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6章
買い物
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日曜日の朝、布団から起き上がると賢はもう洗面台にいた。仁も立ち上がり、洗面台へと向かう。
実家とは違う洗面台だが、歯ブラシも歯磨き粉も用意してある。顔を洗って歯を磨き始める。少なくとも明日は繁華街に出かける予定だが、今日は何も決めていない。賢は何か決めてたりするのだろうか。気になったので聞いてみる。
「今日の予定ってなんかあるの?」
「なーんも決めてないよ」
「なるほど」
「ま、まだ朝8時だし、散歩とかしてもいいかもな」
「散歩かー、いいね」
そろそろ11月に差し掛かろうというところだが、まだまだ暑い。それでも、今の時間なら散歩ぐらいはできる。現在時刻朝の8時。スーパーが空いてるわけでもなければ、特に綺麗な景色が見れるわけでもない。それでもいい。いや、それだからこそ、いい。恋人と過ごす何気ない時間は特別だけれど、何気ない瞬間も特別になるからこそ、思い出として残していけるんだ。そう思った仁は、歯磨きが終わってからすぐに部屋に戻り、服に着替える。その頃には賢も着替え終わっていた。そこで、あることに気付く。
「散歩の前に朝ごはんだよ」
「そういえば食べてない」
昨日に買った朝食のパンを2人で食べる。特に調理をするわけでもなく、かじりつく。いつも食べてるパンと同じ味。賢もいつも食べているパンにかじりついていた。2人ともパンを食べ終わり、またそこでひと段落。
「ま、あと10分くらいしたら行くか」
「そうだね」
出発はもうひと段落ついてから。賢と同じ気持ちだった仁は少しだけ嬉しくなった。
部屋で少しだけゆっくりして、徐に立ち上がる。そして、玄関へと向かう。
「そろそろ行くか」
「どこ行くの?」
「繁華街に」
「あれ、明日は?」
「明日も行くよ」
「なるほど?」
「ま、行く街は変えるけどな」
「なるほど」
朝8時30分。居心地の良い部屋で、2人でゴロゴロするのも悪くないが、出かけるのも楽しい。家の鍵をしっかり閉めてから、駅へと向かって歩き出す。流石に日差しも出て、すっかり明るくなっていた。暦としては秋なのだが、まだまだ残暑というべきなのか、朝なのに気温としては15度を超えてきていた。川沿いの道を歩きながら、2人で今日行く場所に関する話をする。
「ま、今日は服とか見に行くか」
「お、買い物」
「ショッピングモールというか、そういうところにね」
「いいね!」
「とりあえず電車に乗るか」
「はーい」
歩いて10分ほどで駅に着き、改札を抜けて階段を登ればホームに着く。少し待てば電車が来る。平日とほとんど変わらないダイヤで運行している線ということもあり、ほとんど時間を気にせず出かけることができるのが、この線の魅力だった。
10分ほど電車に乗り、そこから乗り換えてさらに10分ほど行ったところに、今回の目的地がある。到着してから降りて、改札を抜ければそこには人だかりができていた。特にイベントがあるわけじゃなければ、何かが突発的に起きたわけでもない。つまり、この場所にはこれくらい普段から人がいるということなのだ。
目眩を起こしそうなほどの人の数に圧倒されながら、賢と2人で歩いていく。目的のショッピングモールまで歩いて5分。存在感を放つその建物に向かって歩きながら、賢と話をする。人生でも片手で数えるくらいしか入ったことのないようなおしゃれな建物に入っていく。中は豪華絢爛ということはないが確実に迷子になる大きさと構造を誇っていた。
「さてと、適当に見ていくか」
「どんな服を見るの?」
「そんなに決まってないけど、予算はそんなに高くないよ」
「付いていこうかな」
「了解」
賢と一緒にエスカレーターに乗る。2階に出てからもう一度乗る。3階に到着したところで賢がフロアに出た。
「おしゃれするわけじゃないけど、最低限ダサくない服くらいは身に付けていかないとな」
「まぁそれはそうだなぁ」
2人で服屋に行く。ひとまずは上の服だろうか。名前だけは聞いたことがある服屋へと向かう。
