70 / 107
5章
話
しおりを挟む
研究室で相変わらず隣に座って話をする二人。もはや喧騒のことなど何一つ関知していないかのようだ。実際には、研究室の中は日に日に騒がしさを増して言ってると言っても過言ではない。怒声が響くわけではないが、毎日ご飯も惜しんで議論がなされている。
何故そこまで本気になれるのに着実にやってこなかったのか小一時間問い詰めたくなるくらいだが、そんな時間すらも惜しいほどだろう。賢も何気に時間に追われているが、あの喧騒の中の人間よりはマシだった。
仁は、賢ほどでは無いが覚悟は誰よりも必要だった。どんな相談を、どんな風にすればいいのか。そんな作戦会議をしていたのである。時刻は14時30分。そろそろタイムリミットだった。二人は各々でパソコンを閉じ、本を閉じ、ノートを閉じる。そして、研究室のドアを開ける。
「お疲れ様です」
「お邪魔しました」
研究室を出て、バス停へと向かう。少しだけ早いが、早いなら別に問題はない。いつもと同じ日常の風景が流れていく。喧騒から抜け出したはずなのに、構内はそれでも騒がしかった。落ち着かない空気の中、二人で歩いてバス停に着く。ちょうどその時にバスが止まっていた。いい時間に研究室を出たらしい。二人でバスに乗りながら、会話する。
「頑張れよ」
「うん、ありがとう」
短いながらも、賢から言葉をもらい、いよいよなんだと気を引き締める。少しずつ前に進んでいるんだと思うと、嬉しくなったけれど緊張もした。今日、話をする。緊張しすぎて実感が湧かないが、その方が良いのかもしれない。
当事者意識を持って動けている方がいいだろう。しばらくバスに乗ったら、電車の駅の最寄りに到着した。学生がぞろぞろ降りる。賢と仁もその中に含まれる。そして、バスを降りた後、賢と話をする。
「じゃあまぁ、今日話をしたら反応とか結果とか明日にでも教えてよ」
「うん、わかった」
「じゃあ、また明日」
「また明日!」
賢と別れてから駅まで歩く。そこまで遠いわけではないが、階段を2回登る。地上から改札に行くために登る階段と、改札階から、ホーム階に上がる階段だ。いつものダイヤで動いているなら、後5分で電車が来る。少しだけ足早にホームまで歩く。階段を上り、改札を抜け、歩いた先にあるホーム。電車はまだ来てなかった。3分遅れと表示された電光掲示板を見て、一息つく。
ホームに立って、スマートフォンを見る。誰から連絡が来るわけでもなく、誰に連絡をするわけでもなく。ゆったり待ちながら電車を待つ。
3分遅れと表示されつつも、実際は4分ほど遅れてきた電車に乗り込み、この時間にしては珍しく空いている席に座る。15分ほど乗れば家の最寄駅だ。席に座りながら外の景色を見る。
定速で流れていく見慣れた景色。同棲をすることになれば、電車に乗る機会も減るかもしれない。移動の時間が減ると思えばいいかもしれないが、生まれてからずっと乗り続けてきたことを考えると、少し寂しい気もする。同棲するという相談も、上手くできるかわからない。しかし、やるしかない。
気合を入れたところで電車は最寄駅に到着した。電車を降りて、改札を抜ける。小さな町だが不便はしない。そんな町から、抜け出すことになる。少し歩けば家がある。覚悟を決めて、家に入る。
「ただいま」
「おかえり」
「今日、ちょっと相談したいことがあるんだ」
「いいわよ」
「晩ご飯食べたら話す」
「分かったわ」
迎えてくれた母と少しだけ会話をして、自分の部屋へと入っていく。晩ご飯まで、考え事をする。ひとまず今は、気持ちを落ち着けることにしよう。
何故そこまで本気になれるのに着実にやってこなかったのか小一時間問い詰めたくなるくらいだが、そんな時間すらも惜しいほどだろう。賢も何気に時間に追われているが、あの喧騒の中の人間よりはマシだった。
仁は、賢ほどでは無いが覚悟は誰よりも必要だった。どんな相談を、どんな風にすればいいのか。そんな作戦会議をしていたのである。時刻は14時30分。そろそろタイムリミットだった。二人は各々でパソコンを閉じ、本を閉じ、ノートを閉じる。そして、研究室のドアを開ける。
「お疲れ様です」
「お邪魔しました」
研究室を出て、バス停へと向かう。少しだけ早いが、早いなら別に問題はない。いつもと同じ日常の風景が流れていく。喧騒から抜け出したはずなのに、構内はそれでも騒がしかった。落ち着かない空気の中、二人で歩いてバス停に着く。ちょうどその時にバスが止まっていた。いい時間に研究室を出たらしい。二人でバスに乗りながら、会話する。
「頑張れよ」
「うん、ありがとう」
短いながらも、賢から言葉をもらい、いよいよなんだと気を引き締める。少しずつ前に進んでいるんだと思うと、嬉しくなったけれど緊張もした。今日、話をする。緊張しすぎて実感が湧かないが、その方が良いのかもしれない。
当事者意識を持って動けている方がいいだろう。しばらくバスに乗ったら、電車の駅の最寄りに到着した。学生がぞろぞろ降りる。賢と仁もその中に含まれる。そして、バスを降りた後、賢と話をする。
「じゃあまぁ、今日話をしたら反応とか結果とか明日にでも教えてよ」
「うん、わかった」
「じゃあ、また明日」
「また明日!」
賢と別れてから駅まで歩く。そこまで遠いわけではないが、階段を2回登る。地上から改札に行くために登る階段と、改札階から、ホーム階に上がる階段だ。いつものダイヤで動いているなら、後5分で電車が来る。少しだけ足早にホームまで歩く。階段を上り、改札を抜け、歩いた先にあるホーム。電車はまだ来てなかった。3分遅れと表示された電光掲示板を見て、一息つく。
ホームに立って、スマートフォンを見る。誰から連絡が来るわけでもなく、誰に連絡をするわけでもなく。ゆったり待ちながら電車を待つ。
3分遅れと表示されつつも、実際は4分ほど遅れてきた電車に乗り込み、この時間にしては珍しく空いている席に座る。15分ほど乗れば家の最寄駅だ。席に座りながら外の景色を見る。
定速で流れていく見慣れた景色。同棲をすることになれば、電車に乗る機会も減るかもしれない。移動の時間が減ると思えばいいかもしれないが、生まれてからずっと乗り続けてきたことを考えると、少し寂しい気もする。同棲するという相談も、上手くできるかわからない。しかし、やるしかない。
気合を入れたところで電車は最寄駅に到着した。電車を降りて、改札を抜ける。小さな町だが不便はしない。そんな町から、抜け出すことになる。少し歩けば家がある。覚悟を決めて、家に入る。
「ただいま」
「おかえり」
「今日、ちょっと相談したいことがあるんだ」
「いいわよ」
「晩ご飯食べたら話す」
「分かったわ」
迎えてくれた母と少しだけ会話をして、自分の部屋へと入っていく。晩ご飯まで、考え事をする。ひとまず今は、気持ちを落ち着けることにしよう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる