献を持って帰ってきていたので、それを調べながらひたすら考える。しかし賢のことが過ぎってレポートがなかなか進まない。
月曜日、また泊まりになるのだろうか。そうなれば着替えが必要だ。余計なことばかりを考えつつ、いやこれは恋なんだからこれからの人生に直結するだろう。
正直、気持ちを素直に受け止めてもらえたことに未だ困惑する気持ちはある。しかし、いい人に巡り合えた。それも事実だろう。しかし、次いくときはどうなるのかは、まだ分からない。死ぬというわけではないが、覚悟はしておいた方が良いだろう。レポートと賢のことを交互に考えながら、今までとこれからが違う大学生活になるであろうことを思う。
覚悟が必要かもしれない。ぼんやりと考え事をしていると思っていたより気疲れしていたようで、仁は机に突っ伏して眠ってしまった。
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