「さてと、見ていくか」
「秋服?」
「もうすぐ冬だし冬服じゃないか?」
「そうなの?」
「季節の服ってのはそういうもんだ」
「なるほど」
サイズが微妙に合わなくなる度に服を買い足していた仁とは違って賢はおしゃれの感覚が身に付いていた。店の中に入って行き、服をいろいろな角度から見ていた。そして、いつのまにか取っていたカゴに入れていた。ある程度目星をつけていたのかいろんなコーナーを見ながら賢に似合いそうな服を入れていく。
「仁に似合いそうなやつはこれかな」
「うん?」
「ま、とりあえず買ってみよう」
「え?」
「じんもおしゃれになっていかないとな」
「うん?うん」
おしゃれに無縁だった仁にとっては新たな世界の扉が開いたような感覚だった。賢が自分のカゴに入れたまま会計へと向かってしまった。気づいてから後を追いかける。追いついた頃には会計が終わっていた。なんという早技。
「え?お金は?」
「そんなに高くないし今回は俺が連れ回してるし出すよ」
「えっ、あぁ、うん」
「そう言うな。こういうのも経験だ」
「うん?うん」
いまいち状況が掴めていなかったけれど、買ってもらうのに悪い気はしない。金銭面は気になるけれど。何事もなく店を抜けて行く賢の後ろをついて行く。まだまだデートは始まったばかり。今回のデートは、賢を全面的に信じてみようと思う。
賢と服屋を出てからしばらくうろうろと回る。次に買うものが決まっているのかも分からず、それを聞くタイミングもなく、ウインドウショッピングをしていたタイミングで、賢が切り出した。
「服は買えたな」
「ありがとう」
「次は靴か」
「靴?」
「そう、靴」
「これ、歩きやすいよ?」
「まぁそう言うな」
「あ、うん」
賢に任せようと言う気持ちはあるのだけれど、服屋の会計の額がなかなかに凄かったので、ブレーキの気持ちが入ってしまう。服屋の袋を持ちながら歩く。昼食でお茶を濁したい気持ちはあるのだが、まだ時間的には早い。
気持ちだけはしっかり焦るのだが、歩調はなるべくゆっくりと。悟られているかもしれないが、気持ちはなるべく平穏に見せたい。そして2人で歩いて5分の場所に、目的の靴屋があった。
「まぁ、ここはいろんな靴が置いてあるからゆっくり見よう」
「うん」
「さっきの服代は気にするな」
「え?うん」
「もちろんバレてるよ」
バレないようにしていたことがむしろバレやすくしたのかと思うほどバレていた。ここはもう吹っ切れたほうがいいのだろうかと思うほどだった。靴屋に2人で入りながら、今度はそれぞれが靴を見る。
「仁はどういうのが好みとかあるのか?」
「特に無いなぁ。良さそうなのを履いてみてサイズ的に問題なければそれでいく」
「ほう。なるほど」
「賢はなんかある?」
「いや、俺もそんな感じだな。足を酷使したりするわけじゃ無いからそんなに気遣ってない」
「なるほど」
お互い靴を見ながらあれこれ悩む。大学に行くのに歩く回数を増やすなら、この靴は少し辛いかもしれない。しかし、ずっとバス通学なら今靴を変える必要はない。はてさて、どうしたものか。
靴屋をうろうろしながらいいものがないか探してみる。休日の靴屋は人が多かったけれど、賢を見失うことはなかった。最近少し踵がすり減っていることを思い出して、今の靴と同じようなものを探し出す。店員に聞いて、今履いてるものと同じサイズを探し出してくる。箱を持って会計に行く。レジには少しだけ人が並んでいた。少しだけ待って、会計の順番が来る。いつもと同じくらいの値段の靴を買う。会計を終えて店の外に出る。賢に連絡しようとしたところで賢に声をかけられる。
「おかえり」
「ただいま。なんか買った?」
「いや、買ってない。なんか思ってたより良さそうなのがなかった」
「なるほどね」
「靴買えたか」
「うん」
「じゃあ、椅子に座って一休みしよう」
「はーい」
買い物がひと段落。なんだかんだで靴屋にもそこそこの時間いた気がする。買い物が早い賢を待たせてしまっただろうかということも考えるが、悩みはしない。悩んだところで解決につながるわけではないのだ。
