軌跡 Rev.1

ぽよ

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4章

初めて

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「将来かぁ」
「急にどうした」
「将来めんどくさいなぁって」
「おうおうどうした」

 賢の部屋。2人は今部屋に寝転がりながら会話をしていた。2回目の中間発表も終わり、旅行も無事終わった。その反動で怠惰の頂点に君臨するかの如く転がっていると、仁がポツリとこぼしていた。

「俺もめんどくさーなーと思う時はある」
「そうなんだ」
「おうともよ。まぁでも、仁といるうちは頑張らないとなって感じ」
「なるほど?」
「まぁ、結婚とか難しい問題は抱えてるけどな」
「そうなんだよねー」
「それでも前に進んでいかなきゃいけないんだよ」
「そっかぁ」

 寝転がりながら真面目な話をするという光景に少しずつ違和感を覚えたが、もはや考える気力すらない。夕食も食べ終わり後は寝るだけなのだが、布団を敷くのもめんどくさい。
 すっかり暗くなった空が開いた窓から見える。夏休みも終わる。後期が始まる。怒涛の忙しさになる。それだけで何もかもがめんどくさくなる気がしたが、賢がいればきっと生きていけるだろう。甘い考えだと思うのが、楽観的になることで今を生きる術を得たと思うのか。
 どちらにしても、この幸せな空間が続けばいいのになんて思うことができるのは間違いなく賢のおかげである。

「まぁ、なんだ。悩み事があったら言えよ。解決できるかは分からんが、気持ちは楽になるだろう」
「うん、ありがとう」

 どんなに会話を交わしても寝転んでいることには変わりない。ご飯も食べてゴロゴロし続けて現在20時。なんの進展もなく進んでいる。たまにはこういう時間も必要なのか。これまで何も進展していないことに仁は少しずつ焦りを覚え始めていた。賢との関係は、これからも仲良くしていけるのだろうか。そんな不安が、過っていた。

「そういえば、仁はまだ経験ないんだっけ?」
「まぁ、まだないね」
「そっか」
「え?うん」

 唐突な話題。経験はまだない。こんな自分を受け入れてくれる人間がそもそもいなかった。今では賢がいるけれど、それまだまだ最近の話だ。いつかはしてみたい、という希望もある。しかし、それは普通ではないのかもしれないと思うようになった。賢は、どう思っているのだろうか。

「じゃあ、してみる?」
「え?」
「襲ってあげよう」
「え?」
「ま、する前に体は洗っとかないとね」
「え?うん」

 何一つ状況が読み込めていないが、成り行きで賢と一緒にお風呂に入っている。なかなかに狭い空間の中でなんとか体をよじりながら洗う。頭を洗って体を洗う。特に会話もなく体を洗う。一通り洗い終わったところでお風呂から出る。

「とりあえず一休みするか」
「お風呂狭かったんだけど」
「まぁ、そんなもんだ」
「そんなもんなのか」

 一人暮らしの彼の風呂に入った。一緒に。どうしようもなく狭くて、洗いにくかった。でも、ドキドキした。改めて彼の大きさも感じることができた。頭ひとつ分ほど大きいわけじゃないけど、見上げるくらいの大きさは違うのだ。と実感した。
 パジャマに着替えてまたしてもゴロゴロ。少しだけ違うのは、布団が敷いてあること。ゴロゴロしながら過ごしていた。風呂に入った暑さも抜けてきた頃に、賢が押し倒すような形で視界の先にいた。

「え、何?」
「なんでもないよ」

 なんでもないと言いながら、着替えたパジャマを脱がされていく。賢は不敵な笑みを浮かべていた。こんな賢を見るのは初めてだった。しかし拒絶の感情はなく、その雰囲気に飲まれていった。そこから先の記憶はない。ただ、快感に飲み込まれていたことだけは記憶がある。気がつけばそこにはニヤニヤしている賢がいた。

「なるほどね?」
「え?なに?」
「いや、なんでもないよ」
「う、うん?ところで今何時?」
「20時30分だよ」

 スマートフォンを確認するとやはりその時間だった。快感に飲み込まれてそのまま気を失っていた気がする。


「仁は声が出るタイプなんだね」
「出てた?」
「まぁ、出てたね」

 ニコニコと笑いながらそんな話をしてくる。賢は実はドSだったのかもしれない、と思いながらぼーっとしていると、自分の上から退いて、布団に転がった。

「また今度、俺を襲ってみるか?」
「まぁ、うん」

 素直な返事はできなかった。興味がないわけじゃない。でも、素直にそれが実行できるとは思わなかった。
 今日初めて襲われて、記憶もあんまりないけれど、将来的にはこういうことも含めて賢と色々できれば、と思っている。後期からはまた授業の日々が始まる。そしてそれが終われば3年生になる。その頃には、もっと仲良くなっていたい。ぼんやりとした頭で、そんなことを考えていた。そして結局その後は、ゴロゴロしながら眠りに落ちていた。
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