軌跡 Rev.1

ぽよ

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3章

昼下がり

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 昼食を食べた後、店を出る。ちょうどピークの時間だったようで、店の外には大行列ができていた。

「早く来て良かったかもね」
「この行列を思えばそうだな」

    12時30分。時間の経過とはやはり早いものである。すでにデートから6時間ほどが経過していた。店を出て、エレベーターに乗り、一階に降りる。そこから駅に向かって歩き、改札を抜ける。
 いつもとは違う線の電車に乗る。乗り間違えないようにしなければ、どこにたどり着くか見当すらつかない。ホテルの最寄駅を検索するために乗換案内を使う。どうやら電車で30分ほど揺られれば到着するらしい。。
 乗る電車を確認して、行き先を確認して、目的の駅に止まるかどうかを確認してから電車に乗った。今まで足を踏み入れたことのない場所。少しだけ眠気が来ていた。

「寝過ごさないようにしないとな」

    ふと横を見ると恋人も眠そうにしていた。猛暑と呼ぶべき真夏の空からクーラーの効いた電車に移るとこんな現象が起きるのかと思った。普段は経験していない。緊張もあるのか。そんなことを思う。

「向こうに着いたら何しようね」
「散歩かなー」
「散歩するかー」

    電車の中でゆったりとしたひと時を過ごす。快速電車に乗って約25分。検索していた時間より少しだけ早く着いたその街は、思っていたより都会だった。大都会から離れた場所にある。ベッドタウンのようなイメージだったのだが、イメージよりは発展しているようだった。

「さてと、どうしようかな」
「スーパーに行こう」
「了解」

    駅についてから、ふらふらと街を歩く。駅構内から見えているスーパーを目指してひたすら歩く。二人が思っていたより遥かに遠くにあるスーパー。暑い中歩いてなんとか到着する。店内にはクーラーが効いていた。

「ついたー」
「椅子とかあるなら座りたいな」
「なんかあるのかな」

    地元では聞かないスーパーに入り、ベンチを探す。ふらふらと回ったところで見つけた。二人で座り、一息つく。ここまでいろいろなことがあった。大学生活も、この旅行も。夏休み特有の喧騒に飲み込まれながらの一休み。どこか懐かしい感じがした。
 なんとなく二人でのんびりする。特に話すことがあるわけではないが、だからと言って気まずくなるわけでもない。この距離感がとても好きだった。信頼できているという距離感。そんなひと時を過ごす。

「どこ行こうかなぁ」
「迷うね」
「この辺散歩してから喫茶店でも行く?」
「賛成!」

    ご飯を食べた後の昼下がり。散歩できるかどうかはまだわからない。旅行はまだまだ続く。明日帰るまでが旅行である。こんなところでバテてなんていられない。
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