昼食この建物の中で食べる。いまいち何を食べるかわかってないけれど、賢は何か考えてるのだろうか。ゆったりした時間を過ごしながら仁はデートの次のことを頑張って考えていた。
実家とは違う洗面台だが、歯ブラシも歯磨き粉も用意してある。顔を洗って歯を磨き始める。少なくとも明日は繁華街に出かける予定だが、今日は何も決めていない。賢は何か決めてたりするのだろうか。気になったので聞いてみる。
「今日の予定ってなんかあるの?」
「なーんも決めてないよ」
「なるほど」
「ま、まだ朝8時だし、散歩とかしてもいいかもな」
「散歩かー、いいね」
そろそろ11月に差し掛かろうというところだが、まだまだ暑い。それでも、今の時間なら散歩ぐらいはできる。現在時刻朝の8時。スーパーが空いてるわけでもなければ、特に綺麗な景色が見れるわけでもない。それでもいい。いや、それだからこそ、いい。恋人と過ごす何気ない時間は特別だけれど、何気ない瞬間も特別になるからこそ、思い出として残していけるんだ。そう思った仁は、歯磨きが終わってからすぐに部屋に戻り、服に着替える。その頃には賢も着替え終わっていた。そこで、あることに気付く。
「散歩の前に朝ごはんだよ」
「そういえば食べてない」
昨日に買った朝食のパンを2人で食べる。特に調理をするわけでもなく、かじりつく。いつも食べてるパンと同じ味。賢もいつも食べているパンにかじりついていた。2人ともパンを食べ終わり、またそこでひと段落。
「ま、あと10分くらいしたら行くか」
「そうだね」
出発はもうひと段落ついてから。賢と同じ気持ちだった仁は少しだけ嬉しくなった。
部屋で少しだけゆっくりして、徐に立ち上がる。そして、玄関へと向かう。
「そろそろ行くか」
「どこ行くの?」
「繁華街に」
「あれ、明日は?」
「明日も行くよ」
「なるほど?」
「ま、行く街は変えるけどな」
「なるほど」
朝8時30分。居心地の良い部屋で、2人でゴロゴロするのも悪くないが、出かけるのも楽しい。家の鍵をしっかり閉めてから、駅へと向かって歩き出す。流石に日差しも出て、すっかり明るくなっていた。暦としては秋なのだが、まだまだ残暑というべきなのか、朝なのに気温としては15度を超えてきていた。川沿いの道を歩きながら、2人で今日行く場所に関する話をする。
「ま、今日は服とか見に行くか」
「お、買い物」
「ショッピングモールというか、そういうところにね」
「いいね!」
「とりあえず電車に乗るか」
「はーい」
歩いて10分ほどで駅に着き、改札を抜けて階段を登ればホームに着く。少し待てば電車が来る。平日とほとんど変わらないダイヤで運行している線ということもあり、ほとんど時間を気にせず出かけることができるのが、この線の魅力だった。
10分ほど電車に乗り、そこから乗り換えてさらに10分ほど行ったところに、今回の目的地がある。到着してから降りて、改札を抜ければそこには人だかりができていた。特にイベントがあるわけじゃなければ、何かが突発的に起きたわけでもない。つまり、この場所にはこれくらい普段から人がいるということなのだ。
目眩を起こしそうなほどの人の数に圧倒されながら、賢と2人で歩いていく。目的のショッピングモールまで歩いて5分。存在感を放つその建物に向かって歩きながら、賢と話をする。人生でも片手で数えるくらいしか入ったことのないようなおしゃれな建物に入っていく。中は豪華絢爛ということはないが確実に迷子になる大きさと構造を誇っていた。
「さてと、適当に見ていくか」
「どんな服を見るの?」
「そんなに決まってないけど、予算はそんなに高くないよ」
「付いていこうかな」
「了解」
賢と一緒にエスカレーターに乗る。2階に出てからもう一度乗る。3階に到着したところで賢がフロアに出た。
「おしゃれするわけじゃないけど、最低限ダサくない服くらいは身に付けていかないとな」
「まぁそれはそうだなぁ」
2人で服屋に行く。ひとまずは上の服だろうか。名前だけは聞いたことがある服屋へと向かう。
「さてと、見ていくか」
「秋服?」
「もうすぐ冬だし冬服じゃないか?」
「そうなの?」
「季節の服ってのはそういうもんだ」
「なるほど」
