軌跡 Rev.1

ぽよ

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6章

現状

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「なるほどねー」
「そうなんですよねー」
「まぁ、俺のところならいつでもおいでよ。質問は待ってるから」
「ありがとうございます」

 どうやら仁と教授の話が終わったらしい。唐突に始まり、唐突に終わる。そして2人とも立ち上がり、仁はこっちに、教授は教授室へと戻っていく。何やらスッキリした顔の仁。一体何を話したのか。

「いやー、自分がやりたいことがどうすれば成し遂げられるのか、みたいな相談をしてたんだよ」
「なんかすごいスケールだな」
「俺もそう思うんだけどね。まぁ、教授ってある意味成し遂げてる人じゃん?」
「うん?あぁ、まぁ、そうだな」

 どうやら、色々と人生相談をしていたらしい。俺にも相談していた内容だろうか。アンケートだったり、同棲だったり。色々難しい面もあるが、仁は自分で考えて動いているのだろう。そこに関してとやかく必要もないはずだ。仁がゆったりと席に座り、こっちを向く。

「そろそろ二限だから、行ってくるね」
「あ、あぁ、行ってらっしゃい」

 仁は二限。俺は卒論で教授と話し合い。さて、気合入れていくか。パソコンとの睨み合いを一回止めて、教授に話しかけた。

「教授」
「お、君も来たか」

 一休みしようとしていたところで非常に申し訳ないのだが、賢も教授に聞きたいことがある時はある。椅子から立ち上がり、ドアを開けて研究室に戻ってくる。議論用の大きな机に椅子を持ってきて座る。その横に賢も座る。

「卒論、どんな感じですか」
「まぁ、あとちょっとかな。あの馬鹿たちと違って、君はコツコツやってきてたからね」
「ありがとうございます」
「まぁ、今月中には終わるんじゃないか?」
「はぁー、良かった」
「恋人もいるし、来月から色々忙しいんじゃないかとは思うけど。頑張って」
「なんかバレてます?」
「いや、何も知らないけど」
「あ、そうですか」

 そこまで言ってシラを切るのは無理があるとは思いながらも、気にしないでいてくれた方が色々とやりやすいかもしれない。
 とりあえず卒論の進捗としては悪くない。今月末に終わるなら、学祭のデートもできる。と思ったところで教授に聞いてみる。

「そういえば、学祭がどうのこうのって朝見たんですけど、教授なんか知ってます?」
「あぁ、一応中止の内示が出てるよ」
「なるほど」
「まぁ、三日間も授業しないなんてなったら俺たちは研究し放題だけどな」
「そうですねぇ」
「君は恋人とデートでも行くのか?」
「えぇ、まぁ」
「君はゆったり遊んできな。俺は君以外の奴らの相手で忙しくなるだろうから」

 苦笑する教授を見ながら、少しだけ同情する。めんどくさい相手というのは、避けられない時もある。

「話が逸れちゃったけど、それが多分最後の朱書」
「ありがとうございます」

 印刷した卒論に、赤く訂正が入っている。書き方が少しずつわかった今となっては、量としては少なくなった。それでも、より良いものを出す為に妥協をしない。それは、2人の暗黙の了解だった。最初の頃よりかなり良くなっている文章とその朱記を見ながら、色々考える。

「ま、焦っても仕方ないよ。わかってると思うけどさ」
「はい」
「卒論が終わったら、恋人とゆっくりする時間があってもいいと思うよ」
「ありがとうございます」
「じゃ、直したらまた持ってきて」
「わかりました」
「また後でね」

 教授はそう言い終わると、賢が立ち上がる。手渡された紙を見ながら、賢も自分の席に戻っていく。パソコンと卒論を交互に見ながら、今日もまた卒論に飲み込まれていく。

「さてと、やるか」

 めんどくさいという気持ちを抑えながら、キーボードで文字を打ち込んでいく。研究室に入り浸る生活も、これで終わればいいのだが。そんな気持ちを抱えながら、卒論を直す。仁の授業が早く終わらないか、とも思いながら。

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