サイズが微妙に合わなくなる度に服を買い足していた仁とは違って賢はおしゃれの感覚が身に付いていた。店の中に入って行き、服をいろいろな角度から見ていた。そして、いつのまにか取っていたカゴに入れていた。ある程度目星をつけていたのかいろんなコーナーを見ながら賢に似合いそうな服を入れていく。
「仁に似合いそうなやつはこれかな」
「うん?」
「ま、とりあえず買ってみよう」
「え?」
「じんもおしゃれになっていかないとな」
「うん?うん」
おしゃれに無縁だった仁にとっては新たな世界の扉が開いたような感覚だった。賢が自分のカゴに入れたまま会計へと向かってしまった。気づいてから後を追いかける。追いついた頃には会計が終わっていた。なんという早技。
「え?お金は?」
「そんなに高くないし今回は俺が連れ回してるし出すよ」
「えっ、あぁ、うん」
「そう言うな。こういうのも経験だ」
「うん?うん」
いまいち状況が掴めていなかったけれど、買ってもらうのに悪い気はしない。金銭面は気になるけれど。何事もなく店を抜けて行く賢の後ろをついて行く。まだまだデートは始まったばかり。今回のデートは、賢を全面的に信じてみようと思う。
賢と服屋を出てからしばらくうろうろと回る。次に買うものが決まっているのかも分からず、それを聞くタイミングもなく、ウインドウショッピングをしていたタイミングで、賢が切り出した。
「服は買えたな」
「ありがとう」
「次は靴か」
「靴?」
「そう、靴」
「これ、歩きやすいよ?」
「まぁそう言うな」
「あ、うん」
賢に任せようと言う気持ちはあるのだけれど、服屋の会計の額がなかなかに凄かったので、ブレーキの気持ちが入ってしまう。服屋の袋を持ちながら歩く。昼食でお茶を濁したい気持ちはあるのだが、まだ時間的には早い。
気持ちだけはしっかり焦るのだが、歩調はなるべくゆっくりと。悟られているかもしれないが、気持ちはなるべく平穏に見せたい。そして2人で歩いて5分の場所に、目的の靴屋があった。
「まぁ、ここはいろんな靴が置いてあるからゆっくり見よう」
「うん」
「さっきの服代は気にするな」
「え?うん」
「もちろんバレてるよ」
バレないようにしていたことがむしろバレやすくしたのかと思うほどバレていた。ここはもう吹っ切れたほうがいいのだろうかと思うほどだった。靴屋に2人で入りながら、今度はそれぞれが靴を見る。
「仁はどういうのが好みとかあるのか?」
「特に無いなぁ。良さそうなのを履いてみてサイズ的に問題なければそれでいく」
「ほう。なるほど」
「賢はなんかある?」
「いや、俺もそんな感じだな。足を酷使したりするわけじゃ無いからそんなに気遣ってない」
「なるほど」
お互い靴を見ながらあれこれ悩む。大学に行くのに歩く回数を増やすなら、この靴は少し辛いかもしれない。しかし、ずっとバス通学なら今靴を変える必要はない。はてさて、どうしたものか。
靴屋をうろうろしながらいいものがないか探してみる。休日の靴屋は人が多かったけれど、賢を見失うことはなかった。最近少し踵がすり減っていることを思い出して、今の靴と同じようなものを探し出す。店員に聞いて、今履いてるものと同じサイズを探し出してくる。箱を持って会計に行く。レジには少しだけ人が並んでいた。少しだけ待って、会計の順番が来る。いつもと同じくらいの値段の靴を買う。会計を終えて店の外に出る。賢に連絡しようとしたところで賢に声をかけられる。
「おかえり」
「ただいま。なんか買った?」
「いや、買ってない。なんか思ってたより良さそうなのがなかった」
「なるほどね」
「靴買えたか」
「うん」
「じゃあ、椅子に座って一休みしよう」
「はーい」
買い物がひと段落。なんだかんだで靴屋にもそこそこの時間いた気がする。買い物が早い賢を待たせてしまっただろうかということも考えるが、悩みはしない。悩んだところで解決につながるわけではないのだ。
昼食この建物の中で食べる。いまいち何を食べるかわかってないけれど、賢は何か考えてるのだろうか。ゆったりした時間を過ごしながら仁はデートの次のことを頑張って考えていた。
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